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月末
05/02/火
大学の教員をやっていたころは5月の連休といっても振替の出講日などがあって長く休むことはできなかったのだが、いまはリタイアした身なので、リアルな会議がなければ仕事場にこもることができる。今回も文藝家協会の理事会まではリアルな会議がないのでのんびりできる。本日は庭に面したウッドデッキに防腐剤を塗る作業。とりあえず2度塗りして1缶を消費したのだが、2缶用意してもっと厚く塗ればよかったと反省。ただ築40年の建物なのであと何年もつかわからない。従ってこうした補修作業にもあまり熱がこもらないのだが、老朽した家屋だからこそ小まめに補修する必要があるのだろう。『善鸞』の作業は4章の後半に入っている。ここまで大きな挿入は一箇所だけ。それなりにうまく話が進んでいるのであまりいじらない方がいいだろうと思った。あと2箇所くらい大幅な直しが必要だと予感している。
05/03/水
本日は庭に除草剤を撒いた。庭には蜜柑や文旦の樹も植わっているので、そのあたりは避けて撒く。さほど広い庭ではないので作業はすぐに終わる。『善鸞』のチェックは難所を突破した。秘事の法門についての主人公の見解をいいところに挿入できた。あともう一箇所、どこかに決意のようなものを示しておけば、主人公の心の動きが読者に伝わるだろう。今回の仕事場での作業はこれがメインだ。まだ5章の途中なので、作業は週末までかかるだろう。赤字の入力は東京に戻ってからということになりそうだ。ところでFootballの話題。今年のチーフスのドラフトはどうか。去年のワイドレシーバーのタイリーク・ヒルをトレードで出したのでドルフィンズから1巡指名権を貰っていた。だから1巡で2人選べたので、ディフェンスバックのマクダフィーとエッジのカラフィッツを指名できた。2人ともスーパーボウルで活躍した。さらに2巡でもワイドレシーバーのスカイ・ムーアとディフェンスバックのクックを採れた。これに加えて7巡のディフェンスバックのワトソンとランニングバックのパチェコが、予想外の大活躍だった。ということで大成功のドラフトで、結果としてスーパーボウルを制覇することができた。今年はエッジ、ワイドレシーバー、タックル、コーナーバック、ラインバック、ディフェンスタックル、それにもう1人コーナーバックを指名。まんべんなく補強ができた。ランニングバックは指名されなかったのだが、スーパーボウルで活躍したパチェコが2年目となり、ランニングだけでなくパスキャッチでも、フルバックとしても機能したベテランのマッキノンとも契約できた上に、怪我でリタイアしていたヒレアーも復活するはずなので、3人体制でシーズンに臨むことができる。スミスシュスターが抜けたワイドレシーバーは、スーパーボウルでタッチダウンを挙げた3年目トニーと2年目スカイ・ムーアの成長と、落球癖があると懸念される新人のライスで何とかやっていけるだろう。エッジの新人ウゾマーを採れたので去年の1巡のカラフィッツと2人で相手のQBに攻撃を仕掛けられるだろう。オフェンスのタックルも弱いのだが、これもタイトエンドを2人にするなどの対策で乗り切れる。QBマホームズの控えがいないのが気になるところだが、これはまだ余っているベテランがいるので、安いギャラで補充できればと思う。ということで、9月からの新シーズンも万全の体制で臨めるだろう。ジャイアンツにも頑張ってほしい。俊足の新人レシーバーのハイアットに期待している。
05/04/木
