公訴時効の完成と加害者の民事責任

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2024.4.8mf更新
弁護士河原崎弘

質問:公訴時効の完成

私の兄は、11 年前に、夜間、車にひき逃げされ亡くなりました。犯人は逃走して捕まりませんでした。
最近、隣町の人が犯人として名乗り出て、警察も調べましたところ、真犯人だとわかりました。
しかし、11 年を経過し、公訴時効が完成しているので、逮捕も裁判もできないと聞きました。遺族としては納得できません。どうしたらよいでしょうか。

弁護士の回答:民事の損害賠償請求ができる

犯罪の 公訴時効 が完成すると検察官は犯罪者を起訴できなくなり、その結果犯罪者を処罰できなくなります。公訴時効期間は 刑事訴訟法250条 に規定されています。
自動車運転(従来は、業務上)過失致死事件の法定刑は「 7 年以下の懲役叉は禁固」ですから(刑法 211 条)、公訴時効期間は 5 年です(刑事訴訟法250条2項5号) 。
5 年を経過すると、逮捕も、裁判もできません。遺族としては悔しいお気持ちでしょう。犯人を逮捕していなくとも、名前がわかっていれば、起訴して公訴時効を中断できますが、日本の検察官はそのようなこと(時効中断のための起訴)をしません(下記判例を参照)。
不法行為に基づく民事の 損害賠償請求権の時効消滅 期間は、被害者などが、損害および加害者を知ったときから 3 年、あるいは、不法行為時から 20 年です(民法 724 条)。
あなたは、最近、加害者を知ったのであり知ってから 3 年を経過していませんし、不法行為時から 20 年経過していませんので、法定相続人(民法 887 条 - 890 条 )は民事で損害賠償請求をすることができます。
判例もあります。
請求できる金額はお兄さんの収入にもよりますが、 5000 万円前後でしょう。正確な金額を算出するためには 損害金計算機 をお使い下さい。

判例