◇◇ 夫婦同氏規定が憲法や条約に違反するとして、国に慰謝料を求めた初の国家賠償請求訴訟の判決が言い渡されました。◇◇

 最高裁判所大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は昨年12月16日、夫 婦同姓規定は憲法に違反しないとする初めての判断を示しました。ただ し、審理に加わった15人の裁判官のうち5人が違憲と判断しました。
 夫婦双方が氏名を保持する権利及び婚姻の自由を保障されるためには、 民法750条を改正して、夫婦別氏という選択肢を新設することが必要 不可欠であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこ れを怠っているとして、国の立法不作為を、憲法13条、24条や女性 差別撤廃条約(上告審からは憲法14条も追加)に照らして国家賠償法 上の違法性を真正面から問いましたが、訴えは認められませんでした。
 判決は、憲法13条について、「氏の変更を強制されない自由」は憲 法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない、憲法 14条についても「夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存 在するわけではない」として、いずれも合憲と判断しました。憲法24 条については、「夫婦同氏制は、我が国の社会に定着してきたものであ り、家族の呼称を一つに定めることには合理性が認められる」とし、 「氏を改める者にとって、アイデンティティの喪失感を抱くなどの不利 益を受ける場合がある」などと女性に偏る不利益を認めながら、「これ らの不利益は、氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得 る」と判断、「規定は憲法24条に違反しない」と結論づけました。た だし、「選択的夫婦別氏制度に合理性がないと断ずるものではない」と した上で、「この種の制度のあり方は、国会で論ぜられ、判断されるべ き事柄である」と、議論を立法府に委ねました。一方、女性差別撤廃条 約に違反するかどうかについては判断しませんでした。

 判決文はこちらをご覧ください。

     2015.12.16夫婦別姓訴訟最高裁判決

 夫婦別姓訴訟弁護団は、12月16日の夫婦別姓訴訟最高裁判決を受けて声明を出しま した。

    最高裁判決を受けて

 弁護団長より

    大法廷判決について



夫婦別姓訴訟の評釈・解説など主なものをご紹介いたします。

佐藤康宏「お笑い最高裁」『UP』2016.2, pp.26-27.
二宮周平「最大判平27.12.16と憲法的価値の実現(2)〜夫婦同氏強制制度」 『戸籍時報』no.737, 2016.3, pp.28-42.
羽生香織「婚姻の効力としての夫婦同氏―民法750条の合憲性」TKCローライブラリー新・判例解説Watch◆民法(家族法)no.83, 2016.3.4.
高橋和之「「夫婦別姓訴訟」―同氏強制合憲判決にみられる最高裁の思考様式―」 『世界』2016.3, pp.138-150.
寺原真希子「夫婦別姓訴訟―自分と異なる選択(生き方)を許容できるかー」 『法学セミナー』no.734, 2016.3, pp.44-47.
辻村みよ子『憲法と家族』日本加除出版2016.4.12.
「判例特報 夫婦別姓訴訟大法廷判決」『判例時報』no.2284, 2016.4.11, pp.38.
建石真公子「民法七三三条一項・七五〇条の憲法適合性判断」 『判例時報』no.2284, 2016.4.11, pp.53-56.
窪田充見「二つの最高裁大法廷判決」 『判例時報』no.2284, 2016.4.11, pp.57-62.
「夫婦別姓関係訴訟」『家庭の法と裁判』no.5, 2016.4.16, pp.43
「最高裁大法廷 時の判例」『ジュリスト』no.1490, 2016.3, pp.88-104.
二宮周平「女性の実の再婚禁止期間と 夫婦同氏強制制度―最高裁大法廷判決の意味と今後の課題」 『部落解放』no.723, 2016.3, pp.94-105.
尾島明「再婚禁止期間と夫婦同氏性に関する最高裁大法廷の判決」 『法律のひろば』 vol.69 no.4, 2016.4, pp.66-72.
小坂実「夫婦別姓裁判 最高裁「合憲」判決の教訓と課題」 『明日への選択』2016.1, pp.11-15.
村重慶一「夫婦同氏制度(民法750条)は憲法に違反するか」 『戸籍時報』no.736, 2016.2, pp.44-46.
折井純「選択的夫婦別氏―最高裁大法廷「合憲」判決を振り返って―」 『女性展望』2016.3/4, pp.21-23.
「判例紹介」『判例タイムズ』no.1421, 2016.4, pp.84-100.
斎藤一久「夫婦同氏原則を定める民法750条の合憲性」 『法学セミナー』no.735, 2016.4, p.108.
坂本洋子「レポート2016 夫婦別姓訴訟最高裁判決に思う」 『時の法令』NO1994,2016.1.30, pp.57-66