丸帆亭 萬釣報 #36 2000.3/25 更新                   
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つり人5月号の有明関連記事、全文掲載!P.3
  一般市民も多数参加、かつてない規模の海上デモ
有明北地区(十六万坪)の有明埋立計画に反対する釣り船関係者や
市民が、3月7日午前、江戸前と呼ばれる東京湾湾奥の海城で大規模な
海上デモを行なった、
参加した屋形船や乗合船は約60隻。レインボーブリッジに集合した
船団は、大漁旗や「最後の江戸湾、守ろう江戸前」などと書かれた
横断幕を掲げ、東京港を.一周したのち、埋め立て反対を訴えながら
十六万坪に入った。
 過去にも海上デモは行なわれたが、今回のデモはこれまでにない大規模なものとなり、
TVや新聞をはじめ報道各社も注目。結果、埋立計画の問題点は多くの市民に認知されること
になったといえるだろう。
 参加団体は屋形船東京都協同組合』、『臨海部開発問題を考える都民連絡会』、『都民のた
めの臨海部開発を求める江東区民の会」など計7団体。屋形船ほか釣り船によるデモであるこ
と、そして十六万坪が東京湾に残された唯一有望なハゼ釣り場であることから、報道で強調
されていたのは「釣りファンや釣り船関係者による海上デモ」という点である。
 しかし、実際に船に乗り込んだのは、釣り人ばかりではなかった。参加人数は約300人。
その中には釣りをしない一般市民をはじめ、三番瀬などで運動を繰り広げてきた市民団体、
そして都議会や国会の超党派議員など、ハゼ釣りとは無縁といえる人々も多数乗船していた
ことを忘れてはならない。十六万坪の理立問題はすでに釣り人だけの関心事ではなく、
一般市民企体が共有する問題としてとらえられつつあることが、今岡の海上デモで明らかに
なった。
十六万坪が、東京湾本来の自然が古くから維持されてきた、都内では唯一といっていい水域
であり、その事実が一般市民にも浸透しつつあるということだ。また、当日は深川の船宿
『冨士見」による練り船が披露されたほか、プレジャーボ一トによるシーバスフィッシングも
デモの一環として行なわれた。シーバスは、午前の数時間で計10尾が釣りあげられ、中には
70Bクラスも混じるなど、多くの人々が十一六万坪の自然の豊かさを改めて知ったはずだ。
 ちなみに、その
すべてのシーバスは、魚一体の黒い”居着き”であり、たまたま回遊一して
きたのでなく、十六万坪を生息の場と一している定着型
だったことも付記しておきたい。
これも豊かな生態系が保持されている証といえる。
中村敦夫参院議員、石原都知事にもの申す。
議員として海上デモに参加したのは、都議会からは、かねてから臨海開発の問題を指摘して
きた共産党都議、そして有明北地区埋立事莱を凍結の方向で固めた民主党都議の面々である。
 また、今回の海上デモには、国会からも中村敦夫参院議員(国民会議代表)が参加し、
注目を集めた。
 中村議員は石原知事の政策に一応の理解は示しつつも、十六万坪埋め立てに対しては異論を
唱えている。「今までの知事にできなかった、いろいろなよい政策を非常に強引にやっている
こと、それはこれからの自治体の長としてはなかなか立派だと思う」と、石原都政に評価を示
す一方、財政一再建の整合性には疑問を投げかける。
「財政再建といって外形標準課税をやって大銀行から税収を取る。これはよい政策だと思いま
すが、その一方でムダな公共事業で借金を作ったら元の木阿弥のはずなんです、銀行はダメで
ゼネコンは0Kという、そんな話では困る。
今後はゼネコンと石原知事の関係がいったいどうなっているのか、改めて厳しく検証しな
ければならない」と語る。中村さんが指摘するように、大銀行に外形標準課税を採用する傍
ら、公共事業には新たに起債するというのが石原都知事の政策である。これでは、財政再建と
しての.一貫性は感じられないとの指摘が出るのも無理はない。
そしてそれは、まるで東京都
港湾局が主張するカラクリに、石原都知事が踊らされているよ
うにも見えてしまう。

港湾局によれば、有明北地区の理立箏業には関連費用も含め約750億円かかるといわれてい
る。対する採算性については埋立面積35・4haのうちの18haを宅地用地とし、2008年度ま
