ザンジバルからの手紙

総選挙後の緊迫した状況について


11月4日(現地時間3日午後8時)ザンジバルの友人と電話で話す。
ザンジバルでは今もお店などの半数以上が閉店したまま、街は閑散としている。開いている店も輸入品が(本土からも含めて)入ってこないせいか、商品が売れるにしたがい、補充されない状態である。この状態が続くと市民生活が困難になるだろう。選挙後CCM支持者によってCUF支持者に対する放火などが行われた。このためペンバ島出身者(CUF支持者が多い)の多くの女性や子供はペンバ島に戻って難を避けようとしている。17カ国の援助国による現タンザニア大統領Ali Hassan Mwyini氏へのザンジバル大統領選挙及び議会選挙に対する要望書? への回答期限は4日になっているが、現在のところ回答はしていない。要望書はCCMのSalmin氏のザンジバル大統領就任を認めない。選挙の投票結果をもう一度公正にやり直し発表すること。このままの状態が続くならばザンジバルへの援助を凍結すること。が記されている。タンザニア全体の選挙については国連の要請もあり、ボイコットを行うといっていたCUFも参加した。国会選挙では、本土ではCCMが圧勝した(ザンジバルではCCM とCUFがほぼ半分半分)。タンザニア大統領選はまだ開票結果が全くでていない。しかし、この選挙も不正が行われている可能性が高い。実際ダルエスサラームでは5日に再投票が行われる事になり、野党陣営は全国でのやり直しを求めている。 
11月2日一昨日、在外タンザニア人からE-mailが届き、ロイター電なども含めE-mail from Tanzanian30.Oct.'95に転載しました(著作権は?と考えると恐ろしくなりますが、タンザニアの状況をマイナーな場所でもいいから流通させようという気持ちに免じて許してもらいましょう)。それによると、ザンジバルでは10月20日金曜日に豪華式典を行い、CCM のSalmin氏が大統領になったようだ 。
総投票数333,899
Dr. Salmin(CCM) 165,271
Seif Shariff (CUF) 163,706
無効4,922

という結果だったようだ。ただし、この式典には各国大使も列席せず、監視にあたった国連の人々もあまり参加しなかったようだ。このことで、CUFは29日のタンザニア全体の総選挙も大統領選挙もボイコットすることになった。そして自党のタンザニア大統領候補者(Ibrahim Lipumba氏)も立候補を取りやめた。彼は記者会見で、ザンジバルで行われたことがタンザニア全土で行われるだろうから、茶番で偽造の選挙でしかないと語った。また、今回の選挙を援助した17カ国の代表であるオランダ大使のJan Wijenberg氏はザンジバルの選挙結果には根本的なおかしさがあり、再調査する必要があると語った。29日のタンザニア全土の選挙は選挙自体が円滑に実施されず、月曜日になっても投票が行われないところがままあるようだ。タンザニアという電話等の手段が極度にない地域のことで、取材地が限られているが、ダルエスサラームの状態がこうであるから、ほかは推して知るべしだ。ということで、ぼくが思うのは、CCMはザンジバルだけでなくタンザニア全体でも今度の選挙自体を無駄にしてしまった、という感じだ(しかし、色々な妨害を行い、投票数操作をしての上でのこの僅差は、CCMの自信のなさを表している)。結局何も決まらず野党の不満が残り、CCMは外圧を内政干渉といって生き延びていくのか? または決定的な方向転換が起こるのだろうか? しかし、CCMのやり方は姑息すぎ、彼等の革命以後の業績自体を否定する結果になったような気がしてならない。これでは、ニエレレ氏(初代大統領、清廉潔白で人々が先生の愛称で呼んでいる。現在は引退しているがCCM内では絶対的な影響力を持っていると言われている)をもう先生(Muwalinu)と呼ぶ国民がいなくなってしまうのではないか? 
