デーヴァダッタ08

2023年8月

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08/01/火
この『デーヴァダッタ』の創作ノートも8ページ目になった。もう半年以上経ったわけだ。その間、『光と陰の紫式部』の校正と、『善鸞』の仕上げ、校正の作業が入って時間をとられたが、それでもコツコツト作業を進めてきた。いま4章の終わりで60ページ、原稿用紙にして180枚というところだ。『僕って何』が240枚、『いちご同盟』が300枚くらいだから、もうかなりの枚数を書いたことになる。ただまだ序盤の、伏線を張りめぐらせている段階だ。主人公のデーヴァダッタを知らない人でも、シッダルタ(釈迦)が仏教を起こした人だということは知っている。まだカピラヴァストゥの皇太子なのだが、やがてこの人物が修行の旅に出て、悟りを開いて仏陀となり、仏教教団を創る、という大筋の展開は知っているはずで、物語の先が読めてしまう設定だ。だが主人公がデーヴァダッタなので、釈迦は対立する人物つまり主人公に対立する人物として描かれている。『銀の匙』の中勘助の書いた『提婆達多』を知っている人は少ないだろうが、文学愛好家なら、この人物がダーティーヒーローだということを知っている。仏教に詳しい人なら、提婆達多が仏教教団の乗っ取りを企てた人物だということを承知しているし、『法華経』の「提婆達多品」では、法華経の功徳によってデーヴァダッタのような悪辣非道な人物でも救済されると書かれている。キリスト教におけるユダのような人物だ。まだ序盤だし、主人公の少年から若者へと成長を遂げている段階で、ピュアで繊細な人物として描かれている。5章からは第二部になり、カピラヴァストゥから話が逸れていくのだが、とりあえず隣国コーサラに舞台が移る。しばらくはシッダルタが出てこない。これで話をもたせることができるかどうかがこれからの課題だ。ここまで書いてきた感触を一言でいえば、「これは名作だ」ということだ。結果的に釈迦の生涯を描き、『観無量寿経』の阿闍世王の話になっていくので、スケールの大きな歴史絵巻になっていく。第一部で60ページということは、第四部まで書くと240ページ、原稿用紙で720枚ということになる。少し長いかなとは思うが、ドストエフスキー4部作に比べればコンパクトな作品だ。終章をつけて800枚に収まればと思っている。これはライフワークだし、これで絶筆ということになるのかもしれない。まあ、先のことは考えずに、この作品の完成のことだけを考えていたい。さて、今週は土曜日に歴史時代作家協会賞の選考があるが、本日から金曜まではまったくのオフになる。『デーヴァダッタ』に集中したい。4章が終わった。5章からは第二部ということにしたが、一部、二部の長さが均一に揃わない場合は章立てのみで進めてもいい。ここから第二部というのは、書いているぼくの気分の問題だ。ここまでは釈迦の故郷のカピラヴァストゥが舞台だった。いずれ釈迦は遍歴の旅に出るのだが、その前の主人公のデーヴァが隣国のコーサラを訪れることになる。『観阿弥陀経』のヒロインともいえる韋提希夫人と『勝鬘経』の勝鬘マン夫人は、コーサラ国の王女だ。祇園精舎を開く祇陀太子はすでに登場している。コーサラ国はやがてカピラヴァストゥを滅ぼすことになるので、その伏線も入れておかなければならないが、まずは全体の地理的な配置を、読者に示しておく。恒河ガンジスは西から東に向かったインド半島の根元を横断している。その豊かな流域を支配しているのが、西のコーサラ、東のマガダだ。カピラヴァストゥはコーサラ国に隣接している。釈迦はガンジス河に沿って東進し、マガダ国の国王ビンビサーラの支援を受け、竹林精舎を開く。その近くの霊鷲山は法華経や観阿弥陀経が説かれた場所だ。地図を載せれば簡単だが、小説としては読み進むにつれて地理が頭の中に入るような展開にしておきたい。ということで、コーサラ国に行くのは主人公のデーヴァと、釈迦の弟のスンダラナンダだけなので、シッダルタはしばらくは登場しない。ここでデーヴァが主人公としてのキャラクターを鮮明に打ち出すことになる。今日は雷が鳴り雨が降った。猛暑も一段落と思って散歩に出たが湿気が多くやっぱり暑い。後期高齢者は閉じこもっていた方がいいのかもしれない。

