弁護士 > 法律事務所 > 離婚/婚約不履行 > 違法に始まった父親の下での養育だが、子どもの環境を変更するような親権者指定はされないか
2015.3.19更新mf
違法に始まった父親の下での養育だが、子どもの環境を変更するような親権者指定はされないか
相談
私(29歳)と夫(32歳)の間には、子供(4歳)がいます。
昨年、別居し、私は、子供と一緒にアパートに住み始めました。土曜日、日曜日には、夫の実家に子供を連れて行って、夫と子供を会わせていました。ところが、昨年9月、夫の両親は、子供を私に返さなくなりました。私は、何度も、夫の実家に行き、返すよう求めましたが、子供を返してくれませんでした。警察も呼びましたが、来た警察官は、「民事不介入」と言って、何もしてくれませんでした。
丁度その頃、私は、法テラスへ行き、離婚調停の弁護士紹介と弁護士費用の立替をお願いしました(調停は不調に終わりました)。弁護士(33歳)に子供のことを話すと、弁護士は、「全部任せてくれ。子供のことは一審判決が出てからでいい」と言うだけでした。
今年2月離婚訴訟を提起しました。親権者指定のための家庭裁判所調査官の調査が入り、この度、報告書が届きました。それを見て、驚きました。報告書では、「夫の両親の下で子供を育てるのがいい」と書いてあるのです。
子供が幼い場合は、母親が親権者に指定されると聞きましたが、私の場合はどうなりますか。
相談者は、別の法律事務所を訪ねました。
回答
幼い子供の場合、母親の子供に対する扱いがよほど非常識でない限り、ほぼ母親が親権者に指定されます。ただし、従前の子供の養育環境が父親の下である場合は、それを変更する必要があるかが判断されます。通常、養育環境の変更は好ましくなく、このような場合は、父親が親権者に指定されるでしょう。ただし、父親の下での養育が違法に始まった場合は、別です(下記判決)。本件の場合、父親の養育は違法に始まっています。裁判所も判断に迷います。
相談を受けた弁護士は、夫の両親が子供を返してくれないとき、返してくれと要求した証拠はあるかと尋ねると、相談者は、「メールがある」と答えました。しかし、メールは証拠に出されてはいませんでした。
事件を担当している弁護士は、明らかに、知識不足です。子供を返してもらえない場合は、すぐに、子供の引渡を求める調停を申立、同時に、子供の引渡を求める仮処分をすべきでした。子供が父親の下で養育されている状態が長く続くと、父親が親権者に指定される蓋然性が高くなります。
このような場合、法テラスでは、子供の引渡についての事件を追加の扶助事件として扱い、さらに弁護士費用を立て替えてくれます。担当した弁護士は、「自分に任せろ」と言うだけで、何もしなかったのですから、明らかに弁護ミス(弁護過誤)でしょう。
現在は、弁護士大量生産の時代です。依頼者自身が、自分の目で弁護士の良し悪しを判断する必要がありましたね。
判例
- 千葉家庭裁判所松戸支部平成28年3月29日判決
上記認定の事実によれば、原告(父親)は被告(母親)の了解を得ることなく、長女を連れ出し、以来、今日までの約五年一〇か月間、長女を監護し、その間、長女と被告との面会交
流には合計で六回程度しか応じておらず、今後も一定の条件のもとでの面会交流を月一回程度の頻度とすることを希望していること、他方、被告は、長女が連れ出され
た直後から、長女を取り戻すべく、数々の法的手段に訴えてきたが、いずれも奏功せず、爾来今日まで長女との生活を切望しながら果たせずに来ており、それが実現し
た場合には、整った環境で、周到に監護する計画と意欲を持っており、長女と原告との交流については、緊密な親子関係の継続を重視して、年間一〇〇日に及ぶ面会交
流の計画を提示していること、以上が認められるのであって、これらの事実を総合すれば、長女が両親の愛情を受けて健全に成長することを可能とするためには、被告
を親権者と指定するのが相当である。
原告は、長女を現在の慣れ親しんだ環境から引き離すのは、長女の福祉に反する旨主張するが、今後長女が身を置く新しい環境は、長女の健全な成長を願う実の父親
が用意する整った環境であり、長女が現在に比べて劣悪な環境に置かれるわけではない。加えて、年間一〇〇日に及ぶ面会交流が予定されていることも考慮すれば、原
告の懸念は杞憂にすぎないというべきである。
よって、原告は被告に対し、本判決確定後、直ちに長女を引渡すべきである。
登録 2007.9.17