2003年11月19日

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サッカー

国際親善試合
KIRIN WORLD CHALLENGE
キリンチャレンジカップ2003 - Go for 2006! -
日本×カメルーン
(大分スポーツ公園総合競技場 ビッグアイ)
天候:晴れ、気温:18.5度
観衆:38,627人、19時20分キックオフ

日本 カメルーン
0 前半 0 前半 0 0
後半 0 後半 0
 
 
 
 

<交代出場>
●日本
 68分:大久保嘉人(柳沢 敦)
 79分:遠藤保仁(藤田俊哉)
●カメルーン
 25分:ファレミ(ヌジャンカ)
  H T :エパレ(モカケ)
 63分:バホケン(チャト)
 67分:ウェボ(ジェンバ)
 79分:ヌゴム(エムボマ)
試合データ
日本   カメルーン
5 シュート 8
3 CK 4
29 FK 19
0 PK 0
 日本代表の2003年最後の親善試合。身体能力に優れ、また、来年1月からのアフリカ選手権を控え練習を十分に積んできたカメルーンの組織力に対し、ジーコ監督になって15戦目、東アジア選手権、来年2月のW杯アジア予選を控えると日本代表がどこまでチームとしての機能を高めて勝負を挑むかが注目された。
 日本は前半12分、中田英寿(パルマ)からパスを受けた柳沢 敦(サンプドリア)がゴール前の高原直泰(ハンブルガーSV)、最後は小野伸二(フェイエノールト)へとつなぐ絶好のチャンスを作ったものの、先制点を奪うことができなかった。
 今年のコンフェデレーションズ杯(フランス)では、大会を通してフランスとの決勝戦で喫した1失点のみという堅守で準優勝を果たしたカメルーンに対し、日本はボール支配で圧倒(53.1%)しながらも、1対1での接触、組織的な守備力に苦戦。FWのシュートは3本、全体でもシュート6本と抑えられた。
 しかし、日本は中盤での守備で2、3人がボールにタイミングよくプレスをかけ、また宮本恒靖(G大阪)、坪井慶介(浦和)が落ち着いた連携を見せてカメルーンを完封。また故障の中村俊輔(レッジーナ)に代わって先発した藤田俊哉(ユトレヒト)が中盤に安定感や展開力を与えるなど、無得点の引き分けに終わったものの、収穫は見出せる内容となった。
 ジーコ監督就任以来、この日は15試合目、通算成績は4勝5敗6分けとなり、12月は海外組の召集は難しい中での東アジア選手権、来年2月からのW杯アジア予選に向かう。

    ◆試合後のコメント

ジーコ監督(抜粋)「コミュニケーションという課題については、一昨日の練習でもしっかりと確認している。声をむやみに出せばいいという話でなく、これには正確なポジショニングがまず必要になる。これがしっかりできれば、叫ばなくても、互いのアイコンタクトによってコミュニケーションは取れるはずだ。試合の中で、彼らが自分たちの組織力をよりよくしようという強い意欲は感じることができた。中盤は藤田が入って、前以上によくなったことが明らかだ。ひとつは意図していることができるようになったこと、また彼の積極性、頭を使ったプレーが、いいものをもたらしている。
 ただし、今日に限ると、リスタートの遅さと、積極性にかけていたことが気になったし、私たちの目指しているものとはちょっと違っていた。ここは修正をしたい。
 カメルーンは2週間、パリで合宿をしている。監督なら誰でもこうした時間を欲しいと願っているものだが、それでも、このチームは1年半前、個人技だけのチームだったと思えば、今の進歩は明らかなものだ。ベストメンバーで戦うのは今年はこれが最後になるが、内容的には非常に満足しているし、今日は守備における進化を十分に確認できたことが収穫だった」

