【アメリカの戦略】
石井:アメリカとイラクの関係はいったいどうやってああなっているのかというのを、知ってる範囲で教えてもらいたいと思うんですけど。
広河:僕の知ってる範囲で言えば、アメリカは何回も中東をいかに支配すべきかというのを考えてきたんですね。何回もそういうことをやって、イスラエルを介して支配しようとしたり、それからサウジアラビア、クェート、1984年にはアメリカ軍は、レバノンに行きましたよね。最初は歓迎されたんですよ、自由をもたらす軍隊だということで。しかしすぐに占領軍だという認識になって、トラックに積んだ爆弾1台で240人の兵隊が一挙に死んだんですよ。それでこの占領は失敗だと言うことでアメリカは退く。また何年かするともどろうとする、と何回もそういうことをしてるんですよね。湾岸戦争がああいう形になったのももちろんイラク側の責任もありますけども、アメリカ側にもそういう意図があったんですよね。
そういうようなときからずーっとエネルギーという問題と軍需産業という問題、中東の経済圏を自分たちが管理するという、まイスラエルもそれに荷担しているんですけども。そういうことで利益を得るアメリカの一部分があって、今のアメリカの政府を動かしているんですね。
石井:あの、アルカイダとかビンラディンとか、皆さんの頭にしっかりと刻み込まれちゃった名前と思うんですけど、そういう団体やそういう危険人物を作ったのも、実はアメリカなんですよね。最初フセインなんかでもアメリカは支援してましたもんね。
広河:どこもそういうテロ組織というものはアメリカが作ったり支援したり武器を与えたりしていますね。
石井:都合の悪い政府をつぶすために、レジスタンスに武器を与えてその政府を壊させる。そして壊したらこいつたちがじゃまになるから、今度はこいつたちをアメリカ攻撃する、そういう図式ですよね。大儀とか、そんなこと全くないじゃないですか。
広河:子供にも説得できないですね。戦争が始まったことも説得できないし、彼らの言い分のテロに対する攻撃もおかしいし、それから復興支援って、アメリカや日本も言ってる、あれは何からの復興かというとイラクの道路、給水施設、電気、みんな破壊されてますよね。アメリカが爆弾で破壊したんですよね。僕は復興支援じゃなくて戦後補償だと思うんですよ。自分たちがごめんなさい、壊しました。だからこのお金出直してくださいというのがふつうなのに、自分たちに責任がないような振りをして、復興支援をしなくちゃいけない、そのときに軍隊がいなくちゃいけない、占領軍が必要だ、と言う。それにだまされる人たちもおかしいけれども、日本の新聞とかテレビもそれに乗ってしまっているんですよね。
石井:どれだけの報道とかがうそなのかということでは、近いところではジェシカ・ラングさんもそうでしたよね。あの人の一件を見ても、こんなに作られてるんだっていう…信じる方も信じる方だけど、あんなに作られたら信じちゃうよなっていうね。ああいう情報っていうことが戦争なんですね。
広河:新聞対策やテレビ対策、いわゆるメディア対策というのは戦争の一部だというふうにアメリカはとらえていますからね。情報をどういうふうに組み立ててどういうふうに世論を誘導していくのか、それも戦争の一部だ、それがなかったら戦争は失敗するという。戦争を報道するときにこっちがよっぽどしっかりと毅然とした態度でいないと戦争をする側の報道機関になってしまう、世界中のジャーナリズムの半分はほとんどそうなってしまってますね。
石井:そういう中でね、偉いなと思うのがあるんですよ。アメリカのすぐ隣のメキシコやカナダが戦争反対に回ってるじゃないですか。そんなに近くにある国が反対してるのになぜ日本が反対できないんだろう。なぜそんなに怖いんだろうという。なんでですかね。
広河:よく質問を受けるんですよ。いつからそうなったのかと。向こうの子供たちを支援する、里親運動を支援していて、こっちにいるお母さん役の方が日本から手紙を送ってそのお母さんが風邪ひいて寝てるって言って、それを受け取った子供は朝から晩まで手紙見て一日中泣いてるんですね。僕らは難民キャンプの子供たちが殺されてたりしても涙を流す神経はないんですね。あっちの子供たちの培っているほかの人たちへの気持ちの広さっていうのはほとんど日本ではなくなってしまってるんですね。
石井:遠いというふうに思いすぎですね。
広河:向こうからだって距離は同じなはずですよ。
石井:人と人との信頼関係とか愛情とか、結ばれなきゃならないのが、お金とか権利とか紙っぺらで結ばれる現状があるじゃないですか。なんかそういう薄っぺらいものだけでなりたっている国になりさがってしまったのか、という気がしますよね。
