心のエネルギーと天源術

 中国から伝わった人間の性格学に天源術というものがあります。人間の気質を12に分類したものですが、これを徳川家康の指南役の天海僧正が研究し、また、新井白石や貝原益軒なども研究したと云われています。ひとつの流れとして、天海僧正から葛城昇斎(カツラギショウサイ)そして奥野南ト(オクノナント)に伝えられ、さらに横山丸三(ヨコヤママルミツ)に伝えられた研究があります。 横山丸三は、この心の法則をいかし、性格の改善まで研究し、淘宮術(トウキュウジュツ)の祖として淘祖と呼ばれています。
 天源術と淘宮術を心理カウンセラーの広瀬米夫氏が、自らの実践とカウンセラーの経験を通して、深く研究し、「心のクセ」や「心を開く法」という本を著しました。ここではその本の中の12の心のエネルギーについて述べてみたいと思います。

  どの心のエネルギーを強く持っているかを知る診断基準箇条書

  (1)噴火山式のエネルギー(天源術の「奮気」)
 1,気が強く、短気ですぐ争いを起こす。2,怒気を表に現し、相手に威圧感を与える。
 3,困難なことに立ち向かう勇気がある。4,強い者に挑戦したくなる。義侠心がある。。
 5,つっかかるような言い方をし、とげのある言葉を平気で使って、相手を傷つける。
 6,スポーツや祭り、肉体労働など体ごとぶつかっていくようなことに、はりあいを感じる、
 7,決断力、実行力があり、多くの場面でリーダーシップを発揮する。親分肌の人も多い。
 8,自暴自棄になり、何もかもぶちこわしたくなる気持を起こす。仕事等を投げ出すのも早い。
 9,尊大、傍若無人、傲慢不遜。10,怒りを爆発させたあとはスカッとした感じがする。

    (2)人にさからうエネルギー(天源術の「煉気」)
 1,ねばり強く努力する。2,やせ我慢する事が多い。3,意地悪な面がある。4,怒りを内攻させる。
 5,家族や会社での部下など、自分の身内と思う者をしつけたがる。外づらが良く、内づらが悪い。
 6,人の親切、好意に、感謝の気持ちよりも不平不満が出て、すなおに受けず、執拗に拒否する。
 7,けちをつける。嫌みを言う。ひねくれる。相手を批判的に見て、人を褒めることは少ない。
 8,義理堅く、几帳面である。考えの枠組みが狭い。応用もきかず、融通性もない。雅量も乏しい。
 9,組織力が強く、整然たる理論を組み立てていく。大義名分を振りかざし、理屈っぽく反論する。
 10,さからうことによって自分の存在を主張する。怒りを爆発させた時は、その後もスカッとしない。

  (3)弱気のエネルギー(天源術の「老気」)
 1,慈悲心、同情心に富み、人や動物に優しく接する。2,考えが緻密、細かいことに気がつく。
 3,何事にも、慎重、謙虚で正直、親切丁寧である。4,万事に迷い、後悔と取り越し苦労が多い。
 5,議論とか交渉ごとの時、言いたいことが言えず、後ではがゆい思いをする。
 6,何事でも引っこみ思案に判断し、必要以上の遠慮をする。くよくよする。決断力が弱い。
 7,不安や心配事が出てくると、アッという間に心全体を占めてしまう。
 8,済んでしまった失敗などがしこりとなって頭にこびりつき、払っても払っても追っかけるように襲ってくる。
 9,潔癖な面をもち、良い意味でも悪い意味でも、いい加減にすますことができない。

  (4)焦点のしぼれないエネルギー(天源術の「豊気」)
 1,悠々として慌てない、気長である。2,争うことが嫌いで、寛容である。3,優柔不断。
 4,用事をてきぱきと処理するのが苦手、ほったらかしにすることも多い。5,余計な気を使わない。
 6,従順であり、人の言うことを素直に聞いているが、聞き漏らしをしている部分がかなり多い。
 7,人まかせ、なりゆきまかせで、相手に手ごたえの乏しさ、頼りなさを感じさせる。
 8,おっとり、のんびりで、いま簡単にできることでも軽い気持で先に延ばす。
 9,計画などの見通しがつくとどうでも良い気持になる。最後の肝心な点がキュッと締まっていない。
 10,考えるともなく考えている状態を、何日間も続けることができ、すばらしいアイディアがひらめく。

  (5)知的に遠心力の強いエネルギー(天源術の「堕気」)
 1,観察力があり、物や人の有効利用など、工夫したり、知恵を働かせる。
 2,人の気持ちを推し量り、如才なくものごとをとりまとめ、仲裁的手腕を発揮する。
 3,考え方が柔らかく、既成概念にしばられないため、次々とアイデアが浮かぶ。
 4,考えのめぐらし方に一つの傾向をもち。考えをめぐらすことを楽しむ。
 5,外部のものをどうするか、相手をあやつるなど、かけひき、策略、謀略にはしる。
 6,他人の弱点を見抜いてつけこむ。自分の過失をごまかして、他人になすりつける。
 7,心配事が頭にこびりつく人は、このエネルギーの思考形式がカラ回りすると、非常に苦しむ。