本日のビッグニュースはバッカニアーズのタックル、ドノバン・スミスのチーフス移籍が発表されたこと。ドラフト前には元ジャガーズのジャワーン・テイラーの移籍もあった。スーパーボウルで頑張った左右のタックルが放出されたたあとだったので、これで両タックルが揃ったことになる。とにかく左右のタックルはQBをエッジの攻撃が守る砦なので、左右が揃っていないと心配だ。ドラフトで新人のタックルを1人指名したのだが、これは控えでもいいし、隣のガードとして起用してもいい。昨年の控えのタックルも残っているので怪我でリタイアする選手が出ても何とかもちこたえるだろう。スーパーボウルで優勝すると、全員のギャラを上げなければならないところだが、サラリーキャップというギャラの総額が決まっているので、QBのマホームズ、タイトエンドのケルシー、ディフェンスタックルのクリス・ジョーンズ以外の選手はギャラを上げることができない。幸い、チーフスはここ何年も、連続でカンファの決勝戦までは進んでいて、ギャラのアップを要求する選手を放出して若手に切り替えてきた。全体として若い選手が多いので、何人かを放出するだけでサラリーキャップを守ることができる。優勝するとドラフトの順位もビリなので、最有力の選手を採ることはできないのだが、それでも今年もランニングバックとセイフティー以外の各ポジションに新人を配置することができたので、9月からのシーズンにも期待できる。ただし今年はジェッツのロジャースが入った。去年の新人王はオフェンス、ディフェンスともにジェッツの選手で有力な若手がサラリーキャップに余裕を作っている。そこに超大物のロジャースが入った。ジェッツは今年にスーパーボウル進出をかけているだろう。まあ、楽しみなシーズンが始まる。さて、本日は新城の桜淵公園に行ってきた。その名のとおり桜の名所で去年は桜を見に行った。連休で浜松周辺は混雑しているはずなので、深緑を楽しみに桜の名所に行ってみた。人が少なくいい感じだった。ここは豊川の両岸に公園があって遊歩道の橋でつながっている。河岸には断層があって褶曲した地層が見られる。それを見ているだけで楽しい。
05/05/金
ゴールデンウィークの3〜5日は、例年、浜松祭が開催される。海岸では凧揚げの合戦があり、市街地では進軍ラッパを吹いて走り回り、夕刻からは山車の運行がある。何度か凧合戦は見たことがあるが、たいへんな賑わいなので、この期間は浜松市街地に近づかないようにしている。本日は大河ドラマで家康を演じている松本潤さんと、井伊直政を演じる板垣リヒトくんが武者行列に参加するというので大群衆が市街地にひしめいている。6チャンネルの情報番組と、NHKのネットニュースで中継があるというので両方を見ていたのだが、能登半島で地震が起こったのでテレビ中継は切断された。NHKのネット配信はそのまま中継が続いていた。最近は浜松にはあまり行かないのだが、昔、長男が子どもだったころは、ピアノのレッスンのために東京に戻る息子を浜松駅まで送り迎えしていたので、駅前周辺の地図が頭の中に入っている。なので駅前を進んでいく武者行列を見ていても、どのあたりかということがよくわかるのでおもしろかった。自分の仕事は5章が終わった。あともう一箇所、大きな直しが必要なのだが、そこを通り過ぎればほぼ完成ということになる。何度もプリントチェックをしたつもりだったが、編集者の指摘もあり、自分で見直してもタイプミスが見つかる。ゲラにする前にチェックできてよかったと思う。
05/06/土
6章の冒頭部の挿入。かなり苦労した。これでいいかどうかもわからない。これまでの冒頭部は最初の3行だけ残して1ページぶんほど削除すべきか。明日、じっくりと考えてみたい。これまでも何カ所か挿入してきたので、そのぶん冗長になっているかもしれず、削るべきところは削った方がいいかもしれない。本日は将棋の将棋の叡王戦の第3局の中継を見ていた。前の対極と同様、双方がアナグマに囲ったので、手が進んでも駒のぶつかりあいがない。夕方になってもまったくぶつからない。コンピュータの判定も五分五分が続く。と思ったら先に1分将棋になった藤井くんが飛車を切って勝負に出た。途端に数字が30%に下がった。さらに1分将棋が続き、20%に落ちる。しかし菅井さんも1分将棋になって手が弛んだ。また五分五分になる。菅井さんが藤井陣を責める。駒は藤井くんの方が多いので自陣に金や銀を打って王を守る。菅井さんはそれを引き剥がしにかかる。同じ手順が続いて千日手になりそうだったが、それでは先手の藤井くんが不利になる。