08/02/水
外出した妻から隣のビルの地下広場で売っているブドウを買うようにという指令が来たので買いにいく。外出はそれだけだが猛暑の外気に触れて疲れた。『デーヴァダッタ』は5章に入った。スンダラナンダ王子とデーヴァダッタが、隣国の大国コーサラに出向く。ここには韋提希夫人と、勝鬘夫人がいる。後に重要人物として登場するのだが、今回は伏線を張るだけなので簡潔に書くが、強い印象を残しておく必要がある。マハーコーサラ大王は高齢のはずだが、一度くらいは登場させてもいい。まさに大王(マハーラジャー)と称するにふさわしい人物だ。皇太子のプラセーナジッドは戦さ好きの人物で信用できない感じを発散させておきたい。まだ物語はいささかも動いていない。予言と伏線だけでここまで来た。全体の4分の1くらいのところに来ていると思う。これからの手順としては、手塚治虫の『ブッダ』でも語られているように、プラセーナジッドはカピラヴァストゥとの友好関係を結ぶだめに王族の女子を側室に求める。しかしシャーキャー族には適当な王女がいないため、大臣の娘を嫁に出すのだが、これは妾腹の娘でしかも奴隷の娘だ。のちにそのことが明らかとなって、その娘が産んだルリ王子がカピラヴァストゥを滅ぼすことになる。このあたりも伏線を張るだけだ。それからカピラヴァストゥに戻って、皇太子妃ヤショーダラとデーヴァダッタの関係が深まっていく。二人は異母の姉と弟だが神話の時代にはそういう男女関係揉めずらしくはない。しかしもちろん不倫である。そしてのちに釈迦の十大弟子の一人となるラゴラが生まれる。とにかくすべては伏線で、のちの物語によってそうした伏線を回収していくことになる。大変な作業が待っている。後期高齢者となった頭脳のキャパシティーを超えるかもしれない。ところでニュースで佐藤ガ次郎さんを偲ぶ会のようすが報道された。『男はつらいよ』で寅さんの弟子としてどの作品にも出てくるユニークなキャラクターだ。ぼくより3つくらい年上。芥川賞をもらってプロの作家として売れていたころに、座談会で会ったことがあるが、その時が初対面ではない。実はぼくは小学生の2年生の時から、大阪の朝日放送の児童劇団に所属していて、先輩に佐藤さんと、亡くなった女優の中島葵さんがいた。児童劇団には二十人以上の劇団員がいたのだが、俳優になったのその2人くらいだろう。ということで、まったく知らない間柄でもないのだが、大人になって会ったのはその座談会の一度きりだ。

08/03/木
妻が早朝に名古屋に向けて出発した。しばらく独身生活になる。『デーヴァダッタ』は5章に入った。4章の終わりにアシタ仙人の魅力的な予言が出てきたので、しばらくはリアリズムで話を進めたい。

08/04/金
当時のコーサラ国にはマハーコーサラ大王、皇太子、祇陀太子と、直系の王族が3人いる。祇陀太子はすでに登場した。順番からいくと次が皇太子、最後に大王ということになるだろう。皇太子は要注意人物なのでしっかり書きたい。今日は藤井くんの将棋をずっと見ていた。一時は豊島さんが95%になったが、双方とも1分将棋なのでコンピュータの数字はあてにならない。何が何だかわからないうちに藤井くん勝っていた。夜遅くに妻が帰ってきた。滞在が長びくかと思っていたが、これで日常が戻ってくる。

08/05/土
日本歴史時代作家協会賞の選考会。大衆小説を読み込んでいる委員の中に、三田が委員長として割り込んでいる。秋山駿さんがお亡くなりになったあとを引き継いだのだが、こちらは業界の事情には疎いので、候補となった作品をひたすら読み込んで判断する。ただおもしろいだけではなく、深さをもった作品、あるいはイメージ豊かな作品、あるいは新しい視点をもった作品など、業界に新風を吹き込む作品を求めて選考に加わっている。新人賞はまさに新人にふさわしい新たな視点をもった作品と、堂々とした大家のような作品が覇を競うことになった。この大家のような作風の書き手はベテランの編集者のようで、業界でのキャリアは長い。それでも新人であることは確かなので評価しないわけにはいかない。ということで二作同時受賞になった。ぼくが委員長になってから新たに創設した文庫書き下ろし新人賞。昨今の出版事情から新人が単行本を出すことが難しくなっている現状と、読み捨てにされるシリーズものの文庫本の領域で新人としてデビューした書き手を励ますためにこの部門が新設された。ここも二作同時受賞となった。リアリズムだが奇想天外な着想の作品と、あざといまでの新奇なイメージを盛り込んだ幻想的な作品が並立した。ベテラン作家が対象の作品賞も、二作同時受賞の流れが続いた。こちらは江戸時代中期の将軍の後継者をめぐる独創的な切り口の作品と、第二次世界大戦直前の上海の中国マフィアの抗争に巻き込まれた日本人たちをめぐる物語。江戸時代を舞台とした作品には安定感がある。戦前の世界を時代小説と見ることは自然の勢いだろう。新しい高校の教科書でも明治の作品は「古典」の領域に組み込まれている。もしかしたらぼくが生きて昭和の後期、あるいは20世紀末くらいまでが、もはや時代小説の領域になるのかもしれない。選考会のあとの飲み会が楽しかった。例年この時期には、日大の在校生と卒業生を対象とした「日大文芸賞」、同人誌掲載作を対象とした「まほろば賞」、単行本を対象とした「歴時作家協会賞 」の選考が続くことになり、候補作を読むために時間をとられるのだが、選考会のあとには必ず飲み会があるのでこれを楽しみにしている。選考が終わったあと、他の委員たちは候補者の当落を担当編集者に電話で連絡するのだが、委員長のぼくはその間はひまなので、ノートにメモをとった。こういう時にけっこう仕事がはかどるものだ。カピラヴァストゥの滅亡につながる重要な伏線の部分が書けた。