日本サッカー協会/川淵三郎キャプテン「藤田が入ったことによって、非常によくなったと思うし、今日は柳沢はよかった。ただ三都主のところが、ちょっと消極的で臆病なプレーになっていたのが残念だったが、全般的には体を張って、バックもいい守備をしていた。ともかく点が欲しいね。今日のカメルーンは、ボディチェックが素晴らしいし、やはり、一度は取れたと思ったボール、抜けたと思ったスペースに足がふっと出てくるし、巧い。特に、中盤の守備がよかったと思う。1年間、スケジュールの変更を余儀なくされたこともあったが、しかし、そこそこ合宿、試合を組めたし、試合を通じて、ヒデを中心としたいいチームにまとまってきている感じがしている。同じメンバーでやるよりも、(怪我や体調の不良で)メンバーが変わって、藤田のような選手が出てくる楽しみもある。点が入らないから、どこかストレスが溜まるような感じもするんだけど、あれだけ(ハイレベル)のサッカーをするカメルーンを相手に引き分けて、ストレス、という話が出るということ自体が、日本がレベルアップした証拠なのかもしれない」

中田英寿(テレビと一括で)「チャンスを作ってもそれをしっかりと生かすことができなかったのは、いつもながらですが課題だった。これをこれからどうしたらいいのか、みんなで必死で考えないといけない。攻撃ではチャンスを生かすことができなかった反面、守備では相手を0点に抑えたことは、カメルーンの力を思えば自信になった。
(声を出すことについて)だいぶよくなったが、まだまだ疲れてくると黙ってしまう。疲れたときに、どこまで声を出せるのかがとても重要になる。もう少しサイドから早めのクロスを上げ、強引にでもシュートを打っていかないとならない。(東アジア選手権に出場するか、と聞かれて)それは、監督が(チーム編成を)考えることですから」

藤田俊哉「自分としてはチームにフィットしようとやっているつもりで、遠慮はしてないと思う。ただ、アイツ、から回りをしてるんじゃないか、ってあまり思われないようにはしているけれどね。積極的に行こうと思っていたし、もう少し前で仕事をしなくてはいけなかったと思う。個人的にも、全体的にも、もうちょっとミスを恐れずにやってもいいんじゃないか。チュニジア戦は後半から、試合が動き出してしまった後だったが、今日は先発だったので、組織力も確認はできたし、どんどんよくなるチームだと感じた。続けて試合に出るようにならないと。東アジアは、監督、トレーナーとの話しもしていないが、出たい気持ちは強い。もちろん、呼ばれれば、ね」

稲本潤一「取れるところで取っておけば、という、典型的な試合。自分たちのほうが多くのチャンスがあったと思う。4バックの場合、(バックラインに)自分がもう少し、顔を出してあげられればよかったかもしれない。DFでボールをつないでいるときにも慌てて蹴ってしまってミスをするなど、もったいないケースもあったので。グラウンドはかなりコンディションが悪かった。カメルーンの1対1はかなり強かったが、中盤でもサイドに追い込んで、2、3人かけてボールを取ることもできたんじゃないか。来年の予選に向けて、いいコンディションで臨みたい」

小野伸二「(藤田が入ったことで)中盤に大きなスペースが生まれて、ボールを回すことができるようになったし、裏に抜けるような動きが最初は有効だった。後で相手も慣れてきてしまったが、以前と違う選択肢ができた。今日は声もまずまず出ていたと思う。(ゴール前のチャンスの場面は)あそこはダイレクトで打たなくてはならない場面で、余裕がなかったはずなのに、何を思ったかボールを止めてしまった。予選前最後の試合になるが、収穫はあった」

遠藤保仁「僕が入ってボランチ3枚になったのは、相手からのカウンターをしっかり押さえるためだった。自分は後から入って元気だったんで、もっと前に行ければよかったが、(自分にとって3ボランチが)初めてのことなんでとまどう場面があった。向こうのカウンターを止めたことについてはよかったが、チャンスをひとつ決めていればねえ。チームはどんどんよくなっているのを実感できる」

