連載コラム・藤子な瞬間


週刊FFMM 101号(2001/07/28)より




▼その10「オヤジ・ロック」

 現実の出来事や日常生活の中でふと「こんな場面がマンガにあったな」と思う事はありませんか。それが「藤子な瞬間」です。ここでは私が体験した「藤子な瞬間」を紹介してきます。第10回は、久々にF作品から「オヤジ・ロック」です。F作品は半年ぶりですね。
 今回はSF短編のラストに触れており、ネタバレになりますのでご注意ください。

改めて、ネタバレになりますがよろしいですね。

それでは、

 先月(6月)の話です。私は今と同じようにパソコンに向かい、「藤子な瞬間」の原稿を書いていました。そして無事に書き上げ、「保存」をし、編集部へと送信……したつもりでした。が、編集部に届いた原稿は先々月(5月)のものだったのです。
 編集部へ送ったメールは私のところにも返ってくるのでして、この時も返ってきた自分の原稿を確認のために読み直してみました。すると、おや、これは。私は確かに新しい文章を書いて送信したはずなのに、返ってきたのは前の月に書いた文章ではありませんか。すぐに送信簿を確認しましたが、そこにあったのはまぎれもなく5月の原稿でした。じゃあ、さっきまで私が何時間か頭を絞って書いた文章はどこに?

 混乱する頭をどうにか整理し、しばらく考えた結果、これは以下のような自分の凡ミスであろうと結論されました。
 まず、私のコラムは、前月の原稿を丸ごと複製し、本文部分を書き換えたものを、その月の原稿としています。で、先月は書き終わった後、上書きするつもりが何かの拍子に「編集を破棄して終了」ということをしていたらしいのです。その結果「書き換える前」すなわち「前月の原稿そのもの」を送ってしまったわけです。

 この時は頭の中が真っ白になりました。そして思い出したのが「オヤジ・ロック」です。この作品は、主人公が1時間前に戻されて全てを失い「……おかしなユメを見た……」「暑さのせいだな……」と言って終わります。私も、あまりにもばかばかしい失敗なので「これは暑さのせいでおかしなユメを見ているんだ」と思いました。
 しかし、書いた原稿が消えてしまったのは残念ながら現実であり、私は記憶をたぐってもう一度原稿を書いたのでした。
 まあ、小説家のワープロが壊れて単行本一冊分書き直し……何てよりはずっと楽な作業ではありますが。

<『オヤジ・ロック』あらすじ>

 夏の団地で出会った二人のセールスマン。一人は巨大なアイディア商品を、一人はタイムマシンを売っていたが、どちらもサッパリ売れなかった。ところが、二人の商品を合わせて利用したところ……。

<収録>

●愛蔵版SF短編集1巻(中央公論社)
●藤子・F・不二雄SF短編 PERFECT 版 第4巻「未来ドロボウ」(小学館)
 ほか

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