上野公園 
上野公園は、黄葉したイチョウが、朝の陽光にまぶしく輝いていた。ケヤキの方
は、すでに紅葉を終え、茶褐色の葉を半分落としていた。マチコと支折と夏美の三
人は、イチョウとケヤキの落ち葉の降り積もった中を、東京国立博物館の方へ歩い
ていた。サーッと一陣の強い風が吹き渡って来ると、降り積もった落ち葉が波のよ
うにうねり、浮き上がり、大きく移動していく．．．
「ええ．．．こんにちわ、マチコです！私の企画した都内小旅行の１つ、博物館の見
学に来ています。支折と夏美と私の３人で来ました。響子は、ヒトゲノム関連の仕
事が忙しく、今回は一緒に来れませんでした．．．」
「前回の“皇室の秘宝展”も、この東京国立博物館の平成館だったわね、」支折が
マチコに言った。「この前は、響子と一緒に来たのよ｣
「うーん、そうだったわね、｣
「紅葉がきれいねえ．．．今日が一番きれいなんじゃないかしら！」夏美が言った。
「うん、」マチコも、コートのポケットに両手を突っ込み、晩秋の青空を見上げた。
中国・国宝展
「どう思う、夏美、？」人波に押されながら、支折が夏美に言った。
「うん．．．私達シロウトには、これだけ見ても、古代中国の全体像は見えてこない
わねえ．．．｣
「そうなのよね．．．でも、こうやって少しづつ知識をためていけば、そのうちに幾ら
かづつ、広い歴史が見えてくると思うの．．．」
「高杉塾長は、禅宗の栄えた唐の時代には詳しいと思うのよ。でも、この時代の仏
像って、こんなものだったのかしら？支折は、仏像はよく見るの？」
支折は、黙って首を振った。
「でも．．．こうやって一部分を切り出してくると、迫力がなくなるわね」
「確かにね．．．アレ、マチコは？」
「アラ．．．何処へいったのかしら？」
「うーん．．．そのうちに現れるわよ｣
「そうよね、」
インダス文明展
「インダス文明の遺物は、細かいわねえ」マチコが、首をひねって夏美に言った。
「そうそう、仏像なんかも小さいわね。神官王だったかしら、あの有名な像は。せめ
て、実物大ぐらいはあると思っていたのよ。でも、両手に載るぐらいよね｣
「でもさあ、細かいことは得意だったみたいね｣支折が言った。「目が良かったのか
しら、｣
「インダス文明ですごいのは、とにかく巨大な計画された都市を作ったことよ」夏美
が言った。「そして、平和的な文明だったと言うことね｣
「でも、今日１番感動したのはさあ、｣マチコが言った。「上野公園の紅葉よね｣
「うーん、それは言えるわねえ、｣支折が言った。
夏美は、ニッコリと笑ってうなづいた。
＜見学当日／即、ホット・アップロードです．．．＞
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上野公園／２０００．１１．２８／１０：３０に撮影＞