不貞(不倫)を理由に奥さんから慰藉料を請求されている

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2015.5.11mf更新

弁護士河原崎弘

相談:不貞は自分の責任ではない

私は36歳、派遣社員です。派遣先の会社の上司に誘われ、交際し、愛情を持つようになり、肉体関係を持ち、6年経過しました。
私は、彼とは結婚できなくとも、子どもを産みたくて、彼の同意を得て、子どもを産みました。
出産前から、彼は、「認知する」言っていましたので、私が認知届の用紙を彼に渡しました。彼は認知届の用紙を背広のポケットに入れていたのですが、自宅で背広を着替えるときに、落してしまいました。彼の奥さんが、それを見付けて、私たちの関係を知るようになりました。
現在、彼の奥さんと彼のお母さんから私に何度も電話があり、私は、不倫と責められ、 1000 万円の慰謝料を請求されています。最近は無言電話も続いています。
奥さんから訴えられた場合、私が慰謝料を払うのでしょうか。 彼からは、いつも、「妻とはうまく行っていない」と聞かされていました。うまく行かないのは、夫婦の問題であり、私のせい(責任)ではないと思うのですが。
相談者は、弁護士会に電話をし、予約してから、法律相談を受けました。

回答:慰謝料支払い義務がある

(責任の有無)
夫婦の一方と肉体関係を持った第三者は、故意(相手に配偶者がいることを知っていた場合)または過失(相手に配偶者がいることを知らなかったが、容易に知ることができた場合)がある限り、誘惑して肉体関係を持ったかどうか、自然の愛情によったかに関わらず、損害賠償(慰謝料)義務があります(下記判決)。
相談者の場合、「妻とはうまく行っていない」との彼の言葉が真実であるとしても、彼と妻が同居している限り、婚姻生活は完全には破綻していない、従って、あなたに責任があるとの判決になるでしょう。法律では、婚姻関係にある妻は保護されますが、婚姻関係にない愛人は保護されないのです。
先進国では、不貞は夫婦間の問題であり、第三者は、責任を負わないとの法制度があります。アメリカの約半数の州がそうです(判例タイムズ385−116)。

(慰謝料金額)
婚姻関係の平穏は、第1次的には配偶者相互間の守操義務、協力義務によって維持されるべきものであり、不貞(不倫)についての主 たる責任は配偶者にあるというべきです。従って、彼の方の責任が大きく、あなたの責任は小さいです。しかし、あなたが、積極的に彼を誘った特別の事 情の存在する場合は、あなたの責任は大きいです(異論はあります)。
彼とあなたのどちらが積極的であったか、交際の期間、相談者が原因で彼の家庭が破綻した(離婚)か否かで違ってきます。
不貞行為が,原告ら夫婦が離婚した主たる原因とはいえないが、被告の不貞行為が離婚に至る重要な要因である場合の慰謝料は50万円とした判決があります。愛人に子供がいて、不貞が20年続いた場合、慰謝料を500万円とした判決もあります。慰謝料は、彼が離婚した場合(不貞により、婚姻関係が破綻した)は 150 万円〜 200 万円位、離婚しない場合は 50 万円 〜 200 万円位でしょう。
通常、愛人の方にも、「奥さんが、だんなを大事にしていなかったのが原因だ」などの言い分があります。しかし、それを露骨に言うと、訴訟(裁判)に発展することが多いです。そこで、妻の心に傷を付けたのは確かなのですから、誠意をもって謝罪する態度も重要でしょう。
この場合、あなたと彼は、共同不法行為者となり、あなたと彼は、奥さんに対し(不真正)連帯責任を負います(民法 719 条)。彼が妻に慰謝料を支払うと、その金額だけ妻はあなたに慰謝料を請求できなくなります。下記判決を参考にして下さい。

判例


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