TATUYA ISHII CONCERT TOUR 2001
ZERO CITY -AQI-
ライブレポート Part 4


【ダンスパフォーマンス〜聴かせどころ2】

 ステージ下手から持ち込まれる大きな台形の物体、2メートルほどの高さのそれは人が入れるくらいの大きさ。と、正面の窓にコータローの顔が大写しになる。次いで彼の全身が映る。青のつなぎに黒ブーツ、ゴーグルを頭にひっかけた格好、等身大のスクリーンだ。

 観客がスクリーンを見ていると、階段上から全く同じ衣装のリアルコータローが降りてくる。スクリーンのコータロー(ニセ者)とリアルコータロー(本物)とのダンス対決、といったところだ。物体の上にステージに、と動き回る。セリフはなくパントマイムでの演技だ。

 バックの曲は【SUGAR】、テナーサックスのノリのいいメロディにのって演技は進む。ニセ者が渡したバナナが実は皮だけ。それに本物がひっかかってすっころぶ、とか、ニセ者がスクリーンの中で休んでいるのを、本物が上でジャンプしておっことす、とかのオアソビをはさみつつのダンスパフォーマンス、途中の手拍子はバックのメンバーも一緒に。

 最後はノッてきて大得意になってダンスをしている本物のスポットをニセ者が消し、その腹いせに本物が偽物のスクリーンを消す、というパフォーマンス。本物がスクリーンと一緒に運び出されると階段上から石井が登場。

 曲のイントロをバックにゆっくりと降りてくる石井。黒のコート丈の上着に黒パンツ、上着にはボタンはなくフック止め、前立て部には左右共に黒のレースがあしらわれている(東金では全体が濃いグレーまたは黒で、シャツがそのままロング丈になったような上着姿だった)。歌い出すと曲は【Affection】。終始ポケットの片手をつっこんだ姿勢で歌う。

 石井が階段を降りると同時に、階段上には青いドレスのマリーザ。ゆっくりとした動き、しなやかな身体が美しい。右側の深いスリットからのぞく脚もなまめかしく、目を奪われているうちに終了。

 続いての1曲は【浪漫飛行】、円周が波形模様になっているライトブルーのライトが動き回り、ステージが一気に明るくなる。

 しかし、どうやらこの曲は鬼門らしく、竜ヶ崎公演ではぼろぼろ。まず、♪あきらめという名の傘じゃ、が以降とび、なんとか歌いきろうとするも、♪何もかもが〜以降ダメダメ。ついに吹き出すも伴奏はとまらない。♪wow wow wow〜、まちがえちゃったよぉ、と歌いながら後ろを振り向くと、あまりにも情けない表情だったらしくテラシーが崩れ落ち大爆笑していた。


【ハルヲとサブロー(二人芝居)】


風の音、オベリスクの塔のそそり立つ空に雲が流れる。ソプラノサックスの不安定な調べと、バスドラムとパーカッションの作り出すシンコペーションが聞く者を不安にさせる。

(上手よりフランチェスコ登場)
ゼロシティは恐れおののいき、予言者サウス・ハルヲは追われる身となった。ゼロシティは今やパニックに陥っていた。サウスはゼロ警察に捕まりその後脱獄した。
ここはゼロシティの南東40キロに広がる砂漠地帯、ゼロの人々はここをデスデザート、『死の砂漠』と呼ぶ。(退場)

(ナレーション中、下手より2人の男登場。2人とも黒皮のコートを着、水色の涙滴型に白い羽根のついたオブジェを背負っている。その側面には”ROMANCE -WONDERFUL HUMAN LIFE-”と記されている。つば広の帽子をかぶっているのがサウス・ハルヲ、トルコ帽姿が弟子のノースアイランド・サブローである)

(足取りも重くやってきた2人、サブローが階段に腰掛ける。この間ずっと歩くパントマイムをやっているハルヲ)

サブロー:(気の抜けたぼそぼそ声、以下同様)せんせ。ここまでくればもう誰も追っては来ないでしょう。そろそろ休みましょうか。
ハルヲ:休みましょうか(サブロー同様、気の抜けた声。さらに独特のぺちゃぺちゃ感がある、以下同様)
サブロー:先生、いつまでそんな顔をしてるんですか。
ハルヲ:私は「助けてくれ」とは言わなかった。
サブロー:先生はなくてはならない人なんですから。捕まって殺されるところだったんですよ。
ハルヲ:私は死ぬ覚悟はできていた。
サブロー:今さらそんなこと言ったってしかたないでしょう、脱獄したんだから。
ハルヲ:今やゼロの全ての人々が私を嫌っている。
サブロー:先生があんな予言なんかするから。
ハルヲ:私は予言者だ。神の啓示を皆に伝える義務がある。
サブロー:だったらもっとこう、どうでもいいこと予言してればよかったのに。例えば天気予報とか、誰かが転ぶとか。
ハルヲ:何を言ってるんだ。私はゼロシティきっての予言者だぞ。
サブロー:そういう自信過剰がこういう事態を招いたんですよ。だいたい神なんていうものは黙っていてくれればいいものを、でしゃばって言いふらすからこういうことになるんです。
ハルヲ:予言は絶対だ(失念)
サブロー:予言、予言ったって、先生が勝手に言いふらしているだけじゃないですか。
ハルヲ:私は…(反論しようとするが、言えずたじろぐ)
サブロー:(ずい、と詰め寄る)
ハルヲ:(退く。もじもじ。逃げ場を失い、下手脇によって立ち○ョンを始める)♪ジョー(←水音)