でに売却及び貸し付けする計画だが、その際の地価をー平方mあたり50万円(現在の周辺地
価は38万5000円)と見込み、「処分可能な宅地資産は900億円に上り採算は取れる」と言
う。しかし、これは埋立事業に関する予算内(港湾局のみの予算)での試算であり、建設局の
事業である造成後の上地区画整理事業や区画道路整備費を含めると、実に1319億円もの予算
を投入することが明らかになっている。
 つまり、都が主張する採算一性には大きな疑問が残ることになるわけだ。
 海上デモ当日、中村議員もこの点を指摘している。「東京都が言う採算性についても、
これはまさに〃捕らぬ狸の皮算用”であって、これまでのケース(臨海副都心開発の失政)と
全く変わらない。石原都知事もせっかく今まで人気のある政策を取ってきたんだから、こんな
ところでミソをつけてほしくない」と手厳しい。
さらに中村議員は、海上デモの参加をきっかけとして現地を視察したことで、自然環境として
の価値、そして文化的価値にも注目する。「風景としても、どうしても壊したくない場所です
ね。ムダな公共事業のために、子孫に対して残された東京湾の自然を抹殺してしまっていいの
か、その思いを強くしました」と諮った。
一方の.石原都知事は、いまだ現地を訪れようとはしない。立派な知事室で臨海部の地図を
広げながら、青い海を灰色で塗りつぶしているだけ……といったところだろうか。早期に
石原都知事本人が現地を視察し、東京都に残された最後の浅瀬、その価値に気づくことを
切に願うところである

故郷を失うにひとしい埋立計画
去年12月の都議会で、石原昨年都知事が「ハゼはどこかに移るでしょう」と発言したことは
小誌3月号でもお伝えしたとおりだが、海上デモにはその発言を引き出した共産党の渡辺康信
都議も駆けつけ、デモ終了後の記者会見で次のように語った。
 「吉野川可動堰や愛知万博など、今や開発第一主義は見直すことが時代の流れのはず。
都政では臨海開発がその典型で、都財政を立て直す意味でも都民全体で考えていかなければな
らない」さらに十六万坪の生態的な価値、そして文化的な価値も踏まえた上で、「当面はとり
あえず凍結をさせて、都民参加で抜本的に見直す必要がある」としている。
 臨海開発の問題点を指摘し続けてきた共産党としては、同じく凍結の方向へと動き出した
民主党、そして自治市民の3会派とともに、港湾局と石原都知箏に対して見直しを迫る構え
だ。
 一方、今回の海上デモ、その事務局を担当した「屋形船東京都協同組合」の安田進さんは、
船宿としての立場を超え、都民として十六万坪を残したいと願うひとりである。安田さんは
言う、「デモを行なったのは、決して屋形船やテンプラ船を存続させるだけの、ちっぽけな
了見じゃない。純粋に江戸前の自然と文化を守りたいからなんです」
江戸前で育ち、東京湾こそが子どもの頃からの遊び場だった安田さん。彼にすれば十六万坪
の埋め立ては故郷を失うことにひとしい問題といえるだろう。ダム建設によって移転を余儀な
くされる山村の住民と、その感覚は酷似しているかもしれない。そして海上デモを行なうこと
で、「湾奥にも素晴らしい自然がまだ残っていること、それが東京のど真ん中にあるという
ことを、ぜひ知ってもらいたかった」と話す。
 3月7日に行なわれた海上デモ、同11日に開催されたシンポジウム一詳細は次号にて掲載予
定)によって、安田さんをはじめ参加団体が進める運動は、広く世間に認知されつつある。
「目には見えない水の中の価値というものを、必ず映像で皆様にお見せしたい」と語る安田さ
ん。少なくとも今秋まで着工を遅らせることができれば、それも難しいことではない。
そして映像によって十六万坪の素晴らしさを伝えることができれば、石原都知事の考えを改め
させることも、決して不可能ではないはずだ。
また、11日に開催されたシンポジウムを機に、一般都民による新たな市民団体
『江戸前の海16万坪(有明)を守る会一仮称)』代表・安田進 ,を結成。計画の見直しを求
める動きがより活発になってきたことを示唆している。
都民としても、そして釣り人としても江戸前の海を残すために、できうるかぎりのバック
アップをしていきたいものである。
2000.3/25 つり人5月号より 転載 校了
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