左下に王を囲った藤井くんが、右上の関係ないところに角を打った。攻め手になっていないようだが、これで自陣の王を守っている。その筋に菅井さんが駒を打つと、角が自陣に戻ってきて馬になる。最強の防衛になる。そのあたりで菅井さんの手が乱れた。じわじわう藤井くんが優位になる。午後7時。夕食の用意が出来ているのだが双方1分将棋なので目が離せない。妻と2人で画面を見るうちに藤井くんの勝ちが決まった。本日の大局はずっと菅井が優勢で、藤井陣はもはや絶望というところまで追い込まれていた。それでも双方1分将棋になると、藤井竜王はミスをしなくなった。何しろ前期は早指し将棋の4つのトーナメントをすべて制した人物なので、1分将棋に自信をもっているのだろう。見ていて疲れるような対局だった。
05/07/日
昨日書いた第6章の冒頭部はうまく次につながっていた。あとはタイプミスのようなものだけかと思っていたのだが、編集者の書き込みを発見。これに応えるために数行の挿入をした。ここまで別紙を貼り付けたのは4箇所だけ。とはいえ細かい書き込みは無限にあり赤字を入力するのが大変だ。深夜近くになって、チェック終了。エンディングの部分はまったく直しがなかった。完璧なエンディングだと自画自賛している。明日はまだ浜松に留まる。火曜日に移動する予定。入力作業は東京に戻ってからということで、明日はのんびりしたいのだが、仕事場の片付けや移動の準備がある。今回、この仕事場に来た翌日にドラフトの中継があった。3日間のドラフトが終わって、ロジャースの移籍も含めて、9月からのシーズンのQBの状勢がはっきりした。ライアンとウェンツの行き先が決まらないが、この2人は引退かもしれない。数年前のスーパーボウルMVPのニック・フォールズも放出された。いずれも過去のQBだ。ここ数年、身体能力の異様に高いエッジが各チームに配置され、ブレイディーのような、ただ数歩下がってパスを投げるタイプのQBは、エッジの襲撃をまともに浴びるようになった。ラマ―・ジャクソンやハーツのような走るQBでなくても、マホームズやバローくらいの走力をもっていないとエッジの標的にされてしまう。ジェッツに移籍したロジャースも過去のQBと言うべきだろう。ニック・フォールズも走れないQBだった。ライアンもウェンツも引退ということになるだろう。ぼくの好きなブリッジウォーターもまだ移籍先が決まらない。チーフスはマホームズの控えが不在なのでブリッジウォーターなんかはいい選択だと思うのだが。
05/08/月
浜松最後の日。2週間弱の滞在であったが、仕事場を維持する作業は無事に果たせた。中心の仕事は『善鸞』の最終仕上げであったが、予定どおりここにいる間でチェックを終えた。東京に戻って赤字入力の作業をした上で、赤字の入ったプリントを担当編集者に送り、OKが出ればデータを送る。それで作業は完了する。羽アリが出現したので鷲津のホームセンターに行って防虫スプレーを買い、建物の下に潜りこんで散布をした。斜面に建っている木造建築だが、下に入ってみると土台はしっかりとコンクリートで作っている。意外に頑丈にできている。まだ当分住めそうな気がしてきた。建物の寿命とこちらの寿命を比べればいい勝負かもしれない。
05/09/火
9時半に浜松を出発。途中、藤枝、鮎沢、海老名で休憩。3時には御茶ノ水に到着した。郵便受けが満杯になっていた。パソコンを設定し、郵便物を整理する。本日はそれだけ。
05/10/水
近くの医者に行っていつもの薬を処方してもらう。本日は血液検査と肝臓の超音波検査。健康診断の一種。大学を定年退職してからは、人間ドックには入っていない。小説を書く作業はのんびりやっているので、とくにストレスもない。最終チェックの終わった『善鸞』の入力作業。これも急ぐ必要はない。タイプミスのないようにじっくりと作業を進める。
05/11/木
文藝家協会の常務理事会と理事会。必要な発言をして弁当を貰って帰る。昼のうちに入力作業はかなり進んだ。明日もリアルな会議があるので時間をとられるが、土曜には作業を終えたい。