広河:日本は周辺の貧しい国々のおかげで豊かになっているという部分もあるじゃないですか。いろんなことが言われているけど、そういうことは日本人に理解できないですね。そこの国の利益なのだからそこの国とシェアしなければならないという意識はありませんね。その利益ばかりを追求して隣の国の子供が飢えで苦しんでいる、それは見ないふりをする。ニュースもそれを見せられると自分の心がざわざわしていけない。だからワイドショーをを見る。ほんとのニュース番組はここ十年で1/3ぐらいになってるんですよ。
石井:アロマテラピーとかつって、ああいい匂い、これが平和だわつって私たちは危機感をそがれて、実際問題はとてつもない危険があるのに、それを感じないように文化や政治が回っているような気がしますね。
【石井の思い】
石井: (客席に)もっともっと利口にならなきゃいけないし、世界の人たちはもっともっと利口なはずです。このまんま行ってしまうと本当に愚かしい国民になってしまう気がしますよね。
危険がわからないというのは論外として、俺たちは危険を回避する能力を身につけなきゃいけない。それは暴力的なことじゃなくて俺たち被爆国だけができる戦争の回避方法って絶対あるはずだと思うんですよ。
その一つがGROUND ANGELだと思ってまして、実を言うと僕ZERO CITYというコンサートをやってるんですよ。ガンジーとかキング牧師みたいな無抵抗主義というか、飛んでくる弾をダンスしながらよけるっていう、僕のコンサートですからおもしろおかしくやるんですけど。自分たちの意識を高いところに持てば絶対に戦争を回避できると思うんですよね。それは考えると言うところから始まると思うんですよ。それを考えなかったら政府の意のままに動かされていってしまうと思うんですよね。
そんなこと言ったって石井さん私に何ができるの、って言われるかもしれないけど、今この瞬間考えると言うことだと思うんですよ。考えなくなったらその先は始まらないし、よくわからなくても考えることがものすごい反戦運動につながるんだと思うんですよ。それを成功させたのがガンジーでありキング牧師である気がするんですよね。
2、3年前ですか、なんだかいやな予感がしてその(ZERO CITYという)コンサートを始めたんですけど。それから今年の夏、SUNという第二次世界大戦の日本軍の話をモチーフにしたコンサートをしてきているんですけど。僕はミュージシャンであり芸術家として、気づかせるというか、気づくための行為を自分なりにしているつもりなんです。
来年あたりアフガニスタンに行きたい、と言ったら危険だから行かないでってファンの方にいっぱい言われて驚いてるんですけど。そういう場所を何も見ないでいるというのはどうなのかなぁと思って。この次全然違うコンサートをやるとしても、見ておくのとおかないのじゃ全然違うんじゃないかって思うんですけど。…(広河氏に)行かない方がいいですかねぇ(客:笑い)。
広河:1ヶ月前よりも今は何十倍も危険になってますし、来年になるともっともっとすごい危険になっていく可能性があるんですよね。でも、そういうこととは違うことで日本人が来てるということは大事なことだと思うんですけどね。
石井:広河さんの後ろにくっついていくというのはどうですかね。広河さんは慣れてらっしゃるからいいんですけど、俺なんか平和ボケしてるからぼーっとしている間にいなくなっちゃったらいやなんですけど(客:笑い)。
最後に、俺これ(オルゴール)ずっと見てて、なんの変哲もないかわらしい物体だと思うんですけど、これを持って少女が亡くなったって聞いて、これ自体が全然違うものに見えて来るじゃないですか。
僕が支援してるエクトル・シエラという青年が、折り紙が好きで折り紙を持ってきて、これを見てください。見たら、三角の形が動かしてもずっと崩れずに不思議なファンタジーを作り出してるんですね。3枚の紙で作るらしいんですけど。で、「これを見てください。人はこの紙に毒薬を包むこともできるし、折り紙を作ることもできる。人は言い方向にも悪い方向にも行くことができる。だとしたら良い方向にこの紙を使わない手はないでしょう。日本ってこんなすごいことができるんですよ」って。コロンビア人なんですけど彼は。
俺涙出てきちゃった、忘れてるって。こんなにすごい文化を持っていてすごいファンタジーを作り出せる国民なんですよ僕たちは。鶴があんなに優雅に折れる、というのはすごい。(それを聞いて)恥ずかしい気がしたんですね。
真剣に歌わなきゃなぁって思いました。今コンサートの前の日って寝られないんですよどきどきしちゃって。俺は米米CLUBの時から寝られなかったんだけど、最近離れてきて寝られるようになったんですけど、今回のコンサートではねられないんですよ。こういう真剣な気持ちで歌えば、みんなに伝わる、わかんないまでもなんかは感じてくれるだろうって思って、今真剣にやってます。
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