本日発売の”つり人”6月号の関連特集では、このひと月の問題と 運動の推移が、 実に分かりやすくまとめて載っております。月刊誌の宿命で、情報 としては、当サイトで 既に紹介したものが多くなりますが、私の稚拙な文章とは大違いです ので、 問題をまとめて把握する為には必読と思います。特に、現在の有明問題が、 単に地域の 環境問題にとどまるものではなく、地球規模の開発と自然破壊の問題 をすべて内在する 象徴的な問題で、運動には多くの自然保護団体の参入、協同が始 まっている事、そして具体的な団体の代表の話しなど、当サイトではホローしきれな い情報も満載しております。
今回はその一部、野鳥の聖域としての記事の部分だけ、転載し ておきます。
野烏の渡来地としての価 値 ー つり人6月号より、ライター浦壮一郎 ー
三番瀬を守る運動を続けてきた田久保晴孝さんは「三番瀬を守る会」会長 であるとともに『日本野鳥の会東京支部』の監事でもある。同支部では、93年から有 明貯木場で野鳥の調査を行なってきており、鳥の専門家として埋め立て計画に疑問を 投げかける。
「有明貯木場は水鳥もものすごくいるんです。不忍池にカモがたく さんいますけど、あれを 超える数が貯木場にはいます。そういう場所を、全く水鳥 に関係ありませんみたいなアセス メントを出して埋めてしまうのは、もってのほかだと思います」。
これまでは、ハゼの生息地として注目され続けてきた十六万坪だ が、シンポジウムでの
田久保さんの発言によれば、どうやら野鳥にとっても欠かすことの できない水域であると
いう。
干潮時に現われる干潟には貝類をはじめ、ハゼやスズキのエサに なるゴカイなどの底生生 物が多数生息しており、それらは野鳥にとっても重要なエ サになっているのである。
lOOOを超える数の野鳥が渡来していることがすでに確認されており 、東京都の海、いや都内全体でも、これほどまでに野鳥が渡来する場所は貴重という 。
調査結果によれば、特に干潟でエサをついぱむ鳥のシギやチドリ が見られることからも、 野鳥にとっても十六万坪の浅瀬が重要な役割を果している ことは明白だ。
では、実際にどの程度の野鳥が生息しているのだろうか。田久保 さん同様、現地調査を行なってきた日本野鳥の会・東京支部の東良一さんに話を聞い た。
まずは干潟に集まる野鳥として知られるシギ、チドリだが、これ らの鳥はおおむね日本以南で越冬し・シベリアや北極海で繁殖する。そして日本の干 潟は、彼らにとってなくてはならない存在であるという。「シギやチドリは日本を休 息地としている場合が多く、干潟がその際のエサ場になっているんです。そして潮が 上がってきた時にどこへ行っているか、これがよく分かっていないんですが、有明貯 木場はエサ場としてだけでなく、満潮時など、干潟が海に沈む時間帯の休息場所にな っていると思います」。
干潟をエサ場とする野鳥が確認されているだけでも、十六万坪が いかに干潟としての機能を有しているか、その証といえるものだが、野鳥の専門家か ら見れば休息場所としても重要だという。その理由は周囲の環境変化と関係がある。
「30年くらい前を考えると、おそらく田んぼだとか遊水池だとか 、あるいは蓮田だとか、そういう所が上げ潮時の休息場所になっていた思います。そ れが今は東京湾岸にそのような場所はほとんどないですから、その代替地になってい ると思いますね」。
東京都の環境アセスでは、野鳥の種類と数を調査しているだけで 、休息地としての視点で調査が行なわれた形跡はない。
また、冬季調査は平成9年1月31日のー回のみ、春季は同年3月27日 、5月14目の2回、夏季は7月25日、秋季は10月20日でそれぞれー回だけしか行なわれ ていない。さらに繁殖調査だが、調査方法として「鳥類の繁殖期に調査地点内を踏査 し、巣等の発見につとめ併せてディスプレイフライト(求愛行動)等の繁殖に係わる 行動を観察した」とあるが、それも平成9年5月14日(春季調査と同日)のー回のみで ある。つまり鳥類調杳が行なわれたのは、わずか計5日間だけである。この調査結果 のみで「鳥類への影響は少ない」と結論付けているのだ。
これで環境アセスと呼べるのか、はなはだ疑問である。
ほかの鳥に目を移してみよう。種類、数ともに十Z万坪で最も多 いのがカモ類である。
その中で、皇居の周囲に生息するカルガモはTV報道でもおなじみだ が、親鳥がある程度成長したヒナを連れてきているのではないか、と東さんらはみて いる。「カモは卵からかえると親のあとをついて歩きますが、それが小さい頃と大き くなってからとエサが違うと思うで すよ。大きくなっていく過程で旧貯木場に移って、あそこで成長し ているようなんです」と。
東さんらのグルーブが行なってきた調査によれば、カルガモの数 は東京港の他の地域と比較して格段に多く確認されているという。場合によっては皇 居に生息するカルガモも、十六万坪へ移動しているのかもしれない。
さらに、前号でもお伝えしたように、平成9年2月の調査ではオオ タカがー個体確認されている。オオタカはレッドデータブックの希少種に指定されて いる猛禽類だが、都のアセスでは全く触れられていない。また、1年にたった5日間の 調査では、発見できなかったとしても何ら不思議はない。このように重要な項目が抜 け落ちていることからも、都は再度アセスをやり直すべきなのである。
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