弁護士選びに失敗した例
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2023.10.9mf更新
弁護士選び に失敗した原因は、通常、単純です。このような失敗をしないために、友人など冷静な第三者に相談しながら弁護士を選ぶ必要がありますね。以下に失敗例を挙げます。
弁護士に不当な行動があった場合は
弁護士会に対し
紛議調停の申立てを、弁護士に違法な行動があった場合は、
懲戒の申立てができます。-
単に有名だからとの理由で弁護士を選んだ
Aさんはゴルフ場のオーナーでした。借金はないのですが、12月から3月まではゴルフ場をオープンできず、赤字になっていました。会社には顧問弁護士がいます。今のうちに、会社を譲渡したいと思い、Aさんは業界で名前の売れているT弁護士に、着手金600万円を支払い、譲渡を依頼しました。
しかし、T弁護士は何もしてくれませんでした。
弁護士は、契約書を作るなどの法律的な業務をしますが、会社の譲渡先を探すのに適しているとは限りません。有名だからとの理由だけで事件を依頼するのは危険です。せっかく顧問弁護士がいるのですから、600万円を支払う前に身近にいる顧問弁護士に相談すべきでした。
有名だからとの理由で誠実でない弁護士を顧問に選んだ
週刊誌の記事によると、あるゴルフ場の経営者は、著名な弁護士 T を顧問弁護士として依頼しました。ところが、この弁護士は、自分の息子らを使って、(依頼人である)顧問先のゴルフ場に対して、訴訟を何度も起こさせて利益を得ていたのです。
週刊新潮平成15年1月23日号が、「ゴルフ場を泣かせる超大物弁護士の悪質な訴訟ビジネス」との見出しで、ある弁護士が、自分の息子や仲間を使ってゴルフ会員権を取得させ、預託金返還訴訟を提起させて暴利をむさぼり、また、自分が顧問弁護士を務めるゴルフ場会社に対しても預託金返還訴訟を提起させて背信行為を行ったとの記事を掲載しました。
これに対して、当該弁護士が、週刊新潮に対し、名誉毀損記事であるとして、2000万円の損害賠償と謝罪広告を求めて民事訴訟を提起しました。
裁判所は、「弁護士の訴訟活動を悪質な訴訟ビジネスと指摘し、弁護士法に違反する」旨の論評などを掲載した週刊誌の記事について、「それを真実と信じることに相当な理由があり、論評としての範囲を逸脱するものではない、名誉毀損による不法行為とは認められない」と判決しました(東京地裁平成16年6月2日判決:法律時報1866−70)。
ゴルフ場経営会社は、詐欺的手法で金を集めるところも多いです。このゴルフ場経営会社は、自分自身、顧問弁護士選びに失敗しています。この弁護士も、いずれ、弁護士会の懲戒処分を受ける可能性があります
(注)T 弁護士は、2006年12月、事件の相手方から、利益を得たとして、弁護士会で業務停止の懲戒処分を受けました(「自由と正義」2007年3月号)。
日本の事件を外国の弁護士に依頼
B子さんは日本生まれで日本に住んでいますが、国籍は外国です。東京で経営していた飲食店の明渡し裁判で負けました。B子さんは、裁判では、日本人が偽証したと、感じていました。
そこで、アメリカ大使館に行き、アメリカ人の弁護士の名簿を見せてもらい、アメリカ人のS弁護士(在日)に事件を依頼しました。B子さんはS弁護士に着手金100万円を支払いました。
B子さんは、日本人を動かすには、アメリカ人がよいと、思っていました。事実、S弁護士の秘書(アメリカ人)は、いつも、「日本人なんて、(自分たちが)強く言えば、言うことを聞くよ」と、言っていました。
しかし、S弁護士は、話を聞いただけで何もしてくれません。しかも、「1時間 3 万 5000 円で計算し、費用は 100 万円以上になっている」と、言い、着手金も返してくれません。B子さんは、弁護士事務所の前で座り込みもしました。その後、
B子さんは、弁護士会に紛議調停の申立をしましたが、S弁護士は、「受取ったお金は理由の如何を問わず返さない」との態度で、1円も返しませんでした。
S弁護士は、弁護士としての倫理感もない様子でした。S弁護士は、他の依頼人からも、紛議調停を申立てられていました。
S弁護士はアメリカで弁護士資格を取り、占領後の政策で日本で弁護士活動を許されている弁護士でした。S弁護士は日本法についての知識がなく、S弁護士に対し日本法について仕事を依頼するのは無理でした。
提携弁護士
Cさんは新聞の折り込みチラシを見て、行った貸金業者に紹介された弁護士に借金の整理を依頼しました。Cさんは、弁護士に毎月 10 万円を送金する約束をしました。
Cさんは約束通り送金できず、業者から督促が来て、給料の差押さえを受けました。
Cさんが、依頼をやめるため、書類の返還と、今まで支払ったお金の使途を尋ねましたが、弁護士からきちんとした回答がありません。この弁護士は、業者と組んだ 提携した弁護士 でした。
2000 年 10 月 1 日から弁護士も自由に広告できるようになりました。テレビ広告をしている法律事務所もあります。また、いつも新聞に求人広告を出している法律事務所もあります。これは求人のための広告ではなく、法律事務所宣伝のための求人広告です。通常の広告より、求人広告料金が安いからです。
弁護士広告を見て、すぐ依頼することは危険です。広告内容を鵜呑みにせず、法律相談を受け、この弁護士は