(ハルヲの前に位置していたハルミ嬢、脇に逃げる(笑))

ハルヲ:(ぷるぷるっとして終了。片方ずつ脚を上げてズボンの裾をぬぐう)
サブロー:(階段3段目に立ってこちらも立ち○ョン)♪ジャー(←かなり激しい水音、さらに長い)

(後ろのメンバーたち、一斉に順々にそれを浴びるフリ、ウェーブのように上下する5人

サブロー:(階段を、ガニマタで後ろ降りしながらも、さらに続く水音。ようやく終わり両手をコートになすりつけながらハルヲの方を向く)

ハルヲ:(間)おまえ殴ったろ?
サブロー:先生、いつの話をしているんですか。
ハルヲ:殴ったろ?あんとき。 横から手が見えたもん。
サブロー:手が見えたからって殴ったとは限らないじゃないですか。
ハルヲ:だって握ってたもん、こうやって(とグーをかざす)
サブロー:そんなことありませんって。それにあのパニックの中です。もしかしたら僕の手が先生に当たったかもしれない。でもわざと先生の頭を殴ったりしませんよ。
ハルヲ:あ、証拠みっけ! 僕、頭なんて言ってないもんね。だってさ、君さ、頭ってさ(ぴょんぴょんしながら言い立てる)、君さ、今さ、あたまってさ……
サブロー:(うんざりした表情で視線をはずす)
ハルヲ:(突然うずくまる)い、いて、すげぇいて。
サブロー:(振り向いて)大丈夫ですか?
ハルヲ:(顔を上げて両頬に人差し指を当て)うそだもんね。ひっかかったひっかかった(喜ぶ)
サブロー:うそはつくわ、○○(失念)だわ。このドアホじじい
ハルヲ:(ぴっとサブローを見て)きみ、これはテストだったんだよ。
サブロー:あ、きったねーなぁ。
ハルヲ:(サブローとは逆の方を向いて)へっへ、ひっかかりましたねぇ。
サブロー:誰に言ってるんですか。
ハルヲ:(振り向いて指さしながら)ノースアイランド・サブローくん、君は私の弟子と言っているが、うそなんだろ?
サブロー:何を言っているんですか先生。先生は捨て子だった僕を拾って育ててくれた、いわば僕にとって親同然の方じゃないですか。
ハルヲ:あれ? そう? じゃ、おれ、だれ?
サブロー:先生? あまりの出来事に弟子である僕を忘れてもいいですけど、ご自分のことまで忘れないでくださいよ。
ハルヲ:そうかわかったぞ。君は僕をテストしてるんだ。
サブロー:してません!
ハルヲ:してます!
サブロー:してません
ハルヲ:してません
サブロー:してます
ハルヲ:言った言った(小躍りして喜ぶ)
サブロー:はぁぁ(大きなため息)。先生、いい加減に戻ってきてくださいよ。こんな姿を見たら誰もこの人の予言なんて信じないよなぁ。
ハルヲ:私は(両手を前に)ゼロの街を救おうとしたのではないぞ。(片手を胸に当て)ゼロの心を救おうとしたのだ。
サブロー:イエス。
ハルヲ:サブローくん、(彼方を指さし)神の道は遠いな。
サブロー:オーイエス
ハルヲ:しかし(胸の前で手を組み合わせる)神は常に私と共にある。
サブロー:ハレルヤ! 調子づいてきたぞぉ。
ハルヲ:それで?
サブロー:なんですか?
ハルヲ:おまえやっぱり殴ったろ?
サブロー:またそれですか。

(フランチェスコ、上手より登場)
人生とは、重い荷物を背負って歩くようなもの。そしてその荷物は、いつ爆発するとも限らない爆弾のようなものなのかもしれない。
それから1年、まだ彼の予言は的中していない。いや、彼の予言そのものがゼロシティに与えられた厳しい戒めだったのかもしれない。

(二人の男、ナレーションをバックにゆっくりと階段上へと退場)



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