08/06/日
歴時作家協会賞の選評を書く。候補作が3部門で15作もある。そのすべてに言及しなければならず、一日仕事になった。はあ、疲れた。

08/07/月
近所の医者に行って薬を貰う。今月からまた新しい保険証になった。6月は1割負担で7月は2割だったが、今月からは3割負担だ。毎月新しい保険証になるというのも奇妙だが、マイナカードにはこういう情報が反映されるのか。そもそも何で3割負担になるかがわからない。大学の教員をしていたころのように定収があるわけでなく、連載の仕事をもっているわけでもなく、年に2冊本を出すだけの低所得者だ。しかも今月から高額医療の限度額を示すカードを提示しないといけないのだが、このカードが大きくて財布に入らない。これをつねに出さないといけないのか。明日からは仕事場に移動するので、とりあえずこの大きなカードは資料などを入れる大きなバッグに入れた。常備薬などもここに入っている。木曜の共通目的委員会の議長を頼まれていて、事務所に行くことになっていたのだが、本来の議長の委員長が仕事の都合がついたというので、こちらはリモートでよくなった。予定では自宅に帰ってから車で出発して御殿場に一泊することにしていたが、出発を2日早めて明日のホテルを予約した。木曜日は休日の前日で高額料金だったが、2日早めると安くなった。ということで、明日の準備を始めた。たまっているメモをパソコンに入力。そこまでの70ページ(210枚)をプリント。これを仕事場で読み返す。と思っていたら、担当編集者から『善鸞』再校の白ゲラが出たとのことで、これも仕事場にもっていく。読むものが増えたが、眺めのよい仕事場でのんびり過ごしたい。

08/08/火
本日は御殿場まで行けばいいので2時ごろに出発したのだが、事故渋滞が各所にあって、予約したホテルに着いたのは6時すぎだった。このホテルは客室の風呂が広くて気持がいい。無料のビールがあり、持参したウィスキーを飲んで早めに寝た。

08/09/水
朝から豪雨。台風が九州に接近しているのだが、東海地方まで豪雨になっている。瞬間的に雨が止んだので荷物を積み込んで出発。2時間ほどで浜松に着く。浜松も豪雨。途中で買った食べ物はパソコンだけを持って部屋に入る。パソコンの設定をしてネットにつながることを確認。昼食のあと瞬間的に雨が止んだので残りの荷物を運ぶ。その直後にまだ豪雨になった。どういうわけか甲子園は晴天だ。

08/10/木
朝10時からSARTRASの共通目的委員会。委員長が所要で副委員長のぼくが議長を務めるはずで、SARTRASの事務所に行く予定をしていたが、委員長が所要をキャンセルして議長を務めることになったので、こちらはリモートでよくなった。ということで予定を2日早めて仕事場に入っているので、iPadで会議に参加。当初の予定では東名高速の車中で参加する予定だった午後の分配委員会も仕事場で参加できたいのでよかった。とはいえ1日に2回も会議があると、それだけで1日がつぶれてしまう。

08/11/金
本日は休日。妻が小包を送るというので鷲津の郵便局へ。ついでにイオン系のモールの百円ショップとホームセンターで買い物。食事をして帰って女子サッカーを見る。アメリカに勝ったスウェーデンはさすがに強くて1点差負け。よくがんばった。予選リーグで日本に大敗したスペインはオランダに勝ってベスト4に進んだ。これからはスペインを応援したい。

08/12/土
水曜日に浜松に着いた当日は豪雨だった。翌日からは晴天の猛暑。昨日は買い物に出かけたが、本日はどこにも出ず。仕事場にこもりきりになっている。『デーヴァダッタ』は5章が終わり、6章に入った。75ページ、225枚。これだけで本1冊になる。全体を16章と考えているのでまだ3分の1にも達していない。白ゲラは1章が終わった。『善鸞』は6章プラス短い終章なので、1日1章ペースで読んでいきたい。

08/13/日
三ヶ日の農協(昔は農協直営のスーパーだったのだがいまはバローという業者が入っている)に買い出しにいく。明後日くらいに台風が来るらしい。当初は静岡県直撃の予報だったのだが、しだいに予報が西にずれて、いまは大阪から神戸あたりに行く予報になっているのだが、台風の進路の東側は湿った海風が強く吹くので大雨が予想される。あとは仕事場にこもってひたすら仕事。白ゲラは進まず。『デーヴァダッタ』は主人公とシッダルタの会話がほぼ終わった。まだメモを書いただけだが、ここで最初の哲学的議論が始まる。それから妻のヤショーダラの話になる。ストーリーの展開ではヤショーダラの話をするだけでいいのだが、それでは話が痩せてしまう。こういうところで哲学を盛り込まないと深い作品にならない。主人公がヤショーダラに近づいていく。ここに到ってようやく中勘助の作品に近くなっていく。中勘助が描いていない膨大な領域をここまで200枚くらいを費やして書いてきた。スケールの大きな作品になっていることは間違いない。

08/14/月
台風が近づいていく。時々激しい雨が降るが、陽が差すこともある。浜名湖を見ているとウィンドサーフィンがすごいスピードで走っている。あれはヨットと同じで風上方向にも進むことができるはずだが、それを実現するためにはかなりの技術が必要だろう。見事なものだと思う一方、台風が近づいているこの次期に遊んでいるやつは相当のアホだと思う。白ゲラ、2章が終わった。ここまでは『親鸞』のダイジェスト版のようなところがあって、自分としては気持が乗らないところだが、3章から先は新鮮な気分で読み進むことができる。よくこんなものを書いたなと思うほどにうまくできていて、まるで史実を参考にして書いているみたいだ。もちろん史実などはないのですべがフィクションだが、妙にリアリティーがある。風景描写などをしっかりしているせいだろう。