10月30日深夜(現地29日20時)電話で話すが、混線気味で会話にならない。しかし、危険な状態ではないことは伝わる。どうも、総選挙も大統領選挙もCUFが 勝ったようだが、それの判定が出来ないようだ。という趣旨のことを電話の向こうで言っている。総選挙については、すでに結果がでていたようだったので、この間の推移は不明。
10月29日Gemini News Service reportsのZEPHANIA UBWANI, LAWI JOELand GLYN ROBERTS in Dar es Salaam .からの要約
29日に行われるタンザニアの大統領選挙では4氏が立候補している。このうちの2候補は以前から有力視されていた CCM(革命党=与党)の Benjamin Mkapa氏と、カリスマ的魅力を持つといわれるNCCR-Mageuzi(National Convention for Construction and Reform=最大野党 )のAugustine Mrema氏である。Mrema氏は今年はじめ内閣からはずされた後で、CCMを脱党した。CCM時代の政治的手腕で労働者、中小商店主、低所得者層に支持されている。しかし8月になってザンジバルで勢力を持つCUF(Civil United Front)から、43歳の経済学の教授Ibrahim Lipumba氏が立候補したために、選挙戦は分からなくなってきた。第4の候補者は the United Democratic PartyのJohn Cheyo氏だが大勢に影響を与えないと思われている。29日の一回目の投票でだれも過半数の投票を得られなかった場合は、40日以内に1、2位による決選投票を行うことになっているが、決選投票になるのは確実で、なおかつそうなれば、NCCR-MageuziのAugustine Mrema氏が有利だろうと関係者は見ている。
10月27日10月21日付(ザンジバルの選挙の一日前)の手紙が届きました。
10月13日ペンバで CCMの集会に出かけた大統領候補のMr.Salminが自党の集会を後目に、CUFの集会に出かける民衆に腹を立て、CUFの集会に集まった群衆に対して威嚇射撃によって集会の妨害を企てたが、逆に群衆の抗議が激しくなり、催涙弾を発射した。このため50人近くが入院した。しかし、群衆はなおもその場を動かなく危険な状況が続いた。しかし、CUFの党首Mr.Safeの説得で解散したため、大事には至らなかった。CUFによってこの事はビデオによって各支部で報告されたが、ザンジバル、そして本土でもテレビ・ラジオではいっさい報道されなかった。ただBBCラジオだけが報道した。選挙人登録についても、最近になって何百人もの人(ほとんどがCUF支持者)に対して再調査の命令をラジオで呼びかけ、投票権が剥奪された。このほか、CCMは英国からの援助の投票用紙の使用をキャンセルし(このことで英国政府は激怒した)、南アフリカで投票用紙を制作し、自身でそれを管理し、疑惑をもたれても仕方のないことをやっている。これらの事に対してCUFはボイコットも辞さない態度をとっていたが、17日最終的に選挙に参加することを決定した。これは投票、開票に国連や野党も立ち会う、CCMが保管する投票用紙の総数を国連、野党のもとでカウントし共同管理下に置く、という条件を一応CCM側がのんだため。しかし、CCMのSalumin氏はCCMの集会で「選挙に負けても、政権は渡さない」と発言しており、その真意は不気味だ。
10月26日深夜(現地時間26日21時)ザンジバルの友人と電話で話しました。
ザンジバル国会議員の選挙結果はCUF 23(ペンバ島21+ザンジバル島2)CCM 26(ペンバ島0+ザンジバル島26)だった。
一昨日の電話では大統領選についてもCCM 有利という感じで話したが、現在の状況は国会議員選挙では負けたものの、大統領はCUFという感じです。なぜなら政府系のザンジバルラジオでさえも, BBCや外国報道機関が大統領選でのCUFの勝利を報道していると, 他人事のように報道しているからです。しかし、誰が票を数えているのか? 選挙管理委員会はいつCCM、CUFの大統領を確定できるのか? 大統領選を含め、どちらにしても、不満が解消されないだろうから、ここ2、3日が暴動云々の正念場でしょう。
10月23日深夜(現地時間23日21時)ザンジバルの友人と電話で話しました。なお、英文のレポートについてはThe letter from Tanzanian を見て下さい。E-mailで情報が届きました。 
現在のところ混乱は起きていない。選挙前の土曜、そして当日の日曜は準戒厳令状態で街には人も車も通っていなかった。また商店も市場も閉鎖されていた。現在ザンジバルの国会の議員の開票が進んでいるが、CCMが有利のようだ。もう一つの島、ペンバの方は予想されていたように、CUFがリードしている。今後ザンジバルの大統領の開票が進むが、現大統領の Salmin Amor(CCM)氏が対立候補のSeif Sharif(CUF)氏を破るだろう。このことで噂されていたCCMによる暴動は回避されるだろうが、選挙妨害が相次いだ末の選挙だったのでCUF側が敗北をそのまま受け入れるかどうかが、焦点になってくる。選挙前にはCCM の暴動に対してアメリカの潜水艦がザンジバル近くで待機しているという噂もあったくらいだが(CCM側の謀略的な噂という説もある)、今のところザンジバルで内戦が起こる事は避けられている。少なくとも議会では半数近くの議席をCUFが獲得するだろうから、徐々にザンジバルの政治状況は変わっていくだろう。
