◆ 花とミツバチ
「花」というモノはけっこう、変なものです。葉っぱだけ茂らせていれば いいものを、植物は一体なぜ、こんな異質な(変な匂いや色の)ものを わざわざ作り出すのでしょう?
植物自身にとって、花が鮮やかであることはなんのメリットでもありません。
だって、彼らには眼がないんですから。
花を見つけ、寄ってきて受粉をしてくれる生物(昆虫)がいるからそこに
コミュニケーションがあり、意味があります。
逆にいうと、昆虫がいなければ、花という形態を持つ植物(顕花植物)は
ありませんでした。実際、顕花植物は歴史的に昆虫の出現より後のもので、
それまではシダや裸子植物などの、他の生物の助けを借りずに受粉する、
地味な植物のみでした。
花とミツバチ、結局他人だから、何らかのコミュニケーションをしなくては ならない。より鮮やかで虫に見つけられやすいもの、より強い香りを出すもの、 より花粉を運んでもらいやすい形のもの…。
より多くの虫にアピールし、多くの花粉を広く運んでもらえる
→ より多く受粉できる
→ より多くの種子ができる
→ より多くの子孫を残せる
→ 個体数が増える(繁栄する)
とにかく地味でいたら虫に受粉を手伝ってもらえず、子孫を残すことができない。 つまり、「花がある」ことは、「子供を残すことに有利」であったわけです。
今僕たちが見ているのは残ったものだけです。
だからみんな花は(虫にとって)鮮やかに見えるはずです。人間にとっても
花が鮮やかに見えるのは、虫の視覚と人間の視覚がそれほど違わない
ということなのでしょう。
◆ 果実と鳥
果実と鳥の場合も、花と同様。
植物自身にとって、果実が鮮やかで甘いものであることはなんのメリットでも
ありません。果実を食べて、種を運んでくれるものがいるからそこに
コミュニケーションがあり、意味がある。
鳥にとってより魅力的な果実をつけるものが、より多く種をばらまいて
もらえる。より赤く鮮やかに、より甘く。そんな果実をもつものだけが
選択されて広がっていく。
今僕たちが見ているのは残ったものだけです。
だからみんな果実は(鳥にとって)鮮やかで、おいしい。
人間にとっても果物がおいしいのは、鳥や虫の味覚と人間の味覚がそれほど
違わないということなのでしょう。