(6)「意思」を突き上げるエネルギー(天源術の「実気」)
 1,てきぱきと仕事をすすめ、実効力がある。2,人に相談しないで物事を決めてしまう。
 3,手っ取り早いことが好きで、理屈や長話はきらい。4,率直で一途、思い切りがよい。
 5,せっかちで、こうしたいと思ったことが実行できないと、気持が安定しない。
 6、人の思惑を気にしないので、とんでもない一人決め、一人合点をしていることがある。
 7,意思伝達が荒っぽい、ぶっきらぼう。8,竹を割ったような性格といわれる。
 9,プロセスよりも結論、要点、結果を必要以上に重要視、何ごとにおいても頂上を大切にする。
 10,他人の忠告を聞き入れない。時によっては一種のかたくなさを発揮する。

  (7)意思が遠心的に動くエネルギー(天源術の「緩気」)
 1,親切に人の世話をする。 2,おせっかいであわてん坊である。
 3,外部からの刺激に敏感に反応して動く、(誰かが何かを始めたと聞くと自分もしたくなる。)
 4,外の世界に広く浅くかかわっていくように、いつでも待機している。
 5,じっくり落ち着いていないで、フワフワしたものをかもしだす。
 6,頼まれたことは気軽に引き受け、応接もたくみ、臨機応変に処置できるので重宝がられる。
 7,細かいところも良く気がつき、率先実行という点から、ビジネスでは有能の評価を受ける
 8,世話好きな為、必要以上の荷物を背負い込み、グチを言いながら、心底では楽しんでいる。

  (8)流動的でないエネルギー(天源術の「結気」)
 1,謙虚、ルールを守り、でたらめをしない。2,無口で引っ込み思案。用心深い。
 3,技術を習得するときは時間がかかっても、基本をマスターし確実に覚える。
 4、意思堅固にして持続力が強い。5、人みしりをし、人との接触を最小限にとどめている。
 6、腰が重い(なかなか腰を上げない)、しなければならないことを「気が重く」考えてしまう。
 7,物忘れをし、悪気がなく約束をすっぽかす。8,自分の好きなことなどに凝り性を発揮する。
 9,頑固一徹、偏屈的。一度言い出したことは絶対に引っ込めない。10,融通や機転がきかない。
 11,説明の中にわからないことがあると、そこにねばりつき、他のことを聞き漏らしたりする。

   (9)高みに開くエネルギー(天源術の「演気」)
 1,指揮統率する力がある。大局的判断にすぐれている。反面、細かいところに目が届かない。
 2,公憤を起こす。俺にまかせておけというような気持になる。部下を庇う。
 3,虚栄心が強く体裁を気にする。メンツにこだわってない袖を振る。タテマエを優先する。
 4,人に頭を下げるのがきらい。威張るくせがあり、自分より下だと思う者につっかかっていく。
 5,ものの言い方につやがなく、白黒はっきりつけすぎる。バケツからお茶をそそぐような言い方をする。
 6,質問に答えるときは、いかにも面倒くさそうな返答をする。人の忠告を聞かない。
 7,みんなと同じように手を汚すことを嫌う。順調にいかなくなると、他人がねたましくなる。

   (10)高みに閉ざすエネルギー(天源術の「止気」)
 1,無意識に自分は他人と違うと思っている。理由のない優越感をもって周囲の人を見下ろす。
 2,下品なことや極端なことが嫌い。優美、優雅、美しいもの、崇高なものなどへの憧れが強い。
 3,用意周到、志操堅固、向上心に富み、熱心に努力する。粘り強くて一芸に上達。
 4,ひとりよがりの方法で勉強する。5,我が道を追求し、独創的な仕事をする。
 6,なんであろうと型にはめられることを嫌う。人の指図を嫌う。他人の忠告を心から聞いてない。
 7,人の好き嫌いがはっきりしすぎる。8,怒っても怒りは表に現さず、沈黙する。
 9,順調にいかなくなると、順調な人、優れた人など自分の高さを脅かす人に激しく嫉妬する。

  (11)開放的なエネルギー(天源術の「合気」)
 1,親しみやすく社交的である。包容力があり、ユーモアにも富む、決断力もある。
 2,賑やかなことが好き、その人の存在が陽気な浮き浮きした雰囲気をその場にかもし出す。
 3,遊び好きで、ほしい物が我慢できず浪費する。4,飽き性、何事もやりっぱなしで締めくくりが悪い。
 5,調子にのりやすく、開けっぴろげで、洩らしてはいけない機密をしゃべったりし、秘密が守れない。
 6,悪気のない無頓着で、他人に迷惑をかけても平気。7,楽天的で、反省する気持が弱い。
 8,せっかく結ばれた人間関係でも、無意識におろそかにする。
 9,人生の浮き沈みが激しく楽観的な見方と絶望的な見方との往復。

