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都議会民主党に続く議員団の視察
市民運動が熱気を帯びるなか、議員による現地視察も続いている。 昨年12月の都議会民主党に続き、今年2月24日には環境問題に積極的 な姿勢を示してきた民権政党『国民会議』(代表・中村敦夫参院議員) の下町メンバーが十六万坪を訪れた。環境問題が21世紀の日本に欠か せないテーマのひとつと考える国民会議の面々は、吉野川可動堰建設 問題をはじめ日本各地の公共事業を視察し、その問題点を指摘し続け てきた。その一環として、有明北地区埋立事業に対しても疑問を抱き、 視察に至ったということである。 |
また、3月7日に行なわれた海上デモには代表の中村敦夫参院議員も駆けつけ、東京に残され た最後の浅瀬である十六万坪、その価値を見極めずに埋め立ててしまおうとする東京都の計画 に疑問を投げかけた。 これらの動向を見ても分かるように、この埋立事業は都議会のみならず、国会議員の間にも浸 透しつつある。日本の首都で起こっている問題だけに、今後、より多くの国会議員が関心を持 ち始めることは間違いないだろう。 埋め立てられな海はない 十六万坪の価値、その認知度が加速度的に高まるなか、東京都港湾局は2月24日付けで運輸 省に対し、埋立事業の認可申請を行なっている。これは、都議会でこの問題が議論される以前 に強行されたもので、港湾局がいかに民意をないがしろにしているか、その現われといえる出 来事であった。また、その2日前の22日には、共産党都議団と自治市民の2会派が石原都知事 と港湾局長に認可申請の延期を申し入れたばかりである。 早期着工を目指す都の姿勢は、明らかに民意から遠ざかっているという印象を受ける。 対する運輸省だが、前号でお伝えした〃盲目的に判子を押す”という記述に異論を唱えてはい るものの、「公有水面埋立法は手続法のようなもの」と語っていることからも、やはり力量不 足は否めない。また「埋立法は東京都の判断に間違いなければ認可になるという主旨であっ て、問題があれば都議会で議論していただかないと……」と、世論の高まりに困惑気味だ。 しかし問題があるからこそ、これほどまでに反対運動が活発化したのであり、都民の海、 国民の海を守れないとあっては、運輸省に対して関係者が疑念を抱くことは無理もない。 運輸省への批判は期待感の裏返しともいえるものだが、現状では関係者が頼れる存在には成り 得ないようだ。 もうひとつ、この事業に対する関係省庁として挙げられるのが環境庁である。しかし、埋立面積が35・4haであることから、国の環境影響調査は義務付けられていない。環境影響評価法 では50ha以上という.ラインが定められているため「関与のしようがない」と同庁企画調整 局・環境影響審査室の担当者は言う。 ところが十六万坪の周囲を見渡して見ると、豊洲の護岸付近での埋立一工事がすでに着工さ れているばかりか、月島の運河にも埋立計画があると聞く。これらの埋立計画を含めれば軽く 50haを超えるのは明かであり、何よりも、臨海副都心開発をひとつの事業として考えれば、 環境庁が入らないほうが不思議である。 つまり、計画そのものが法を隠れ蓑にしており、事業を個別に少しずつ行なってゆけば、 悲しいかな”埋め立てられない海はない”という諭理が成り立ってしまう。 有明北地区埋立事業は、皮肉にも国の環境影響評価法がいかに"ザル法”であるかを浮き彫 りにしたともいえる。しかし、いかに基準以下であるとはいえ、環境庁としても何らか の形で意見や声明を出すことは可能なはずだ。それができないのであれば、 何のための環境庁なのか存在意義を間われることになるはずである。 今後の動向に注目したい。 |
日増しに高まる計画見直しの声 小誌1月号以来、再三にわたって取り上げてきたこの問題も、新聞各紙やTVなどで報道され るようになり、ようやく都民、そして国民に認知されるようになってきた。 もともと干潟や浅瀬の重要性は、全国各地の自然保護運動で語り尽くされてきた経緯があり、 十六万坪も諌早湾や藤前干潟、そして、二番瀬など、全国の名だたる干潟の仲間入りを 果たしつつあるといっていいだろう。すでに世論の関心は、東京の湾奥に残された最後の浅瀬 「十六万坪」の価値へ向けられており、それを無視する形で東京都港湾局が事業を強行するの か、または民意を反映し、中止もしくは休止という英断を下すことができるか、という点に 注目が集まってきている、 3月7日に開催された大規模な海上デモ、そして同11日のシンポジウム(次号で詳しく解説す る予定)からも分かるように、十六万坪の価値はハゼの聖地としてだけでなく、野島にとって も同様の価値があり、東京湾の生態系に欠かせない存在として語られるようになった。 千葉県民から見た東京湾の象徴的存在が三番瀬であるように、今後、東京都民にとって有明 旧貯木場.十六万坪がそうなる可能性は極めて高い。 東京において、最後の浅瀬、そしてハゼの聖地と呼べる水域は、すでに十六万坪をおいて ほかにないからである。 その存在を守ろうという運動は、確実に、かつ大きな広がりを見せつつある。それは三番瀬 の運動との連携もすでに視野に入っており、東京湾が有する一すべての干潟、浅瀬を守る運動 へ発展していくことになるはずだ。 また、都議会に目を向ければ、計画当初から埋め立てに反対してきた共産党から、秋田かく お議員が「都民に親しまれている貴重な自然を破壊してまで、埋め立てを強行しなければなら ない理由はない」と見直しを求めたほか、民主覚の林知二議員も「立ち止まる勇気が必要、 勇気を持って立ち止まり、再考すべき」と発言。共産党だけでなく民主党が凍結に動き始めた ことは、大きな前進である。 市民の運動に呼応するように、都議会では共産・民主・自治市民の3会派が見直しを要求し ているほか、海上デモには国民会議の中村敦夫参院議員、共産の緒方靖上八参院議員が 駆けつけるなど、民意は確実に議員の間にも浸透しつつある。 |