05/12/金
SARTRASに出向いて、共通目的委員会の事務局案を検討。9月のチーフスの初戦がライオンズだと発表された。これは強敵だ。昨シーズンのライオンズはQBゴフとレシーバーとの呼吸がうまくいかず連敗をしたが、後半は逆に連勝をして、プレーオフまであと一歩のところまで行った。その勢いが残っているなら、プレーオフ進出の実力のあるチームだと見ることができる。チーフスの昨シーズン、レシーバーのヒルがいない穴を移籍のスミスシュスターとスカントリングが埋めた。そのスミスシュスターが抜けて、今年はスカントリングだけになった。3番手のレシーバーだったハードマンもいなくなった。昨シーズンの途中から加入したトニーと、新人のスカイ・ムーアはジェットモーション要員だったが、この二人がスーパーボウルでタッチダウンを挙げた。今シーズンはこの2人が主力になる。これにドラフトで採ったワイドレシーバーが即戦力になるのか(使えるとしても後半だろう)。オフェンスラインの両端のタックルも移籍の新戦力で、ラインとして機能するまでには時間がかかる。エッジも新人が入ったが慣れるまでに時間がかかる。ということで、スーパーボウルに勝った時と比べると、オフェンスもディフェンスも戦力が半減している。ライオンズとはいい勝負になるだろう。今シーズンはベンガルズ、ラムズに加えて、ロジャースが移籍したジェッツ、タゴバイロアが怪我から復帰したドルフィンズ、3年目のQBトレーバー・ローレンスのいるジャガーズ、ハーバートのチャージャーズ、ガロポロが入ったレイダーズ、新人QBのストラウドのテキサンズ、リチャードソンのコルツ、ラッセル・ウィルソンの復活にかけるブロンコスなど、Aカンファの戦力が軒並みアップしている。一つ一つの勝ち星がプレーオフに関わってくる。チーフスとしてもぎりぎりの闘いになると思われる。開幕戦は何とかライオンズに勝ってほしい。さて、夜中近くになって名古屋の孫たちがやってきた。このところ週末ごとに東京に通っているのは何かイベントに参加しているらしいのだが、詳細は知らない。高校1年と中学1年で、まあ、大人ではないけれども子どもでもない。スペインにいる次女の高校卒業パーティーのドレス姿の写真を見て、もう孫という感じはしなくなった。知らないおねえさんという感じだ。そこへいくと名古屋の孫2人はまだ孫だ。到着した孫たちの喧騒から離れるためにパソコンに向かっていたら、赤字入力完了。それで手が離れたということにしたいものだ。日曜日に赤字の入ったプリントを担当編集者に送る。それでOKということになれば、いま入力が完了したデータをメールに貼り付けて送る。それですべては完了する。
05/13/土
歴史時代作家協会で電子書籍の発行を始めることになったので目玉商品として何かないかと問われたので、デッドストックになっている作品を出せないかと思って読み返している。最近は紙の本と同時に電子書籍も出るのがふつうになっていて、過去作品も大半は電子化されている。データのない作品も画像で読めるようになっている。電子書籍だけの発行というのは、ぼくとしては初めてのことだが、5年間デッドストックになっている作品なので、とくに愛着もなく、まったく別の話に書き換えるプランも考えていたところなので、デッドストックをアーカイブするといったコンセプトで出してもいいかなと考えている。ということで、校正を考えて読み返しているのだが、なかなかいい作品だ。ただひとりよがりのところもあるかなという気もするので、ボツにした方がいいのかしもれない。
05/14/日
