包括根保証の責任制限
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Last updated 2023.1.13mf
相談
私は会社を経営しています。5年前、取引先の社長に頼まれて、その社長の会社(不動産会社)の取締役になりました。取締役は名前を貸しただけです。
その後、私は、その会社の銀行取引の連帯保証人になっています。契約書では、「・・会社が、・・・銀行に対して現在及び将来負担する一切の債務を連帯保証する」となっています。保証人は、その社長と私です。保証には、期間の制限も、金額の制限もありません。
その会社は、先月、倒産しました。銀行から私に5000万円の請求がきております。どうしたらよいでしょうか。
相談者は、市役所にある無料法律相談所 市役所にある無料法律相談所で弁護士に相談しました。
回答
継続的契約から発生する債務一切を保証する、包括根保証は、保証の期間や極度額を限定していません。責任が無制限ですので、重く、過酷です。特に根保証人が第三者である場合は、そうです。
判例は、包括根保証を有効と認めています。他方、判例において、包括根保証人の解約権を認 める外、契約を無効としたり、詐欺を理由とする契約取消しを認めたり、信義則により、保証人に対する請求を認めなかったり、保証人の責任を合理的な範囲に制限する傾向があります。
まず、弁護士を依頼し、あなたのケースで、責任を制限する事由がないか、調べてもらってください。裁判になっても諦めないことです。銀行も、あなたの事情は考慮するし、包括根保証に対し、裁判所が厳しいことはわかっていますので、ある程度の譲歩はするでしょう。
下に包括根保証人の責任を制限する判例を掲げておきます。
平成16年12月1日公布された「民法の一部を改正する法律(平成17年4月1日施行)」により、貸金などで、極度額を決めない包括根保証は無効となります(民法465条の2第2項、法人が保証人である場合は除く)。
法律
(個人根保証契約の保証人の責任等)
第465条の2 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。
。
判決
- 東京高裁平成14年1月23日判決(判例時報1788号43頁)
連帯保証人は、監査役であるが、会社の経営に関与せず、保証責任に見合う報酬を受取っていなかった。この場合、静岡商銀信用組合の融資会社の連帯保証人に対する履行請求について、融資と連帯保証における同組合と連帯保証人との関係等に徴し、信義則上、融資金の4割の限度に制限すべきであるとされた(なお、1審では、3割に制限すべしとの判決があった)。
- 東京地裁平成12年9月8日判決(金融法務事情1608号47頁)
以上の認定によれば、被告が期限や極度額のない包括根保証をしてから、本訴の融資が行われるまでに一六年以上の長期間が経過
しており、さらに融資から本訴までに六年以上が経過していること、この間に日本ではいわゆるバブル経済とその崩壊があり、被
告が保証した当時の融資額は約一億一二六五万円であったが、本訴の貸付当時は三億円の追加融資が行われるまでに取引規模が拡
大していたこと、しかしその後に主債務者が経済的に破綻し、競売という事態にまで至っていること、現在の債務は、競売による
回収を経ても残元本の二億〇二二一万円余が残っている他、右残元本を上回る多額の遅延損害金も発生していることが認められる。
このような融資や保証の経緯、保証に際し認識すべき負担額、その後の融資と回収の推移、この間の経済情勢の変化、現在におけ
る多額の遅延損害金の存在、その他本件で窺える一切の事情を斟酌すると、包括根保証人である被告の責任額は、信義則により、
請求額の三分の一である残元本六七四〇万五九七三円とこれに対する遅延損害金の限度(弁論終結時において合計一億五三〇〇万
円を上回る)で認めるのが相当である。被告の主張(保証金額の制限)は、右の限度で認められる
- 東京地裁平成12年1月27日判決(判例時報1725号148頁)
商工ローン業者から融資を受けた者のために500万円を限度とする根保証をした者につき、信義則上、保証責任の限度を100万円に限定した。
- 大阪地裁平成11年6月14日判決(判例タイムズ1035号176頁)
取引先の信用金庫取引を保証したが、その後取引がなくなった。とろろが、保証から21年が経過した時点で、保証債務の履行を請求されたケースでは、連帯保証人に対する包括根保証契約に基づく履行請求が信義則上許されないとされた。
- 大阪高裁平成10年1月13日判決(金融法務事情1516号38頁)
包括根保証契約締結時、主たる債務者には、既に債務が5億円あり、債務者は返済できる状況ではなかったのに、金融期間はこれを説明しなかった。この場合、
信用金庫取引上の債務について包括根保証人の責任を、保証した時以降に発生した債務を合理的な範囲と制限した。その債務は弁済されているので、保証人に責任はないとした。
- 東京地裁昭和60年10月31日判決(判例時報1207号72頁)
協同組合の退任代表理事がしたいわゆる包括根保証の責任が債務額のほぼ5割まで制限した。
- 東京高裁昭和60年10月15日判決(判例時報1173号63頁)
包括根保証人に対する請求が1500万円を限度として認められた。
2004.10.15