   (12)いつくしみ育てるエネルギー(天源術の「滋気」)
 1,大儀名文より実利を重んじる。2,すべてにわたって目が行き届く。しめくくりがよい。
 3,心が順調な時は、所有的愛情でないやわらかさと、暖かさをもって行動する。
 4,勤勉で地味にコツコツと一事に精励する。粗衣粗食も、手を汚すことも厭わない。
 5,人との交際や派手なことが嫌いである。6,袖があってもふらず、義理人情も欠く。
 7,物や金に執着し、すべての判断において、物質本位の自分の打算、利害得失がつきまとう。
 8,なんとなく陰気な雰囲気をかもし出す。順調にいかなくなると、憂鬱か、卑屈になりやすい。
 9,すべての物ごとが、悲観的にしか見えなくなり、ひとりで悲観的な世界に沈み込んでいき苦しむ。

*心の病と心のエネルギーの関係をみてみると、強迫性障害や神経症を生じさせる中心になっているのは弱気のエネルギーであり、鬱病は人にさからうエネルギーが中心になっており、双極性障害(躁鬱病)は開放的なエネルギーと、いつくしみ育てるエネルギーが中心になっているように思われる。

*抽象的な箇条書だけではわかりにくいと思いますので失礼ながら、先人また公人と云われる人々の名を具体的にあげて、どういう人が、どの気質、どの心のエネルギーをもっているかをあげてみたいと思います。

*噴火山式のエネルギー(天源術の「奮気」)
スポーツ選手や右翼関係者などもこのエネルギーをもっている人は多い。会った時に威圧感を感じさせるような人はこのエネルギーが強いと思われる。まさに肉食系を感じさせる人達だ。体育会系と言われ、上の者が言ったら理屈ぬきで従うような人事関係の組織は、このエネルギーの特徴を強く出していると考えられる。このエネルギーを強く感じさせる人は

元スポーツ選手では、楽天監督の星野仙一氏、江夏豊氏、元横綱の朝昇竜氏、政治家で言えば、小沢一郎氏、石原慎太郎氏、亀井静香氏、元政治家では浜田幸一氏、故梶山静六氏、故金丸信氏、俳優では梅宮達夫氏、故若山富三郎氏、故勝新太郎氏、タレントでは北野たけし氏、とんねるずの石橋貴明氏、ダウンタウンの浜田雅功氏、その他では、元読売新聞社社長の渡辺恒雄氏

*人にさからうエネルギー(天源術の「煉気」)
学者、左翼過激派などにもこのエネルギーをもっている人は多い。努力家で、秀才もこのエネルギーが強い人が多い。しかし、考えの枠組みがかたい、森鴎外も良くも悪くもこのエネルギーが強かった。優秀な学者でありながら、かっけが麦飯で治ることを認めず、何万人もの病死者をだした。人間関係は不得意でも、法則を相手にする工学的なことを好み、成功している人も多い。
このエネルギーを強く持っている人は

元スポーツ選手では、中日監督の落合博満氏、元楽天監督の野村克也氏、マリナーズのイチロー選手、政治家では、官房長官の枝野幸男氏、元官房長官の仙石由人氏、小泉純一郎氏、故橋本龍太郎氏、故宮沢喜一氏、学者ではノーベル賞受賞者の益川敏英氏、早稲田大学の大槻教授、タレントではピーコ氏、評論家の立花隆氏、女性では、デビ夫人、女優では、田中裕子氏、故川島なおみ氏、秋吉久美子氏、キャスターの小谷真生子氏、膳場貴子氏、元キャスターの渡辺真理氏、タレントの光浦靖子氏、先人では上杉謙信、清少納言、大村益次郎、ニュートン、またフランス革命の時、恐怖政治を行ったロペスピエール(しかし同志のダントンは噴火山式エネルギーが強かった)

*焦点のしぼれないエネルギー(天源術の「豊気」)
威圧感をまったく感じさせず、癒し系、天然系などと言われ、「ほんわか」したものを感じさせる人はこのエネルギーを持っている人が多い。細かい仕事をてきぱきと処理するのは、あまり得意ではなく、人にさからうことは少なく、なりゆきに従順である。優柔不断と思われているが、思考形式がゆっくり長く考えるようにはたらくので即断即決が苦手、空想好きな人も多い。

元スポーツ選手では、元巨人監督の長島茂雄氏、その息子の長島一茂氏、西武の石井投手、タレントでは萩本欽一氏、蛭子能収氏、芸人ではサバンナの八木氏、学者では北野大氏(北野たけし氏の兄)、女性では、歌手の八代亜紀氏、タレントの浅田美代子氏、安めぐみ氏、灰田しょう子氏、檀ふみ氏、元キャスターの中井美穂氏、八木亜希子氏

*どの心のエネルギーを強く持っているかを知る診断基準箇条書は、先に述べた天源術情報、広瀬米夫著の「心のクセ」「心を開く法」、私自身の人間観察、経験をもとにしております。