08/15/火
終戦記念日だが台風が近畿地方を直撃していて、新幹線も動かず、世の中の動きが止まっている。大きな台風で昨夜は浜松にあるこの仕事場も激しい風雨にさらされた。屋根に当たる雨音がすざまじく、強風で木造の建物がふわってうかびあがるような感じがした。今朝起きても、依然として風雨が強く、仕事場に閉じこもっているしかない。白ゲラは3章が終わった。主人公が東国に下向して、日蓮の弟子と問答をして、さらに三村山の忍性を訪ねる。日蓮の日蓮宗、忍性は真言律宗、それに人物としては登場しないが、法然の孫弟子が弘めた浄土宗と、三つ巴の抗争がある中を、浄土真宗の後継者を目指す主人公が歩き回っている。この作品は、さまざまな思想が対決する思想ドラマになっている。いま書いている『デーヴァダッタ』も、バラモン教の神官たちのウパニシャド哲学、六師外道と呼ばれた新興の思想家の存在論の中を、釈迦が歩いていき、そのあとを主人公が追いかけるという展開になっている。ただ善鸞は東国を歩き回るだけなのに対し、ガンジス河の流域は広大だ。善鸞は筑波山の周囲をうろつくだけだが、デーヴァダッタの眼差しの先にはヒマラヤの霊峰がある。どうしてもいま書いている作品の方に気持が傾いてしまう。白ゲラを読み返して、この作品もなかなかのものだと感じているので、しっかりと校正をしたい。ここまでで3箇所赤字を入れた。初校でパーフェクトの校正をしたつもりだったが、まだ直すべきところが見つかる。とにかく全力を尽くしたい。

08/16/水
台風一過。浜松は曇りだが雨は降っていない。ところが静岡、富士、三島のあたりでは新幹線が止まるほどの豪雨。旅行客が混乱するさまをテレビで見るだけ。お盆休みが終わってSARTRASが動きだした。本日は明日の理事会に備えた理事長と副理事長の打ち合わせ。何事もなし。簡単に終わる。白ゲラは4章の後半に入った。もうすぐ義絶事件が起こるが、義絶に到るプロセスが効果的に語られている。ここに到るまではかなり微調整した。完成したプリントに手を加えてかなりの部分を書き足したのだが、どこを修正したのかはもうわからなくなっている。『デーヴァダッタ』は主人公がヤショーダラの部屋に入った。姉と弟だが、母が違う。古代日本では結婚も可能だ。古代インドではどうだったかは知らないが、この二人はヤショーダラの母のもとで育てられたので同母の姉と弟に等しい。だから近親相姦のスリルがある。ただ宗教小説なのでそのあたりはさらっと書きたい。将棋の藤井くんは負けたが、7番勝負が3勝1敗になっただけだ。藤井くんが負けたのを見るのは久し振りだが、後手番だからそれもありだ。先手番で負けるところはもう長らく見ていない。藤井くんといえば、小学生の時に負けて号泣した相手の匠くんが竜王戦の挑戦者に決まった。トラウマがあるのではないか。

08/17/木
お盆休みが終わって世の中は動き出している。昨日は理事長との打ち合わせだったが、本日はSARTRASの理事会。さまざまなジャンルの代表者が集まっているので、利害が錯綜して、多彩な意見が出てくるところがおもしろいといえばおもしろい。議長を務める理事長はたいへんだと思う。こちらははたから見ているだけ。こちらの本業は小説家だから、まずは白ゲラ。初校で数行、挿入したのだが、その挿入の位置が違っていた。位置が違っているだけなので簡単な指示で修正できるだろう。

08/18/金
今日は公用がないので、浜松市内(仕事場も市内だがこれは数年前に浜松市が拡大したからで、ここでいう市内は旧市街ということ)の市野のイオンモールにいく。いつも行く志都呂のモールより小規模なのだが、たまには違うところへ行きたいというのと、高速で行けば時間短縮できることに気づいたから。最近はパーキングエリアからも外に出られるので、三方ヶ原PAからだと近いことがわかった。実際にわずかな時間で到達できた。10年以上も乗っている車なのでカーナビは使えない。ぼくがスマホを見ながらカーナビのかわりをする。実に正確に目的地にたどりつける。妻が買い物をしている間も、モール内を歩き回っていたので8000歩。このところの猛暑で散歩にも行っていなかった。いい運動になった。モールには大きな本屋があるので、自分の本があるかいつも確認する。残念ながら単行本はない。あったのは『星の王子さま』の青い鳥文庫と、集英社文庫の『いちご同盟』と『春のソナタ』。まあ3冊あれば上出来。白ゲラは5章が終わった。あとは6章と短い終章だけ。月曜には東京に戻る。すぐに本ゲラが届くはずだが、それまでに白ゲラが完了するか。急ぐ必要はない。