信頼できると判断できる場合のみ、依頼しましょう。
時間制の料金で訴訟を依頼した
D 子さん(医師)の夫が亡くなった後、亡夫の婚姻外の子供が認知を求めて訴えを提起し、判決で認知が認められました。子供は、D 子さんに対して、亡夫の遺産につき相続分を求める訴えを提起してきました。D 子さんは、亡夫の知人の弁護士に、この訴訟事件の処理を依頼しました。
この事務所は弁護士が大勢いて、立派なビルにありました。弁護士費用は時間制、1 時間 2 万 5000 円でした。D 子さんがこの事務所を選んだ理由は、亡夫の知人がいたことでしたが、立派なビルの中にある事務所であったことでも、安心していました。
裁判所が遠隔地でしたので、裁判所日当が必要で、弁護士費用はすぐ 600 万円を超えました。D子さんは資力があるので、支払いましたが、請求された弁護士費用に疑問を持つようになりました。
なお現在では、遠隔地の裁判の場合、原則として、弁護士の出頭を要せず、電話あるいはTeamsによる裁判ができ、費用は高額になりません。
弁護士費用を時間制( 1 時間 1 万円ないし 8 万円くらい)で計算すると、裁判の場合、勝ち負けに関係なく、弁護士費用が多額になることがあります。時間制で訴訟を依頼する場合は、事件の大小に関係なく費用が多額になることを覚悟する必要があります。多額な費用を負担できないなら、依頼者の受ける 経済的利益の額で弁護士費用を計算 (ただし、弁護士の作業は標準的なものであり、何でもするわけではない)してくれる弁護士(日本には大勢います)に依頼する必要があります。
D子さんは若い弁護士を食事に誘い、その席で事件について話を聞いていましたので、この時間も請求されていました。これはやむをえないでしょう。弁護士に豪華な食事を提供して、法律相談料を無料にさせることは無理です。
D子さん(医師)は資力がありましたので、不満を抱きつつも、弁護士費用を支払いました。この例は、依頼人もわかって依頼していますから、弁護士選びに失敗したとは言えないかもしれません。
時間制の弁護士費用を採用している事務所の依頼人は、主に大企業です。ここでは、得られる経済的利益より、弁護士費用の方が高額なこともあります。法律事務所も、事務所の建物、スタッフに高い費用を投下していますので、弁護士費用も、自然に高くなります。安い費用で事件を引き受けると赤字になります。安く引き受けるときは、事務所の承認を必要とするところもあります。日本は、自由な社会ですから、弁護士に全ての作業をやってもらいたいため、依頼人がこのような法律事務所を選ぶことは自由です。
根拠もないのに、自信満々で大きなことを言う弁護士
Tさんは、いくつかの会社を持っています。その中には、C金融機関もありました。TさんはC金融機関の役員でした。Yさんが社長をしている不動産会社もありました。このグループ会社は、不動産を持っていますが、バブルがはじけ、多くの会社は債務超過で苦しんでいました。
Tさんは、そこで、不動産を、Yさんが社長をしている不動産会社に売り、その売買代金をC金融機関に融資させることを計画しました。
Tさんは、この考えを、中学時代の友人のK弁護士(注 後に、弁護士会の会長になりました)に相談しました。K弁護士は、会社関係について詳しいとマスコミにも登場し、有名でした。Tさんは、グループ会社の社長を集めて会議をしました。K弁護士は、Tさん、Yさん、他の社長の前で、「不動産鑑定士に鑑定させ、その値段で売買すればOK」と、自信満万な態度で言いました。
このような場合、形式的に、不動産鑑定士の鑑定がついていたから大丈夫とは言えません。実質的に、売買価格が適正であるかが問題となります。多くの場合、不動産鑑定士は、顧客に迎合した鑑定を行います。不動産鑑定士は、Tさんの意図を理解し、不動産を時価より高い価格で評価しました。不動産は時価より高い価格で売買されました。
その結果、Tさんは、C金融機関に不正に融資をさせ、損害を与えた(背任罪)として逮捕されました。Tさんは、不動産売買を利用して、C金融機関から金を引き出したのです。当然、グループ会社の社長達は、Yさんを含めて共犯として逮捕されました。逮捕の後に長期間の勾留、刑事裁判、(社長たちは融資の保証人でしたので)整理回収銀行(倒産した銀行の受け皿銀行)からの(自宅の)差押さえが待っていました。この社長達は、皆、雇われ(サラリーマン)社長です。
刑事裁判で、K弁護士は被告人側の証人になりました。K弁護士は、検事の尋問に対して、「不動産鑑定士の鑑定があるんだから、背任じゃない。あんたは何を考えているんだ」と反論していました。
このような、押しが強く、独自の考えを持っている弁護士を好む依頼者は多いです。しかし、依頼者は、先の見通しについて、自分でも考えて行動する必要がありますね。依頼者も、弁護士に頼るだけでなく、
自分の行動が客観的に法律に従っているか、自分でも考える必要があります。
Tさんのように、違法なことをおこなっても、大きく儲けようと考える人は別ですが、法律に従って生きようとする人にとって、K弁護士はよい弁護士ではありません。普通の弁護士だったら、「鑑定がおかしい。背任罪にならないように気をつけて」と注意するような事例でした。
登録2008.11.28