楢崎正剛「集中力が非常に高かった。早い段階で、(ミスから)変な失点をしなければいいと、前もって準備はしていたし、今日は声も出ていたと思う。ただ声を出すというのは自分たちがやりやすいようにする、当たり前のことだから、これでいいというのではなくて、これからもずっと努力をしていくべきだ。DFに関しては、試合全体を通して、完璧にやられた場面はなかった。信じていれば、結果は必ずついてくる。来年の予選、本番は今日(のような親善試合)とは違う。引き締めていきたい」

エムボマ「得点できなくて残念だった。しかし、カメルーンは非常に組織的なサッカーを展開できたと思うし、同じことを日本にも感じた。両方が、やろうと思ったことを正確にやっているから、こうした(引きわけの)試合になる。ファンには得点のない試合はつまらないかもしれないが、内容は非常に濃いゲームだったと思って欲しい。カメルーンは、代表の試合になると雰囲気が非常に素晴らしく、大変よい経験をまた味わえて嬉しい」


「ベスト・ドロー」

 どうにもパッとしない、ドローである。
 10月の欧州遠征(チュニジア、ルーマニア)で2点を奪った柳沢は、相変わらず動きの質の高さは見せながら、高原との2トップでシュート合計3本、ゴール前で絶好のチャンスを2度迎えた小野もまた、ダイレクトで打てたところを丁寧にボールを扱い過ぎて無得点。ボール支配率で完全に上回りながら、シュートは久しぶりの手数の少なさとなる6本、チャンスを生かすことのできないジレンマは、この日の大分の天候、「降らない雨」や「晴れそうで消えない霧」のように、どこかすっきりできないものとなった。
 しかし、この日、ジーコ監督が指揮を執って以来15試合目で6回目の引き分けは、あえて表現するなら「ベスト・ドロー」だったのではないか。
 ひとつは、藤田の加入にある。

 初出場をした10月のチュニジア戦では、後半途中からの交代となったために、おそらく何をすべきなのか、何を必要とされているのか、わからぬまま試合を終えているはずだ。今回、スタメンと明確に指示をされての召集に、本来ならば自分の色を気負っても良いはずだが、サッカーを知るベテランは新しく自分の色を加えるよりも、あえて、ない色を生み出そうとする。だからといって、自分を殺してしまうのではなく、個性と調和の、絶妙のバランスを知っている。
「できることをやって行こうと思っているし、一度に全部とか、そういう欲は持たないようにしている。例えば、あえて自分が出ないほうがいいリズムでフィニッシュすることもあるかもしれないから。反対に積極的にプレーをして前で仕事をするべきところは前に出て、とかね。前回よりはよくわかった面もあるし、今日のカメルーンのように、体は強いし運動能力は違うし、ましてサッカーというもののつぼをあれだけ心得ているチームとこういう試合ができたことは、今後の進歩につながると思う」
 藤田は試合後そう話した。

「黄金の中盤」と言われる日本代表の中盤4人だが、故障やクラブの事情によって常に揃って予選を戦うことはできないだろうし、ここにきてジーコ監督が理解しなくてはならなくなったのは、藤田や遠藤といった「いぶし銀」ともいえる選手の渋い輝きが黄金にもたらす影響の大きさだろう。
 2つめは、遠藤が投入されてから敷いた3ボランチのシステムと、中盤の守備の統制である。これまでのどの試合よりも、中盤の守備は統率され、徹底され力強かった。ラスト15分、引き分けでよしとしていたカメルーンが、最後の猛攻をかけてカウンターを盛んに仕掛けてきた。ここで遠藤は「カウンターを中盤でしっかり封じ、ボールを奪うように」と指示を受けて入っている。
 2、3人でサイドに追い込みボールを奪う、また、ボールを奪われた後の守備への転換も、極めて速く対応をした結果、この試合で唯一、カメルーンが本気で得点を奪いに来た15分を耐え抜くことになった。」

 中田はこの無失点を「自信になるだろう」と収穫とした。一見これといった盛り上がりも「華」もないドロー試合ではあるが、「根」はそれなりに太く育ってきている。
 代表はこの後、12月の東アジア選手権を戦う。また、12月5日にはフランクフルトでW杯予選の組み合わせが決定する。



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