08/19/土
天竜浜名湖線(昔の二俣線)の西気賀駅にあるレストランに行く。40年前に仕事場を建てた時に、住宅地を開発したディベロッパーが事務所に隣接した場所にレストランを開設した。そこを任されていた夫婦が独立して西気賀の駅舎に開いた店だ。ぼくもそのレストランを利用していたのだが、義父が料理人と親しくなっていっしょに釣りに出かけたりしていた。そういうことがあったので、仕事場に移動する度に一度はその店を訪ねる。ここの名物はビーフシチューで、それしかないといってもいい。昼食にはいささか重いのだが、昼間しかやっていない店だか、ビーフシチューをオーダーする。昔ながらの懐かしい感じのする料理だ。仕事場に戻ってひたすら白ゲラを読む。完了。『善鸞』。よく出来た作品だ。書く前はこんなものが出来るとは思わなかった。すべての作品がそうで、書く前は、とても書けそうにないと感じるのだが、書き始めるといつの間にか書き上がって、すごいものになっている。いま書いている『デーヴァダッタ』もそうなってほしいと思っている。

08/20/日
昨日、白ゲラを読み終えたので、本日はなさねばならぬ作業はない。『デーヴァダッタ』はまだまだ先が長いので東京に戻ってじっくり考える。明日は東京に戻るので移動中の事故に備えてデータをメモリーにコピーしておく。忘れ物のないように鞄から出した日記帳や予定表などを鞄に入れる。パソコンは明日の朝、出発の直前に鞄に入れる。今回は2週間の滞在だが、お盆の混雑、台風、猛暑、それにネット会議が4件あったので、ほとんど外出しなかった。まあ、仕事はできたのでよしとする。

08/21/月
午後4時から文藝家協会主催のシンポジウムがあるので、いつもより1時間ほど早く起床。9時半には出発。道路はすいていて無事に1時半に自宅の集合住宅に到着。荷物を降ろしたあと、コンシェルジュのいる20階のロビーまで上がって、台車と荷物エレベータのカードを借りて、地下2階のガレージに戻り、われわれの住居に荷物を運び込んで、台車をコンシェルジュに変換。パソコンを設定し、郵便物の整理、以上の作業を終えるとちょうど4時前になっていたので会場へ。われわれの集合住宅の隣が会場なので5分で到着。シンポジウムはただ聞いているだけ。あとの懇親会には教材出版社の方々が参加しているので、挨拶をして回る。シンポのパネリストの方々も残ってくださったのでありがたかった。3人のパネリストは、明大教授の伊藤氏貴さんはわが教え子、日大教授を退職された紅野謙介さんは日大文芸賞の選考委員で何年ものつきあい、東大教授の阿部公彦さんは早稲田文学新人賞の受賞者ということで、どこかでつながりのある人々だったので、懇親会のあとの職員の打ち上げまでつきあっていただいた。終わって一人で自宅に戻る。懇親会の会場も隣のビルの地下で、ふだん利用している店で、まるでわが庭で宴会をやっているようなものだった。文藝家協会にとっては重要なイベントなので、無事に終わってほっとしている。

08/22/火
東京での日常が戻ってきた。昨日は浜松から車で帰ってそのまま隣のビルのシンポジウム会場に出向いたので、気持がふわふわしたままだった。自宅のベッドで朝目覚めると、ああ東京にいるのだと感じられた。本日は曇り空で猛暑日ではないようなので、散歩に出る。といっても往路は文京区の100円の巡回バスにのって上野マツサカヤまで行き、豪華弁当を買って歩いて帰った。湿度が高くやや疲れた。白ゲラと本ゲラのつきあわせ。校正者のチェックはごくわずか。これで完了。10月末に出版される。去年のうちに草稿はほぼ出来上がっていたので、いまは作品を客観的に見ることができる。思想ドラマとしてよくできていると思う。エンディングもいい感じになっているし、オープニングもなかなかいい。ただ読者は限られるだろう。とはいえ読みやすい文章で書いてあるので、多くの読者に読んでいただきたい。親鸞の嫡男の善鸞の話ではあるのだが、親鸞そのものが影の主人公として輝きを放っている。そうしう意味ではこれは宗教書としてもなかなかのものではないかと思う。

08/23/水
『善鸞』の本ゲラを出版社に送付。これですべての作業が完了した。『デーヴァダッタ』を最初から読み返す。仕事場に行く前にそこまでの草稿をプリントしたのだが、その先の作業中にそれまでのところを修正したために、プリントした意味がなくなった。白ゲラを読む作業をしていたのでプリントを読む時間がとれなかった。ということで、パソコンの画面上で読み返している。この方がその場でどんどん修正できるのでいいという観じもするが、プリントもおりにふれて読み返して、縦書きで印刷した場合やルビの漢字を確認したい。高校野球の慶応の優勝。107年ぶりとのこと。すごいことだ。ぼくは早稲田だけれども、慶応でも1年間、文学の話をしたことがあるし、『三田文学』に原稿を書いたこともある。将棋は藤井くんが勝って王位を守った。2日目の夕方までは甲乙つけがたい熱戦だった。結局、佐々木さん攻めに出て攻めきれなくなったのだが、藤井くんは本日も、コンピュータが示していない手を指して結果的にこれが勝負の決め手になった。

