相談:絵の所有権
私は、ある有名な画家(日本人。1998年に死亡)が描いた絵を所有しています。この絵を写真にとって、私のホームページの背景画として使いたいのですが、法律上は許されますか。弁護士からの回答:絵の所有権と著作権は別
著作物の所有権と著作権は区別されます。 あなたは著作物(絵)の所有権を持っていますが、著作権は持っていません。著作権者は亡くなっていますので、その相続人が著作権を持っています。
従って、この絵を写真にとって、あなたのホームページの背景画として使うことは著作権者の承諾が必要です。この場合は、相続人の承諾が必要です。無断で使えば著作権侵害となります。
著作権の保護期間は、原則として、著作者の死後70年です(著作権法51条2項)。別の言葉で言えば、著作者の死後70年経過したものは自由に使えることになります。
下の判例は、ピカソの絵画展で、主催者が、(絵画の解説をした)小冊子および絵画展の入場券にピカソの絵を使ったところ、ピカソの著作権承継人から、使用差止め請求がされた事件の判決です。
裁判所は、小冊子にも、入場券にも無断で絵を複製できないと判断し、差止めを認めています。 著作物の種類ごとの保護期間は次の通りです。
著作物 保護期間 著作権法 実名の著作物 死後70年 51条2項 無名、変名(ペンネーム)の著作物 発表後70年 52条1項 団体名義の著作物 公表後70年 53条1項 映画の著作物 公表後70年
創作後70年以内に公表されなかったときは、創作後70年54条1項 共同著作物の保護期間は、共同著作者のうち 最後に死亡した著作者の死亡時点から70年 51条2項かっこ書き 平成30年12月30日以前にすでに著作権が切れた著作物 保護期間は終了 外国人の著作物 58条
相互主義日本人の著作物 相互主義 判例
- 東京地方裁判所平成22年5月19日判決
鑑定書に添付された127o×152oの鮮明なカラー印刷で縮小コピー(作品の1/6、1/4縮小)が、作品と同じ感動を伝えられるため、著作権侵害に当たる。損害は鑑定証書作成料相当の6万円を認めた。- 東京地方裁判所平成10年2月20日判決
四 抗弁2(解説又は紹介目的の小冊子)について
1 著作権法四七条所定の観覧者のために美術の著作物又は写真の著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子とは、観 覧者のために展示された著作物を解説又は紹介することを目的とする小型のカタログ、目録又は図録等を意味するものであり、展 示された原作品を鑑賞しようとする観覧者のために著作物の解説又は紹介をすることを目的とするものであるから、掲載される作 品の複製の質が複製自体の鑑賞を目的とするものではなく、展示された原作品と解説又は紹介との対応関係を明らかにする程度の ものであることを前提としているものと解され、たとえ、観覧者に頒布されるものであっても、紙質、判型、作品の複製態様等を 総合して、複製された作品の鑑賞用の図書として販売されているものと同様の価値を有するものは、同条所定の小冊子に含まれな いと解するのが相当である。
2 前記検甲第四号証によれば、本件書籍は、約三〇〇mm×約二二五mmの規格で、上質紙が用いられており、総頁数一三六頁 であるところ、そのうち九二頁には本件展覧会で展示された作品八〇点が掲載されており、しかも、各作品は、一頁につき一点な いしは見開き二頁にわたって一点が掲載されている。そして、本件絵画は、縦がいずれも約二〇〇mm、横は作品によって約一一 三ないし約一四七mmの大きさで、カラー印刷で七頁にわたって、各頁に本件絵画一ないし七が一点ずつ複製されており、各絵画 についての解説文は各頁の下部約四分の一のスペースに印刷されているのみであることが認められる。
3 右のような本件書籍の紙質、判型、作品の複製態様等の事実によれば、本件書籍は、実質的に見て鑑賞用の画集として市中に 販売されているものと同様の価値を有すると認められるものであるから、著作権法四七条にいう著作物の解説又は紹介を目的とす る小冊子に当たるということはできない。よって、抗弁2は認められない。
2 著作権法三二条一項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣 行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。」と 規定しているが、ここにいう引用とは、報道、批評、研究等の目的で自己の著作物中に他人の著作物の全部又は一部を採録するも のであって、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物を明瞭に区別し て認識することができ、かつ、両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があるものをいうと解するのが相当である。
本条項の立法趣旨は、新しい著作物を創作する上で、既存の著作物の表現を引用して利用しなければならない場合があることか ら、所定の要件を具備する引用行為に著作権の効力が及ばないものとすることにあると解されるから、利用する側に著作物性、創 作性が認められない場合は、引用に該当せず、本条項の適用はないものである。
3 前記認定事実によれば、本件入場券及び割引入場券のうち本件絵画三を除く部分の記載事項は、単にコレクションの名称、そ れに含まれる画家名、その他本件展覧会の開催についての事実の記載に過ぎないから、思想又は感情を創作的に表現した著作物で あるということはできない。よって、右本件絵画三の複製を自己の著作物への引用であるということはできず、抗弁3は認められ ない。
被告は、美術展覧会の入場券あるいは割引引換券にその展覧会で展示されている代表的作品を収録することは広く行われている 慣行である旨主張するが、著作権の保護期間内の作品を著作権者の明示又は黙示の許諾なく入場券、割引引換券に複製することが 広く行われていることを認めるに足りる証拠はないし、仮にそのような行為が心ない美術展主催者によって社会に行われていると しても、それは正当化の根拠のない、著作権を侵害する行為であって、公正な慣行ということはできない。法律
著作権法47条の2
(美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等) 美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所(新設) 有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者が、第二十六条の 二第一項又は第二十六条の三に規定する権利を害することなく、その原 作品又は複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合には、当該権原を 有する者又はその委託を受けた者は、その申出の用に供するため、これ らの著作物について、複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつて は、送信可能化を含む。)(当該複製により作成される複製物を用いて 行うこれらの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著 作物の複製を防止し、又は抑止するための措置その他の著作権者の利益 を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うもの に限る。)を行うことができる。
政令・省令の基準
著作権法施行令7条の2
著作権法施行規則4条の2
許される複製
デジタル媒体
画素数が三万二千四百以下
紙媒体
五十平方センチメートル以下