最終更新日: 2003/09/13
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100話を越えてからメインキャラの家族が初登場!ということは、それほど多くないのではないかと思います。 初登場までの期間が長いほど、この場合はジダマというキャラクターの人間像ができあがっていってしまうため、その家族はジダマがこのような性格になっていることと矛盾しない設定でなくてはなりません。 それに、今まで全く登場しなかったという理由も必要です。
雪室さんの提示した「ジダマのおかあさん」像が、某国に拉致監禁されていたのでなければ、キャリアウーマンになるのは必然的です。 ジダマがおばあちゃんっ子だったのは、家事や子育てをすっかりおばあちゃん任せにしていたためだったのです。 さらに、親子が似ているのは『あずきちゃん』の基本。 ジダマの場合、おばあちゃんとも双子のような性格らしいですが、このマイペースで仕事好きな母親とも、よく似ているのではないでしょうか。
おそらく、誰にとっても納得のキャラクター設定であったと思います。 また、キャラクターデザインもいいですね。 もっと早くから登場して、活躍してほしかったです。
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この母親が、急に母親業に目覚めた、というのがこのストーリーの出発点なのですが、脚本はひとひねりして「アオイさん」って誰?という謎と誤解を解き明かす構成になっています。 「誤解」を基に登場人物が右往左往するのは、雪室さんのお得意のパターンのひとつだと言えると思います。 というか、『あずきちゃん』という作品自体が、多くの誤解と妄想で成り立っていると言っても過言ではないでしょう。
それにしても、「アオイさん」に関する誤解はものすごく精密に書かれています。 初めてこの話を見るときは、ケンちゃんたちといっしょに誤解に基づいて見るわけですが、今あえてその気持ちになって見直してみても、全く不自然なところがありません。 わざとらしく誤解を助長するような不自然なセリフや行動が、全くないのです。 それでいて、二度目以降、「葵さん」として作品を見ても、ストーリーは完全に一貫しています。 自分も友達の親の名前なんて、本当に一切知りませんでしたし、よく考えてみれば今の友人の親の名前も全然わかりません。(^^; ジダマが「葵さん」に妙にナーバスになっている様子も、葵さんの気まぐれで児玉家(特におばあちゃん)がメチャクチャになったことを思えば、まずまず納得できるのではないでしょうか。
こういった「誤解」モノだと二回以上見ると粗があったり、つまらなかったりすることが多いですが、そんなことは一切感じない、精密に書かれた脚本であると思うのです。 ビデオもないような時代から、決して手抜きをしない脚本を残してきた雪室さんにとっては当然のことなのでしょうが。
さて、ここで作品の構成を簡単に見てみたいと思います。下の表に簡単に構成をまとめてみました。
A | ジダマとおばあちゃんの関係がなんだか変! | ![]() |
国語の授業「早起きは三文の得」 ヨーコ「年寄りっ子は三文安い」 ↓ ジダマ「あたしだって気をつけてるのよ、おばあちゃん、おばあちゃんって言わないように」 あずき「最近ジダマ、おばあちゃんの話し相手になってないのかな?」 |
B | ジダマがアオイさんの家に養子に? | ![]() |
ケン「聞いて驚くなよ、ジダマが養子に行くらしいぞ」「みどりの将来を考えて、アオイさんに任せる事にしたって」「ばあちゃん涙ボロボロこぼしちゃってよ」 ↓ 葵さん、学校に登場、怒りのジダマ「何も聞かないで、今は答えたくないの」 ↓ だいず「まどかちゃんの横にいるのは、看護婦さんのアオイさん」 あずき「ジダマのお母さんの友達だったのか」 勇之助の母「大事な一人娘を養女に出したりするかしらね?」 ↓ あずき「あたし、直接ジダマに聞いてみる」 |
C | 実は急に母親に目覚めてしまったジダマの母 | ![]() |
葵「まー、よくあたしの名前を覚えててくれたわねえ、あずきちゃん」「かおるちゃんもすっかり大きくなっちゃって」 あずき「あの、あの前にお会いしましたっけ?」 ↓ 恐怖のすき焼き ジダマ「お母さんの名前なんてみんな意外と知らないんじゃない?」「急に母親に目覚めちゃって困ってんの」 葵「これから修行して、みどりの立派な母親になってみせるわ」 ↓ かおる「よかった、ジダマが養子に行くんじゃなくて」 ジダマ「養子?誰よそんなこと言ったの」 |
D | 自立を目指しはじめたジダマのおばあちゃん | ![]() |
ジダマ「よくも変なデマを飛ばしてくれたわね!」 ↓ ヨーコ「児玉さんのおばあちゃんがうちに来るって言うのよ」 ジダマ「おばあちゃんもようやく自立の道を歩み始めたってことね」 |
E | 葵さんを慕う病院の子供たち | ![]() |
病院の子「葵さんいますか?」「お見舞いに来たんだ、ぼく」 ↓ あずき「お母さん、家にいる時の顔と全然違うわね」 ジダマ「あれがほんとの顔なのよ」 ↓ あずきの父「病院へ着いたら、小児科病棟の子供たちが、葵さん葵さんて大騒ぎだったよ」「あれじゃ簡単にやめられんだろうな」 |
F | 葵さんの本当の気持ち | ![]() |
葵「私ったら、肝心な自分の子供には母親らしいこと何一つしてないって」 ジダマ「あたしはおばあちゃんがいるからいいの、本当に葵さんを必要としてるのはあの子たちなんだから」 |
メインストーリーとしては、
B:起 → C:承 → E:転 → F:結となっていると思うのですが、ここにジダマのおばあちゃんに関するエピソードである、AとDが加わっています。 これは本来、ジダマとおばあちゃんの関係なのですが、ヨーコちゃんがからむことで、大変面白いアクセントになっています。 そして、BからCにかけてが、上に書いたように「誤解」をベースとした複線的展開となっているわけです。
いつものことではありますが、雪室さんらしい、凝った構成になっているわけでした。