08/24/木
いつもより2時間早く起きて永田町のSARTRASへ。共通目的委員会の事前審査。今後のことなども事務局と話し合う。いったん帰宅して夕方、紀尾井町の文藝家協会。新しい文化庁の著作権課長との懇談。必要な話はできた。1日2度のリアルな会議はけっこう疲れる。猛暑のせいだ。8月もあと1週間。9月になればいよいよFootballが始まる。優勝予想などもしてみたいが、まだ気持の方がFootballに向いていない。月末が近づいたらじっくり考えてみたい。

08/25/金
本日はSARTRASの役員会。理事長と副理事長2名だけの会議だが、けっこう議論が錯綜した。これはよいことだ。結局のところ組織というものは理事長と事務局が動かしているのだが、理事長はオールマイティーではないので、助言が必要な時に副理事長が必要なことを述べる。もう一人の副理事長が主に著作者への分配を担当し、ぼくが共通目的委員会の補助金の審査を担当している。最終的には理事長が責任を負うので、こちらは言いたいことを言うだけだ。居住している集合住宅の地下にあるスーパーマーケットに出向いて酒と牛乳を買う。それだけの一日。

08/26/土
週末はのんびりすごしたい。Footballの開幕が近づいてきた。2月のスーパーボウルの興奮がいまも続いていて、時々ビデオで確認している。4月末にドラフトがあったが、チャンピオンのチーフスは最後の選択なのでめぼしい新人はゲットできない。今年はQBの豊作の年といわれて、それぞれ弱いチームに配属されて、チーム間の実力差が縮まった。Footballは選手のギャラの総額を制限するサラリーキャップという制度があるので、チーフスはQBマホームズ、タイトエンドのケルシーを確保するのがせいいっぱいで、もともと弱かったワイドレシーバー陣から2人が離脱した。幸いディフェンスは若い選手ばかりで、ギャラの増額も限られているので戦力はそのまま残っている。ランニングバックもそのままだ。要するに、パスをキャッチするレシーバーがいない状態でシーズンを迎える。どういうことになるのか心配だ。スーパーボウルではマホームズは足を傷めていたのでロングパスが投げられなかった。その足が回復しても、レシーバーがいないのでやはりロングパスは投げられない。それでもスーパーボウルに勝てたので、今年も何とか、スーパーボウル2連覇を目指すことになる。ライバルはジェッツだ。昨シーズンはプレーオフにも出られなかったチームだが、攻撃と守備の双方で新人王選手が出現した。このチームは期待した若手QBのザック・ウィルソンが伸び悩んで、エースQB不在で7勝10敗だった。しかしここで、ブレイディー引退後は最年長にして伝説のQBといえるパッカーズのロジャースがまさかの移籍。しかもギャラを下げてジェッツに入った。自分のギャラを大幅に減らすというのは、そのぶんで他の選手を採ってくれということで、引退前にもう一花咲かせたいという強いモチベーションが感じられる。チームもその意欲に応じて、ロジャースの受け手として活躍したレシーバーを3人ほど入れ、オフェンスラインを強化した。結果としてすごい陣容のチームとなった。チームプレーが練れてくるまでに少し時間がかかるだろうが、終盤にはチーム力が最高に盛り上がっていることだろう。ジェッツのいるAカンファ東地区は、チーフスのライバルのビルズ、マホームズのロングパスを受けたタイリーク・ヒルのいるドルフィンズ、それに伝統のペイトリオッツと強豪がひしめいている。まずここで勝てるかというところが注目点だが、プレーオフに進出できれば、ロジャースの調子が上がっていって、マホームズの最大の難敵になるだろう。Nカンファはやや戦力が衰えたとはいえモバイルQBとして開花したハーツが健在ならイーグルスが出てくるだろう。ドラフト1位のQBヤングが入ったパンサーズはまだチーム力が整っていなが、プレーオフに進出できるかは注目される。イーグルスのライバルは、昨年は負傷してしまったパーディーを擁する49ナーズだろう。それと昨年の後半に調子を上げてきたQBゴフのライオンズがどこまでやれるか。ブレイディー引退でメイフィールドを獲得したバッカニアーズ、実力のあるカウボーイズ、ベテランQBのカーを入れたセインツなどがいるけれども、イーグルスと49ナーズのどちらかだと思われる。カンファの決勝はジェッツ対チーフス、イーグルス対49ナーズではないだろうか。