本日は神田祭。日本橋や茅場町のあたりからも神輿が集まってくる。ぼくのいる集合住宅の1階にも神輿がスタンバイして街路にくりだしていく。10年前に引っ越した時には物珍しさもあって見に行ったのだが、まあ、わざわざ見に行くほどのことでもない。それでもいまの窓から見下ろせる外堀通りや、寝室の窓から見下ろせる御茶ノ水駅の聖橋口のあたりには、各地からの神輿の通り道になっていて、神輿が渋滞してひしめきあっているさまが眺められる。掛け声も聞こえてくる。祭の雰囲気は充分に堪能できる。『善鸞』の作業は完了した。デッドストックになっていた『人麻呂しのびうた』という作品を読み返している。なかなかの作品だと思う。手直しするようなところはないのだが、タイプミスは時々見つかる。ただ和歌の引用が多く、フリガナもたくさんあるので、これを電子書籍の設定に直すのはけっこう手間がかかるのではと思われる。こちらは事前に校正をして、ベストの状態で渡したいと思っている。
05/15/月
著団協の会議とSARTRASの会議。どちらも信じがたいほど紛糾している。もはやこちらが意見を差し挟む余地はないので聞いていただけだが、聞いているだけでも疲れるような会議だった。さて、電子書籍の事前チェックが終わったので、担当者にデータを送付した。これで当面の作業はすべて終わったので、『デーヴァダッタ』に戻ることができる。ノートのページ数が「5」になっているのに、まだ冒頭部分が出来ているだけなのだが、この4ヵ月半で、作品に取り組む心構えのようなものが確立されたので、この期間というのは無駄ではなかった。ただ『善鸞』の第一草稿が終わったことで、『デーヴァダッタ』と題するページを始めたのだが、そこに『光と陰の紫式部』の校正が入り、『善鸞』のチェックが長びいたということもあって、『デーヴァダッタ』がなかなか先に進めなかったということもある。まあ、これから先が大変だなという思いはあるが、とにかく一歩ずつ先に進んでいきたい。
05/16/火
土曜日に発送した赤字入りのプリントがまだ届いていないというので、ヤマト運輸のサイトにつないで番号を入れたのだが反応がない。電話をして確認すると受け取っていないとのこと。ぼくの住んでいる集合住宅は配送センターがあってそこから荷物が届き、電話すれば発送の荷物も取りに来てくれるのだが、書類だけなので散歩のついでに近くのコンビニから発送した。いつもゲラなどはそうしているのだが、不安は感じていた。こういう言い方をすると差別的になるのだが、コンビニには言葉がよく通じない店員がレジにいることが多い。大丈夫かな、と思ったのだが、大丈夫ではなかったのだ。コンビニに電話すると本部みたいなところに交換台があるみたいで、事情を話すと調べてくれた。まだ店にあるというので、ただちにヤマト運輸を呼んで、本日中に届くということで、こちらも諒承した。紙に手で書いた赤字の入ったもので、一種の生原稿のようなもので、なくなると困る。ただ元データに赤字の部分は入力してあるので問題はないのだが、編集者が修正箇所だけを確認する場合は、赤字の入った紙のプリントが必要になる。とにかく紛失したわけでないことがわかってよかった。そういう電話のやりとりのあとで、新宿のマッサージセンターへ出向く。月に一度、揉んでもらう。思えば先月は仕事場で転倒して腰を傷めた直後だったので、マッサージも苦痛だった。本日は全快しているので快適だった。もう十年以上、ここに通っている。十数年前に膝が痛くなって歩けなくなったことがあった。当時はラップトップを文字どおり膝に載せて原稿を打っていた。その姿勢がよくなかったようだ。役者をやっている姉が使っているスポーツマッサージを紹介してもらった。スポーツ選手や俳優のためのマッサージセンターで、ぼくのような素人は割引になる。スポーツ選手は打撲や捻挫が多い。舞台俳優も体で仕事をするので疲労がたまるようだ。ぼくの場合はデスクワークなので、腰と肩が張ってくる。月に一度、ほぐしてもらうと楽になる。いまのところ肩も腰もとくに問題はない。
05/17/水
本日は外出の用もなく、ネット会議も入っていない。久々に『デーヴァ』に取り組む。昨日マッサージを受けながら先のことを考えていた。導入部は完了している。シッダルタの結婚式のあと、急に大人になるのも展開が早すぎるので、主人公デーヴァダッタの成長を追っていきたい。シッダルタの異母弟のナンダを登場させたい。ところで『デーヴァダッタ』というタイトルが長すぎるかという疑問が生じた。どうせ意味不明の固有名詞なので、『デーヴァ』でもいいかなという気がする。これだけだと「神」という意味になる。デーヴァダッタはヒマラヤ杉という意味もあるが、神がかりの予言者といった意味合いもあるようだ。隣国にデーヴァダハ城という都市国家があり、そこの生まれでもある。まあ、じっくり考えてみたい。
