【民芸館】全国郷土玩具バーチャルミュージアム


兵庫県篇(1)ー2

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厄よけだるま■(大覚寺:尼崎市)
 5センチくらいの張り子製。面白いことには、「削り昆布の着物」が着せられ、紅白の水引で帯が締められています。厄よけ。商売繁盛。無病息災のお守りとして授与されています。

ポッペン■(長田神社:神戸市長田区)
 ガラス製のポッペンは、管を吹いたり吸ったりすると「ポッペンポッペン」と音がします。博多では、チャンポンとかピンポンと呼ばれていました。
 歌磨の浮世絵の美人画「ビードロを吹く女」(1790)にも描かれていて、江戸時代に中国から渡ってきたという玩具です。正月の長田神社詣りの土産に、昭和30年頃まで、露店で売られていたようですが、その後姿を消しました。
 昭和51年の正月から、長田神社で正月に限り授与されるようになりました。現在は大阪府富田林市の、田中庄硝子工業所で作っています。
(下欄、「姫路のガラス細工」の項も、参照ください)

神鶏■(長田神社)
 雌雄一対で高さ5センチ位の土製の白い鶏です。
社伝によれば、御祭神の事代主(ことしろぬし)神のご神託によりお祀りしたのが始まりとされています。そして、ここでは鶏は神の使いとして大切にされ、戦前は境内にたくさんの鶏が飼われていて、「鶏の社」として親しまれていました。
 長田神社では、そのほかに、節分の鬼面(小型の土製)が授与されています。 ■あかえいの絵馬
 長田神社の境内にはいろいろの末社がありますが、その中の「楠宮稲荷社」には「あかえいの絵馬」があります。稲荷社の奥、楠の巨木の前の絵馬堂にはたくさんのこの絵馬が奉納されています。

青葉の笛■(正覚院:須磨区須磨寺町)
 須磨寺は源平一ノ谷の合戦ゆかりの地で、この戦いに破れた平家の敦盛の悲話はいまも語りつがれています。その時、戦場に携えていった「青葉の笛」もまた有名な話しです。
 この笛にちなんだ「青葉の笛」が 正覚院で授与されています。
 なお、敦盛が愛用した青葉の笛は、須磨寺で寺宝として、宝物館に陳列されています。



布団太鼓の屋台■
  明石市の岩屋神社では、「布団太鼓」と「オシャタカ舟神事の舟」が授与されています。
 戦前には、10月13、14日の秋の大祭に、このような布団太鼓を、「タイコ」と呼んで、 7台も出ていましたが、戦災によりすべて焼失してしまいました。
戦後には、1台だけつくられました。
この玩具化された現在の布団太鼓は、昭和8年刊の「おもちゃ画譜」の資料をもとに復元されて、授与されるようになったものです。
オシャタカ舟神事
 7月の第3日曜日い行われる夏の大祭の行事にちなんだ舟です。
 オシャタカとは、「よくおいで下さいました。」という意味で、明石浦の青年達が岩屋の海に入り、神々を迎えた神舟を、立ち泳ぎで頭上に高く持ち上げ「 オシャタカ」と唱えながら渡御式を行います。

大塩の七夕人形
 姫路の東部から高砂(たかさご)市にかけての海沿いの集落で、あまり知られないままに、古くから続けられていた風習で、作らていたかなり大型(全長38センチ余)の七夕人形です。
昔はこの人形は、各家庭で作られていたものですが、最近は季節がくると、各所で作られ売られるようになりました。
 8月6日の七夕の夜、七夕飾りの長い笹竹を2本立て、そこに別の笹竹を横に掛け渡し、洗濯ものを干すように「きもの」(七夕人形をこう呼びます)を吊り下げます。きものをたくさん飾るほど、衣裳持ちなるといって、横に掛ける竿竹を、2段3段と掛けます。

姫路のガラス細工(廃絶。保存参考品)■
 かっては、このような繊細なガラス細工玩具が作られていました。今では、このような玩具をつくる職人さんはいなくなり、貴重な保存作品といえます。
 明治時代には上記の「ポッペン」は文明開化の波に乗り、全国的に流行したそうです。しかし、壊れやすく危険なこともあり、禁止されるなどで、昭和10年過ぎには、各地とも姿を消していきました。長田神社の「ポッペン」は、「兵庫の郷土玩具(1998.7.1刊)」の著者・井上重義氏が、ガラス職人の佐谷勇次郎さん(明治38年生まれ)に依頼して、制作されたのが、復元の最初の作品でした。
 姫路地方には、正月の松飾りに、金玉(きんたま)と呼ぶ赤や青や金銀のガラス玉を吊す風習があり、この玉や輸出用のビーズ作りなどの、ガラス細工の職人さんが仕事をしています。 ポッペンをはじめこれらのガラス細工は、この職人さんたちが、余技として制作したもので、これのみの本職という人はなかったようです。
 ポッペンの復元は「よみがえった幻のおもちゃ」としてマスコミでも紹介され、姫路市観光協会によって、姫路城の売店でも、1973年2月から売り出されるようになりました。




---兵庫県篇・第1回終り---


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(1998.9.22掲載)