08/27/日
『デーヴァダッタ』の見直し、第二章が終わった。ここまではパーフェクトだ。次々と登場人物が現れ、個性的な会話が交わされる。シッダルタが魅力的だ。いつも冷笑をうかべているニヒリストだ。主人公のデーヴァはまだ少年で、ひたすらピュアだ。読者の共感は主人公に傾いていくだろう。それが狙いだ。自分の仕事に集中していると、世の中のことはどうでもいいという気がしてくる。やり投げの女子が金メダルをとったのはすごいことだと思うが、ロシアとウクライナの戦争は、ただぼんやりと眺めるばかりだ。ただ福島の壊れた原発からトリチウムの入った冷却水を廃棄するというニュースには、興味をもっている。トリチウムそのものは無害だ。放射性のある水素が、ベータ線を放出してヘリウムに変わる。ベータ線はただの電子だから、放出されてしまえばまったく無害だが、量が多ければレントゲンと同じことで、遺伝子が破壊されることもある。しかしその種の放射線は、宇宙からつねに飛来しているので、ほぼ無害だと考えていい。トリチウムというのは要するにただの水だ。これを「汚染水」などと呼ぶから話がややこしくなる。壊れた原子炉を冷やすために使ったただの水を海に流すというだけのことだ。だがここにはマスコミがまったく触れない問題がある。壊れた原発からはトリチウムが出るだけではない。ストロンチウム、セシウム、バリウムなどの放射性金属が放出され、冷却水の中に混入している。これはまさに「汚染水」だ。いま海に放出しているのは、その「汚染水」から金属類を除去した無害な水なのだ。だがこの「除去」がどれほどの精度で実施されているかについては、疑問がある。いまタンクに貯蔵されているものの多くは、金属を含んだ本物の「汚染水」で、ここから金属類を取り除く技術と精度には限界があるように思われる。本当に安全な水なら、すべてを一挙に放出してしまえばいいのだが、この金属類の除去に実は何十年もの年月がかかる。除去作業が日常化すると、装置の劣化や作業員の気のゆるみから、本物の「汚染水」が流出する危険がある。さらにいまあるタンクの中の大半が「汚染水」のままなので、地震や台風で、タンクが破損することも充分に考えられる。「トリチウムは安全だ」と言っているうちに、本物の汚染水が流出する事態が生じる可能性は充分にある。そこでこんなふうに考えるべきだ。「トリチウムは安全だが、タンクの中には大量の本物の汚染水が残っている。だから30年後まで、警戒を怠るべきではない」。さらに、壊れた原発はいまも熱を発している。水で冷やすしかない。だからいまタンクにある水は30年でなくなるかもしれないが、新たな汚染水が毎年大量に出るので、30年経過すれば汚染水がゼロになるわけではないのだ。

08/28/月
新宿のスポーツマッサージに行く。昨日は夕方、湯島天神まで散歩して、涼しい風が吹いていたような気がした。今日は午後の早い時間に自宅を出たので、うわっ、猛暑だ、という感じがした。明日も午後にリアルな会議がある。あまり歩かずに済むように最短のルートを考えたい。

08/29/火
著団連のリアルな会議。半蔵門の写真家協会ビル。神保町まで歩いて半蔵門線がいつものコースだが、猛暑なので小川町から都営新宿線で九段下で乗り換え。階段を上がるのが面倒なので同じホームの反対側に来た半蔵門線で神保町、反対側のホームの渋谷方面に乗って半蔵門。乗っている間に、帰りはこういう方法では乗り換えできないなと考えた。九段下で新宿線に乗り換えると新宿三丁目まで行かないと島形ホームの駅がない。そこで会議のあとは市谷まで歩いた。よい運動になった。

08/30/水
本日から週末にかけては公用がない。妻は昨日から次男のいる四日市に出向いた。ということで、プレッシャーが何もない状態で仕事に集中できる。『デーヴァダッタ』の読み返しの作業を続けている。ずいぶん前に書いたところもあるので、何を書いたかすっかり忘れているのだが、なかなかいい感じに仕上がっているので、よくもこういうものが書けたなとわれながら感心する。小説作品を書く場合、出だしを書いている段階では、何をどう書いたらいいか、五里霧中の状態で最初の一歩を踏み出すことになる。不安だが、これまでもそうだったので、何とかなる、という気分でとりあえず前に進んでいく。いま読み返してみると、手探りで進みながらもちゃんと布石を打っていることがわかる。布石というのは、のちに書くことになる場面の伏線のようなもので、こういう前置きの積み重ねがあるから、途中で行き詰まっても、その伏線を回収していればさらに前に進める。そんなふうに書きながらその先を考えていくうちに、かなり先までの見通しができていくことになる。いまはまだシッダルタが修行の旅に出るまでの段階で、序盤にすぎないのだが、すでに隣国のコーサラ帝国で、のちに重要人物となる人々を登場させている。ヤショーダラが懐妊し、シッダルタが五人の仲間とともに旅に出るところまで行けば、序盤は完了する。その先はわりとよく知られた状況なので、ストーリーはできている。この序盤はさまざまな伝説があるばかりで史実というものはないので、すべてオリジナルで話を進めるしかなかったのだが、あとわずかで序盤が終わるところまで来た。いい感じになっている。