05/18/木
『デーヴァダッタ』の新しい領域に入った。まだ手探りだ。全体の構成もまだ充分に考えていない。中勘助の作品では、ヤショーダラをめぐる物語と、アジャーシャシャトルをめぐる物語の二部構成になっている。ぼくの作品は釈迦を描くことになるので、釈迦の修行遍歴から成道に到るプロセスと、教団設立の経緯をたどらなければならない。大雄マハーヴィーラーも釈迦に匹敵する偉大な思想家として、肯定的に描きたいと思っている。『善鸞』でも、日蓮と叡尊は肯定的に描いている。そのため主人公の影が少しうすくなっているかもしれない。歴史的な評価からしても、日蓮と叡尊およびその弟子の忍性は、偉大な人物だと見なされている。これに対して善鸞の評価はゼロに等しい。同じことはデーヴァダッタについても言える。似たような話になりそうだが、インドのガンジス流域やヒマラヤの風景描写で、壮大な叙事詩になるように心がけたいと思っている。さて本日は午後、SARTRASの分配委員会。1回だけ少し長く発言した。明日はネット会議のはずだったが、議長の委員長が病欠としてことで、議長を務めることになった。ということはSARTRASにリアルに行かないといけない。10時からの会議だから朝8時に起きないといけない。今夜は早めに寝ることにする。
05/19/金
朝8時に起きて、リアルにSARTRASに出向く。共通目的委員会。時間ピッタリに終了。自宅に帰って昼食後、運転免許交付センターに出向く。徒歩15分くらいのところにセンターがある。75歳の更新なので実車講習と認知検査の書類が必要。旧免許証、通知の葉書、2500円などをクリアファイルに入れて持参しているので、あとは流れに従って進むだけ。目の検査は「声を出さずに指で示す」ということだったが、見えにくいわっぱを見ようとすると、思わず声が出てしまう。小雨だったせいか空いていた。帰りに薬屋に寄って常備薬を購入。これで1日が終わった。
05/20/土
名古屋へ日帰り。ぼくと妻はJRの老人クラブみたいなものに入っているので、「のぞみ」ではなく「ひかり」に乗ると割引になる。しかし外国人旅行者も「ひかり」に安く乗れる制度があるようでものすごく混んでいる。往きの「ひかり」は三島・静岡・浜松に停車(もちろん品川と新横浜にも停まる)。復り「ひかり」は豊橋だけ。どういうシステムになっているかわからないが。名古屋に行ったのは孫と次男に会うため。まあ、ちょっと話があったのだが、名古屋は近い。次男の勤め先は四日市なので、少し遠い感じがする。春に浜松の仕事場にいた時に、孫のブラスバンドの発表会があって、名古屋大学の講堂まで出向いた。その時は妻の運転で東海道線の鷲津まで行き、豊橋で名鉄に乗り換えたのだが、東京から行った方が近い感じがした。自宅が東京駅に近い御茶ノ水だからかもしれない。いまここに住んでいるのは、三鷹にある大学の専任教員になったからだが、いまはリタイアしたのでここに住む理由はないのだが、どこへ行くにも便利なので、引っ越すつもりはない。高層住宅なので地に足がついていない感じもするのだが、時々浜松の仕事場に行くので、地べたで生活できる。ということで、本日はそれだけの1日。
05/21/日
住んでいる高層住宅の前の広場で3人バスケの大会をやっていて、歓声が聞こえてくる。散歩の前に少しだけ見物していた。ワゴン車がホットドッグやビールなどを売っていて、賑わっている。いい日和だ。さて、『デーヴァダッタ』。釈迦の養母のプラジャーパティーを登場させることにした。釈迦の修行時代に話が移ると哲学的な話題ばかりになってしまうので、冒頭部分の妻や母がいる時代をやや長めに展開したいと思う。この養母も魅力的な人物のはずだが、主人公のデーヴァダッタがまだ幼いので、おばさん、という印象しかない。とにかくヤショーダラだけでなく周囲の女性たちも描いていきたい。
