ドラマ以前のシャープ

ドラマと原作でもっとも大きな違いはシャープとサー・アーサー・ウェルズリー、ローフォード、そしてヘイクスウィルとの関係(あるいは腐れ縁)が半島戦争に参加する遙か前、インドでのマーラッタ戦役からはじまっていることである。


Sharpe's Tiger

1799年のインドはナポレオン中将率いるフランス軍によるエジプト侵攻のために、不安定な状態にあった。インドの土候、ティプー・スルタンは英国東インド会社に恭順していたものの、フランスからの武器弾薬、軍事顧問などの支援を受けて独立に踏み切った。

サー・アーサー・ウェルズリー中佐率いる歩兵第33連隊はこれに対する討伐部隊の中心となっており、その軽歩兵中隊にリチャード・シャープ兵卒とヘイクスウィル軍曹、そしてローフォード中尉が所属していた。印英混血の美しい未亡人、メアリを巡っていきなり対立するシャープとヘイクスウィル。その折りもおり、情報収集に当たっていたローフォードの叔父がセリンガパタムに捕らえられた。ローフォード中尉はセリンガパタムへの潜入を志願し、同行の部下としてシャープを要求した。

Sharpe's Triumph

1803年、東インド会社の英国人士官がマーラッタ同盟に寝返った。このために英国軍は多大な犠牲を強いられる。この惨劇に直面したリチャード・シャープ軍曹は、この英国人士官の捜索を命じられる。敵地深くに潜入したシャープを待っていたのは想像もつかない誘惑と、ヘイクスウィル軍曹の魔の手であった。

裏切りを端緒として、大勢は寒村アッサエへと流れ込んでゆく。ウェルズリー中佐は圧倒的な劣勢と火力不足の下、決戦に踏み切る。

Sharpe's Fortress


1803年12月、アッサエに勝利を収めたサー・アーサー・ウェルズリーはインドでも有数の天嶮に拠るガウィルグル要塞へと軍を進めていた。

アッサエで歩兵第74連隊(ハイランド連隊)の連隊長の知遇を得たシャープはその連隊の少尉になった。しかし、上流階級出身の下級士官たちはシャープのアラ探しをする。当初は中隊付きの少尉としてお味噌扱いされながらも、なんとかこなしているが、作戦中に立小便をしている現場を押さえられてしまい、結局、補給部隊に飛ばされる。その補給部隊では、ヘイクスウィル軍曹が横流しシステムを構築、これが本格的に稼働しはじめたところであった。

ウィリアム・ドッド大尉を追ってガウィルグル要塞攻略に参加を求めるシャープ、そしてシャープが隠し持つティプー・スルタンの財宝をねらうヘイクスウィル軍曹の戦いが始まる。

Sharpe's Trafalger

1805年、インドでサー・アーサー・ウェルズリーの知遇と少尉の階級、そしてティプー・スルタンの宝石を入手したシャープは、英国に帰国する。往路は兵員輸送船に詰め込まれていたのに対して、復路は下甲板とはいえ東インド会社船での帰国である。一躍有名となったシャープに紳士階級の嫉妬といじめが始まるとともに、例によってやっかいな女性に惹かれるシャープ。そうこうするうちに、その東インド会社船にフランスのフリゲート艦の影が忍び寄り、シャープの旧友も何やら怪しい動きを見せはじめる……。

インドを出航した時点でのシャープは歩兵第33連隊の士官の服を着ており、これに誇りを抱いている。そして、帰国後に着ることになる「ライフル銃隊の濃緑色の短上着」には抵抗を持っている。これをコロリと変える人物がネルソン提督であった。インド出航前の騒ぎでは英国海軍のおバカっぷり(注:誉めてます)が炸裂するなど、海洋冒険小説ファンには堪えられない一冊である。

Sharpe's Prey


1807年、シャープは軍を辞めようと決意する。財産すべてを失ない、相変わらず上流階級出身の士官たちからアラ探しといじめに遭い、初めてライフル銃兵連隊が実戦に参加するコペンハーゲン遠征さえ加わることができなかったからである。

思い詰めたシャープは手始めに孤児院での仇敵から大金と命を巻き上げる。しかし追っ手がかかり、逃げ込んだ先に救いの手と危険な任務が待っていた。




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