08/31/木
起きるとすぐに御茶ノ水駅前の丸善に出向いて『選手名鑑』を購入。今日が発売日。開店直後に行ったのに2冊しかなかった。2冊しか仕入れなかったのだろう。危ないところだった。本日の仕事はこれだけ。いよいよあと1週間に迫ったFootballの開幕。数日前に全体の展望を短く記したのだが、ここでは地区ごとの状勢について簡単に触れておく。FootballはQBで決まる。パス主体のQBの場合は、パスを投げるまでQBを守るオフェンスライン5人が揃っていないといけない。もちろんパスを受けるレシーバーも必要。それで点がとれても、ディフェンスが弱ければ点の取り合いになって安定した勝利には結びつかない。ということは結局は総合力ということになるのだが、ある程度のオフェンスラインがあり、総合的な戦力も整っている場合は、QBの実力次第ということになる。まずはAカンファの東地区から。ここはQBジョシュ・アレンのいるビルズの独壇場だったが今シーズンは違う。パッカーズの大物QBロジャースがジェッツに移籍したのだ。ジェッツの昨年のオフェンス新人賞とディフェンス新人賞がW受賞した総合力の高いチームだが、QBがいなかった。そこにロジャース。しかもロジャースと親しいレシーバーを2人ほどトレードで獲得。この地区の優勝候補どころか、マホームズのチーフスに対する最大のライバルにのしあがった。ビルズもワイルドカードで残るだろうが、地区優勝はジェッツだろう。QBタゴヴァイロアが不安定なドルフィンズは苦しい。ペイトリオッツは最下位だろう。北地区はベンガルズのQBバローが負傷したとの報もあるが軽いものなので開幕に間に合うだろう。地区優勝候補ではあるが、レイブンズのラマー・ジャクソンが負傷しなければ競り合いになる。2年目QBのピケットを擁するスティーラーズは勝ち越しがやっとだろう。QBワトソンのRBチャブのいるブラウンズも勝ち越せるかという程度。やはりベンガルズがトップだろう。南地区。去年はトレーバー・ローレンスのジャガーズが逆転優勝した。その勢いは止まらない。コルツは新人QBリチャードソン、テキサンズも新人QBストラウドで勝負する。新人QBがいきなり地区優勝するほど甘くはない。タイタンズはベテランQBタネヒルが先発するだろうがここにも新人QBリーヴィスがいる。ジャガーズのローレンスも3年目なので、若いQBの競り合いになればおもしろい。ただ3年目のローレンスに経験値があるのでジャガーズの連覇だろう。西地区はマホームズのチーフス。めぼしいレシーバーがいなくなったが、マホームズの正確なパスは素人でもキャッチできる。去年のチャンピオンシップで練習生のケンプというタイトエンドがブロック要員として出ていたのだが、マホームズはそこにもパスを通した。しかもファーストダウンをとるミドルパスだった。対抗馬はハーバートのいるチャージャーズだが、勝ち越しするのがせいぜいといった戦力だ。去年は移籍したばかりのラッセル・ウィルソンが失速したブロンコス、ベテランQBカーを放出して中堅QBガロポロを入れたレイダーズ、どちらもスーパーボウル体験のあるQBなので大化けするかもしれない。Nカンファに話を移すと、東地区はスーパーボウルで惜敗したイーグルスの牙城は揺るがない。ただモバイルQBのハーツは研究されるだろう。ただ去年の戦力がランニングバック以外はほぼ残っているので地区優勝は堅い。対抗馬はQBプレスコットに、控えとして49ナーズからランスを移籍させたカウボーイズが有力。昨シーズン久々にプレーオフに残ったジャイアンツもダニエル・ジョーンズがより充実したプレイを見せればチャンスはある。コマンダーズはQBがいない。チーフスの攻撃コーチが移籍したのだが、駒がなければ攻められない。チーフスが最有力だが、カウボーイズにも期待したい。ただしぼくはジャイアンツファンなのでジャイアンツの健闘を祈っている。北地区は昨シーズン惜しいところでプレーオフ出場を逃したライオンズが有力。ラムズから追い出されたQBゴフが、ようやくチームに慣れてきた。パイキングのカズンズは去年がピークで今年は落ちるだろう。ロジャーズがいなくなったパッカーズは控えのラヴでどこまでやれるか。ベアーズは3年目QBはジャスティン・フィールズが、昨シーズンの途中からパスを投げるのをやめて走りまくった。今年もそれでいくのか。南地区は今年のドラフト最大の目玉、新人QBヤングのパンサーズがどこまでやれるか。総合力のあるチームなのでいきなり地区優勝の候補。このゾーンは負け越しでも地区優勝できるくらいにレベルが低い。ブレイディーが引退したバッカニアーズは、昔ブラウンズで活躍したメイフィールドを先発に据える。ワトソンのトレードでブラウンズから追い出されて、その後はチームを転々としたメイフィールドが先発として定着できるか。ブレイディーがいなくなっただけで戦力は整っているので、QBが頑張れば地区優勝のチャンスはある。セインツはレイダーズから放出されたベテランQBカーを拾った。掘り出しものを拾った感じがする。ファルコンズはQBがいない。去年控えだったリダーで行くのか、コマンダーズから移籍したハイニケで行くのか。ぼくはハイニケのファンなのでハイニケ先発なら応援したい。結局、新人ヤングのパンサーズが勝つのではないか。最後に西地区。49ナーズは昨シーズンのシンデレラボーイ、ドラフトビリのパーディーが負傷から戻ってきた。ここが地区優勝候補。昨シーズンは長く控えだったスミスが意外と活躍したシーホークスが2番手。ラムズはピークを過ぎたスタッフォードでは苦しい。カーディナルスはマレーの回復が遅れている。49ナーズの独走になりそうだ。で、Aカンファはロジャースのジェッツとマホームズのチーフスの最終決戦、Nカンファはよくわからない。49ナーズと、東地区の勝者(イーグルスかカウボーイズ)というところか。新人QBが先発しそうなのは、パンサーズのヤング、テキサンズのストラウド、コルツのリチャードソンの3チームで、勢いに乗れば大化けするかもしれない。


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