セル画の劣化実験

最終更新日: 2020/08/23

 2015年の夏にセル画のコレクションの一部がビネガーシンドロームで溶解してしまいました。 これはいかん!ということで、その後冷却機能のついたワインセラーを購入。 除湿剤を併用することで、概ね温度20℃、相対湿度50%の環境で保管することが可能になりました。

 一方で全てのセル画が入りきらなかったため、ちゃんと保管できないセル画は処分してしまいました。 貴重な文化遺産だとは思いますが、市場価値がゼロなのでやむを得ません。 その分、お気に入りのセル画だけは死ぬまでちゃんとした状態で保管したいと思っています。

 保存対象外のセル画と、既に酢酸臭の出ているセル画を使って、セル画の劣化実験を試みました。 本当は、温湿度を条件振りして加速実験したいのですが、そんな環境は準備できません。 条件の悪い場所(私の部屋ですが)に長期間さらして、経時変化をモニタするという程度です。 3年以上経過して、ついにビネガーシンドローム発生が見られたので、レポートします。

番号保存条件2017年7月2020年8月約3年間での変化
1セル1枚のみ、室内光暴露トレス線が消失、修正トレス線のみ残存
2酢酸臭のあるセル、セル1枚のみ、室内光暴露トレス線が消失、修正トレス線・色トレス線のみ残存
3セル1枚のみ、遮光ほぼ変化無し
4セル1枚+動画用紙、遮光ほぼ変化無し
5セル1枚+中性上質紙、遮光ほぼ変化無し
6セル2枚重ね、遮光ほぼ変化無し
7セル1枚のみ、水で濡らして密封、遮光フィルム膨潤でしわしわになる(画像の色むらは、色変化ではなくフィルムの変形による)が、その後はほぼ変化無し
8酢酸臭のあるセル、セル2枚重ね、遮光徐々にしわが入り、ついにビネガーシンドローム発生、トレス線・塗色はあまり変化無し
9酢酸臭のあるセル、セル1枚のみ、遮光ほぼ変化無し

 セル画の履歴については、No. 1〜8は1996年頃の描画(25年もの)、No. 9のみは1981年頃の描画(40年もの)になり、いずれもマシントレスのセル画です。温湿度管理されずに保管されてきました。 本実験を行った部屋は、夏場は28℃前後、冬場は18℃前後で、南向きの窓際で、B4サイズのクリアファイルに入れた状態で置いておきました。

 結構悪条件にしたつもりだったのですが、3年くらいでは意外と劣化しないですね。実験結果からわかることとしては、

といったところです。 自分が今までに見たビネガーシンドロームのセル画は、全て複数枚重ねだったので、酢酸臭のする複数枚重ねセルは要注意と思っています。


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