05/22/月
旺文社の担当者とロビーで打ち合わせ。あとはひたすら仕事。少し進んだ。
05/23/火
王妃プラジャーパティーと主人公との会話。会話を用いて状況設定を示すのは安易なテレビドラマのようで小説としては邪道なのだが、セリフのちょっとしたニュアンスで登場人物のキャラクターを見せることができる。地の文の説明が長すぎると読者が飽きてしまうのでこういう手法もたまにはいいだろう。プラジャーパティーとデーヴァダッタの考え方の相違が出てくるように展開したい。本日はサートラスのフォーラム対応委員会。これは本当のフォーラム会議の準備のための話し合いで、いつになったら本当の会議が始まるのか。ぼくは副理事長なので責任の一端を負っているのだが、さまざまな現場で利益を追求することを使命として職業としている人たちの議論なので、批判をするわけにはいかない。まあ、あとしばらくようすを見守りたいと思う。
05/24/水
深川ギャザリアへ行く。施設内を散歩。買い物もする。昨日は雨で寒かったが今日は快晴で陽差しが強く暑くなってきた。仕事も少し。やや停滞感がある。プラジャーパティーとの会話はスリルに乏しい。しかし作品に厚みをもたせるためには母親(釈迦の養母)もしっかりと描いておきたい。
05/25/木
SARTRAS理事会。他の委員会はけっこう紛糾するのだが、理事会は平穏で安定している。理事会さえしっかりしていれば問題はない。こちらは話を聞いていて、議決の時に「手を挙げる」ボタンを押すだけなのだが、老人の指先が乾燥しているせいか時々iPadが反応しないことがあって、画面の中で慌ててリアルに手を挙げることがある。まあ、すべての議決が過半数で承認されるので問題はない。明日は日本点字図書館のリアルな会議だ。人と会うのは楽しいのでリアルな会議は大事にしたい。
05/26/金
日本点字図書館理事会。いつものように議長を務める。何事もなし。点字図書館は高田馬場にある。もう20年くらい理事を務めているので、前の家に住んでいたころから通っていた。前の家は田園都市線の池尻大橋にあって一駅で渋谷に出る。山手線に乗り換えると近いのだが、副都心線の方が乗り換えは楽で、少し歩くことになるがそちらを利用していた。御茶ノ水に引っ越してからは小川町から九段下乗り換えで高田馬場に向かう。早稲田を通る。ぼくは早稲田大学に学生として5年通っていた。小説の書き方を教えるようになって、非常勤で9年、専任で6年、その後も著作権の講座を3年もっていたので18年。学生時代を含めると23年も縁があった。それ以外にも早稲田文学の編集委員として会議に出ていたから、ほとんどつねに早稲田に通っていたことになるが、武蔵野大学の教員になって縁が切れた。ぼくが担当していた文芸専修というものもなくなって、いまは文化構想学部というものになっている。まあ、何となく寂しい感じがする。その早稲田駅を通過する時に、ああ、早稲田だ、と思ったりする。
05/27/土
6チャンネルの土曜午後4時半から「レゴマスターズJAPAN」という番組が始まった。時間制限で課題に応じたレゴブロックの作品を作るコンペ形式の催しで、名古屋にいるわが孫2名(高1と中1)が参加した。これは本戦に出場するための予備予選で、20組のうちの半分が本戦に進出して、そこから毎週、課題に応じた作品を作り、決勝戦への出場者を絞り込んでいくという趣向。初回の課題は「球体」というものだったが、以前、孫たちは名古屋でのコンクールで地球を作ったことがあるので、レゴブロックで球体を作るのは慣れている。しかし地球だけではおもしろくないので、亀の上に象が乗り、その上に地球があってそれを巨大なヘビが取り巻いているという古代インドの世界観を表現した。しかもギャグで亀の前にトマトが吊されているという、とんでもないものを造形した。実は連休前に何度か、孫たちは御茶ノ水に来て宿泊したのだが、これの収録だった。会場のテレビ局は赤坂にあるので、千代田線一本で行けるのだが、朝が早いので、わが妻が朝ご飯を作るために早起きしていて、大騒ぎだった。
