2001年3月 
 
 
 
 
ご 挨 拶

 
 
 私こと、このたび二〇年間勤務してきた駒澤大学経済学部を退職し、横浜国立大学大学院環境情報研究院・学府(環境マネジメント専攻・技術マネジメントコース)教授として赴任することとなりました。この大学院は、同大学教育人間科学部、工学部、環境科学研究センター、経営学部、経済学部にまたがって、本年新たに開設される、学際的な独立大学院であり、博士前期・後期課程4専攻8コースをもち、専門職業人育成を含め、きわめてユニークな教育と研究をめざすものです(研究院は研究組織、学府は教育組織)。私自身の担当分野としては、新技術や環境技術の成果の事業化、これを支える地域のネットワークづくり、企業システムの開発、そしてこれらにかかわる公共政策や地域政策の可能性などを課題とし、国内外の多くの経験に学びながら、新たな研究成果を生み出しつつ、こうした分野に将来従事しようとする実務家・専門家・調査スタッフ・研究者などの育成をすすめていくものと理解しております。
 
 
 私は、「中小企業論」の学部講義を二〇年間にわたり担当し、中小企業経営や中小企業政策をめぐって、国内はもとより、欧州などの実態把握や議論に微力ながらかかわり、研究の発展に貢献をしてこようと努めて参りました。また、大学院・学部ゼミナールの学生諸君らとともに、日本の産業と企業の動向についてさまざま考えて参りました。そうした試みと研究のうちでは、私自身にとっては、人間の生きること、働くこと、学ぶことのかかわりよう、そしてそのあり方をつねに問うものがあり、いわゆる「日本的経営」や「日本的生産システム」を含め、現実のしくみのはらむ諸々の問題と、人間のちからのなしうる限りない可能性との間の大きな矛盾への、やみがたい問題意識があったと痛感いたします。こうした数々の経験と自らに課して来た問いをふまえながら、とりわけ近年の創業支援・新事業育成や企業家研究とのかかわりを実践的にも生かし、新しい社会経済システムと経済活動の営為のあり方を求め、今後の私自身のなせる社会的貢献と教育努力というものに結びつけていけるものでありますなら、一学究として歩んできた私としての、これからの生きがいともなろうかと考えております。
 
 
 この間多々お世話になって参りました皆様方、先輩諸氏、とりわけ勤務先駒澤大学の同僚諸先生、職員諸氏、また学生諸君らから頂いてきた数々のものを思いますと、言うに尽くせぬ感慨があり、いま私がこの場を離れるについては、誠に心苦しいものがあると申さねばなりません。もちろん、私が駒澤大学においてやり残しております教育責任は最後まで担っていくつもりでありますが、さまざまな課題を抱え、改革の途上にある大学を去るということには、忸怩たる思いがあります。ただ、これにこたえて私の果たすべき責務は、新たなフロンティアでの、今後の私自身の教育と研究の実践成果、社会的な貢献の積み重ねにおいて示されるべきものであると、いま信じております。また幸いにして、駒澤大学では「客員教授」の処遇を頂き、当面、大学院生、学部ゼミ生の指導を続けることができるようになりました。
 
 
 今後とも皆様方より、変わらぬ御交情とご指導ご鞭撻の賜れますこと、切に願いますとともに、ここに転任のご挨拶を申し上げます次第です。
 
 
 
三井逸友   



横浜国立大学大学院環境情報学府について、詳しくは、こちらのページ


横浜国立大学の、公式WEBページ