10月15日ヨーロッパに住むタンザニア人からE-mailが届きました。彼はザンジバルに友人がおり、その友達から情報を得ているようだ。原文はThe letter From whom......を参照下さい。訳がおかしかったら、御指摘下さい。今回も彼/彼女の名前は公表しません。
1995.10.15
ザンジバルの総選挙はいよいよ一週間後の10月22日に行われる。
与党のCCMによって選挙に対して不正な陰謀が行われていると、野党CUFの指導者が発表している。
例えばCUF の指導者はいくつかの選挙の不正を用意した投票用紙を入れた箱が、ウェテ、チャケチャケ、ムコアニ(訳注:CUFの勢力の特に強いペンバ島の地名)のホテルの特別室に公安兵隊の見張りのもとに保管されていると話している。そして、それらの部屋は立ち入り禁止になっていると。
そこで、CUFは国際選挙監視団に対して、選挙の結果を損ね、ザンジバルに混乱をもたらすCCMの違法行為を監視するように要請している。
また、CUFの指導者はCCMは選挙に負けたときには、退役した高級軍属を使って、平和を混乱におとしめる計画を練っているとも話している。
しかしながら、ザンジバルの状況は穏やかで、人々は来るべき、D-DAYを待っているようだ。
以下の手紙はザンジバルの友人から送られてきたものです。スワヒリ語からの翻訳がうまくできていないので文責は、ぼくにあります。また、彼/彼女に政治的に迷惑がかかる可能性があるので氏名は公表しません。
1995.9.17
前略。いよいよ選挙まで、一ヶ月ちょっととなり、毎日いたるところで政治集会が行われています。
CCM(革命党=1964年の革命以来の与党)の嫌がらせもエスカレートしています。先日は団体でペンバ島に、わざわざ混乱を起こさせる目的で何十人もの若者を送り込んだのですがCUF(Civic United Front=ザンジバルでの最大野党)でがっちり固められているペンバでは混乱も起こせず、すごすごと帰ってきたそうです。
そして、その腹いせなのか(?)ペンバ帰りのCCMの若者を乗せたトラックは街を走り回り「あいつらは、わざとペンバに騒ぎを起こしに行ったんだ!」とCUFの党支部(両政党とも百軒に一カ所ぐらいの割合で支部を持っていて、いつもたくさんの人が集まっている)にいた人たちから指摘されると投石を始めたらしい。また市場の回りの商店街では、その経営者の金持ちが、ほとんどCUF支持者だという理由で投石し、関係のないダルエスサラームから商売で洋服等を買い付けに来たおばさんたちも逃げまどい、そのごたごたの中で荷物を盗まれたり無茶苦茶だったようです。そして、翌日には商店の前で屋台で商売していた、混乱の被害者である、揚げ鶏とチップス屋とかムシカキ(焼き鳥状の牛肉=タンザニアではポピュラーなスナック)屋とかも市役所によって強制立ち退きさせられた。しかし、騒ぎを起こした張本人であるCCMには何のおとがめもなかったようです。
9月初めには、CUF支部の集まって雑談していた人たちに対して突然警官が警棒を持って解散を請求し、その中の一人はひどく殴られ頭にけがをし、腕も折られるという事件もありました。
タンザニアでは選挙に立候補すると選挙運動のために政府から公的な補助がされることになっていますが、複数政党制になった今では、当然野党の候補者にもそれが支給されるべきなのですが、されていないらしい。一方でCCMは連日のように飛行機や車を使って「CCM NO.1」「CCM以外は悪者だ」といったビラをまき散らし、候補者のビラも写真入りの物を使っています。CUFの方は集会で「政府からキャンペーン費用がでなくても、自分たちの手で集めた寄付で候補者を応援して当選させよう」と頑張っています。
9月4日に終わった選挙権を得るための登録も問題の多い物でした。CUF支持者が来るとその地区に居住することを証明する地区指導者(政府の役人=CCM)が良く知っているのにもかかわらず「見たこともないし、よその地区の人間だろう」と言って登録させないケースが多々あったそうです。こういう具合ですからダルエスサラームからCCM支持者を呼んで登録させたりしていたらしい。
また、ラジオ、テレビの政見放送もCCMは毎日で、CUFは週に一回流されるかどうかです。内容については検閲が行われないように外国からの選挙監視団がチエックしているので問題ありませんが、CUFの政見放送の直ぐ後でCUFの主張に対して反論する番組を流しています。例えば、CUFが「ザンジバルには発展がない」と言えば、ザンジバルに一カ所ある外国の援助で建てたアパート群を流すといった具合です。
とにかく毎日毎日が選挙の話です。CUFの方針は「CCM がどんなに卑怯な手を使おうとも我慢しよう」ということだそうです。とにかく選挙が終わるまでは、CCMの挑発に乗れば、選挙権を剥奪されたり、最悪の場合反乱でも起こってしまえば、政府はそれを口実に選挙自体を延長出来るし、どう見てもそれを狙っている節がある。
数日前アメリカ大使館の人間が公に「アメリカは今度の選挙で何かが起こったときの準備が出来ている」と発言したり、緊迫感が高まっています。そして戒厳令がしかれる可能性も高いのでみんな食料を1-2週間ストックするようにしています。そのために物価も20%ほど上がっています。当然ザンジバルから今のうちに脱出する人もたくさん居ます。

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