05/28/日
昨日の「レゴマスターズJAPAN」という番組はTBSの東京だけの放送のようで、孫のいる名古屋はもとより、大阪でも見られない。ただTVerというアプリを使えば放送後でもどの地域でも見られるということで、孫たちももちろん見たし、大阪の友人からも見たという連絡があった。スペインの長男も見たようだ。本日は将棋の叡王戦などを見てしまった。昨日、作品社の担当者から、『善鸞』を入稿するというメールがあった。これで初校が届くまで一箇月くらいは自由の身となれる。明日から短い旅行に出ることにしていて、のんびりできる。
05/29/月
旅行の一日目。妻がネットで申し込んだパック旅行でバスは満席だった。本日は目的地は宮島で、40年ほど前に講演会の合間に行ったことがある。妻も学生時代に行ったことがあるので、初めて目にする感動はないし、小雨が降っていたので、ただ疲れたという印象しかない。広島駅まで戻って自由時間があり、好きな店に入って夕食。このパック旅行は昼も夜も自由ということで、いっせいに同じものを食べることはない。ホテルには寝に帰るだけで、持参のウイスキーを寝酒として早めに飲み始めたのだが寝られずメモを書いているうちに酔いが回って「シッダルタはサーニンだ」などと怪しい言葉がノートに記されていた。
05/30/火
旅行の二日目。バスで裏日本へ。出雲大社。これも40年前くらいに講演の合間に参拝したことがある。人が少なく静かだった。昼食はついていないので蕎麦屋で出雲蕎麦を食べる。雨は止んでいたのだが湿度が高く蒸し暑かった。バスで移動。安達美術館。実は美術というものにさほどの興味がないが、広大な庭には、お金がかかっている、という強い印象を受けた。館内には足立さんという人の生涯がパネルで掲示されていた。この美術館のあるところが生地で、貧しい農家に生まれたが、炭の運搬のアルバイトから初めて、雪で街道が閉ざされた時に村人を金で雇って炭を運ばせるとお金が儲かって、儲けるということの楽しさを知った。こういう話はぼくは好きだ。大阪生まれなので。足立さんは大阪に出て、経験のある炭屋に奉公するのだが、そこで炭団という便利なものがあることを知り、三箇月で製法を学んで独立して炭団屋を始める……いいね。炭団で大儲けした足立さんは繊維産業に進出して大儲けして、次に不動産業に進出してさらに大儲けして、新幹線新大阪駅の周辺や大阪万博の予定地となる山林を買い占めて、ついに大富豪となり、自分の故郷に広大な美術館を建設したばかりか、自分の好きな横山大観などの日本がに触発されて「絵のような庭」を作って、これが大ヒットして、実際に美術館は超満員だった。美術館の絵にりも足立さんの一代記に感動した。評判となっている庭園も、東京や京都にある庭園の方が奥深さがあって、わざわざ見に行くほどのものではないと思ったが、もう見に来てしまった。それからダイコン島というところの牡丹園とバラ縁がある由志園というところで夕食。この時だけ全員で同じものを食べた。ぼくは海外のパック旅行は時々参加するので、こういうあてがいぶちの食事でもビールかワインがあれば充分に楽しめる。夕食のあとで大山のホテルに移動。ひたすらバスに乗り、ひたすら歩いていた日々だった。
05/31/水
またバスで移動し、倉敷の運河沿いを2時間ほど歩いて、倉敷駅へ。各駅停車で岡山駅に移動して新幹線に乗り込む。やれやれ。ウイスキー「濃い目」のロング缶を買って、のんびりと飲んでいるうちに東京に戻った。帰ってから膨大な量のメールへの対応で疲れた。郵便物も大量に入っていたが、急ぎのものは何もなかったので、3日間の旅行中、何事も起こらなかった。これで5月も終わる。『善鸞』が入稿となったことが喜ばしい。孫のテレビ出演も楽しかった。彼らは予備予選を突破したので来週以後も出演することになる。
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