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3.陽子の一日 |
●「阿弥陀堂だより」● ★★★ |
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2002年08月
2005/01/23
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映画を観ていて所々で感じていた疑問が、原作を読んで解消しました。 孝夫の故郷に戻ってくる前、孝夫と美智子は各々に都会の暮らしの中で挫折したと言えるでしょう。孝夫は小説家を目指しての行き詰まり、美智子は流産に端を発した恐慌性障害という病気を得てというように。 映画を観て、原作を読んで、それで初めて目一杯楽しむことができる作品でしょう。今回原作を読んで、また映画を観なおしたくなりました。 |
※映画化 → 「阿弥陀堂だより」
●「草すべり その他の短篇」● ★☆ 泉鏡花文学賞 |
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2011年09月
2008/07/29
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表題作の「草すべり」は、高校の時に同級だった女性=紗絵ちゃんからの誘いを受け、一緒に浅間山へ登るという話。 他の3篇も、過去への回想、山登り、という話で、基調となっているテーマは表題作と共通しているようです。 草すべり/旧盆/バカ尾根/穂高山 |
3. | |
「陽子の一日」 ★★ |
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2015年07月
2013/02/22
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60代となった女医が、昔同僚だった男性医師の自伝的な「病歴要約」を読んでその軌跡を辿ると同時に、自身の来し方をもまた振り返る、というストーリィ。 主人公の江原陽子、南木さんのデビュー作「破水」において一人で子供を産むことを決意した女医の30年後の姿だそうです。 題名に「一日」とあるように、朝07時08分から夜11時13分まで、時間を追って主人公の一日を描いていくという趣向です。 そのことによって、ただ今生きているところの今日一日、という雰囲気をリアルに感じます。 今の総合病院にずっと30年間勤務。今はもう最新の医学知識についていけず最前線の医師・看護師らから脇に押しのけられ、現在は外来診療と人間ドックのみ担当。 だからといって批判にはあたらず、むしろ彼女が歩んできた長い足跡を感じます。60代になったからといって人生の終わりということではありません。週に何度もスポーツセンターに通って長距離を泳ぎますし、若い医者が及ばない眼力もまだ備えています。 季節が進めば秋が来るのは当然、そんな語りかけを感じます。これまでの長い年月と今の落ち着き、そしてこれからもまだ人生は続く。 淡々とした短い長篇小説ですが、悠久の時間の流れとその中のひと時という思いを感じさせられて、味わい深い一冊です。 ※同じく地方の総合病院で働く医師という共通点から、ふと夏川草介「神様のカルテ」を思い出しました。医師としての盛りの時期と晩年という差があるため印象は大きく異なりますが、でもあの栗原一止医師が年老いた時どうなるのか、そんな興味を感じてしまいます。 |