【想像力の話】
石井:これからのニュース、広河さんはどこに注意してほしいと思いますか?
広河:想像力ですね。爆弾が飛んでいく映像があると、その爆弾がその瞬間なにををしたのかを考えることですね。ところがそれがわかんないんですね。
僕がバグダッドに行ったとき見たんですけど、目の前で次々に爆弾が爆発して、その音でものすごい恐怖を味わったんですけど。その下で実はいろんな叫び声とかがしてる。音でわからない聞こえない、でもその想像力があるんですね。ところがそのトマホークのスイッチを押した人間にはその叫び声は聞こえないわけですよね。
その下のうめき声や叫び声がわからないと、自分たちは全く現実感のない殺人者になってしまいますよね。そしてこの戦争は正しいと思ってしまいます。そういうことを自分たちが持っておくべきだと思います。
石井:スイッチを押す方がどんなにきれい事を言っても、その下でうめいてる声とか殺された人たちとかにはかなわないと思いますね。どんなにきれいごとを言ってもそれは正しくないと思います。
(客席に)今GROUND ANGELがこの外でやっています。ここにも赤ちゃんのいる人、これから結婚する人、今いっしょうけんめい育っている人、たくさんいると思います。今、外では天使を追っかけている子供たちが走り回ったりしている絵が繰り広げられていると思います。
僕はあそこに天使を映したかったんじゃなくて、ほんとはあそこに遊んでる子供たち、絵を追っかけてる子供たちがいて初めて絵になる構成にしたんです。これはその子供たちが殺されるような時代にしちゃいけないということなんですよ。
人は壊すために生まれてきたんじゃないんですよ。ここにいる人たちは神様からなにかの才能をもらって何かを表現するために生まれてきたんですよ、何億分の一の確率で。
経済大国つって言ってるけど、これまでの歴史で大国がどんなに簡単に壊れてきたか、広河さんもおっしゃっていたとおり街が壊れるのなんて簡単だってことですよ。だから気持ちの中で反対して欲しいですね。これは…誓っていただきたいという気がします。
あの、今日はいつもの石井じゃなくてなんだよふざけねぇのかよと思われたかもしれませんけど、ステージに立たせてもらってる人間として、これはほんとに皆さんのおかげだと思ってます。石井また聞いてやろうか、って思ってくださる皆さんのおかげだと思ってますよ。そういう人たちに対して、やばいよって思ってるのに、一言も言わないままでただふざけるだけで消えていってしまったら、おれはなんのためにステージ立たせてもらってるのかって思っちゃったんですね。今日ここで話したことはカールスモーキー石井でもなければ石井竜也でもない、皆さんと同じ一市民としてこわいなって思う気持ちを皆さんと共有したいです。だからみんな気をつけましょう。
で、もらったこの命たいせつにしましょうよ。そして生まれてくる子供や今いっしょうけんめい育っている子供たちをたいせつにしましょうよ。これはおとなたちの責任ですよ。二度と爆弾が落ちるような国にしちゃダメですよ。
俺は説教できる立場じゃないしそんな経験もしてないけど、罪のない人が殺されるという状況はいい訳ないですよ。そんなことを思いながら去年今年とGROUND
ANGELを作りました。それだけ感じてやってください。広河さんどうもありがとうございました。
(広河氏、退場)
【結び】
イ:広河さんとはいつも深いお話をされるのですか。
石井:僕はショウマンで、ショウを作ってみんなが現実を忘れて帰ってくれればいいという商売なんですね。でも広河さんは現実を伝える人なんですね。でも2人に共通してるのは素晴らしい未来を作りたいということだと思うんですよ。血が流れたり子供が死んでいくような時代は作りたくないっていう。それは毎日そういう話をしなくても広河さんを見ていればわかる、広河さんも僕を見ていればたぶんわかる、そういうことだと思うんですね。だから夢と作る現実を伝えるという全然違う仕事だけれども、ここにある根は同じだと思います。
イ:まもなくクリスマスを迎えるわけですが。
石井:クリスマスまでコンサートなんでコンサートがクリスマスになりますね。来年楽しいコンサートやってみたいなと準備してるんですけど。
「ばっかでぇす」ってやるのはいつもやってることだからいいけど、ほんとになんか起こっちゃうとできなくなっちゃうんですよ。もし自衛隊が300人死んでごらんなさい、そんなことできないですよ。だからこそ平和であることが大切なんですよ。
ものを作っている人間がなにが一番たいせつかというと、作れる時間と、それを穏やかな目で見てくれる人たちがいるということなんですよ。それがなければつくれないんですよ。そのために一番大切なのは平和ってことですよね。だから俺は自分のためにやってるんですよ。そう思うんですよね。ひどいこと起こらないで欲しいですよね。
一番最初に、穏やかな気分になれる時間たいせつですよね。戦時中にアートヌードですっていったって、誰も見てくれないですよね。
僕はね、今日石井竜也が話をしているということじゃなくて、みんなの代弁をしているんだと思いますよ、きっとみんなと思ってるのと同じだと思う。同じこと考えていると思う。
ちゃんと生活している人だから、みんな同じ不安を感じているんだと思うんです。だからみんなのことをいったに過ぎないと思いますよ。
イ:平和に対して鈍くなっている私たちにメッセージを。
石井:エンジェルじゃなくて、ここにいる人たちみんながお父さんとお母さんにとってのエンジェルだったんですよ。…(間)…たいせつにしてください。
"DREAM OF LOVE"が流れるなか、石井氏は退場。90分にもわたる濃密な時間が幕を下ろした。
|