著名な写真家の写真が、日本と台湾で、著作権侵害されたが、弁護士に依頼し解決した
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2024.8.24 mf更新
事件の概要
Kさんは、日本で育ち、アメリカの大学を卒業した台湾国籍の中国人です。日本に帰化し、写真家として成功しました。
Kさんは、自分の写真集をいくつも出しており、1988 年 11 月には、台湾で講演し、会場で自分の写真集を配布しました。
1990 年 2 月、Kさんは、スーパーマーケットのチラシに自分の写真集の写真が無断で、使われているのを知りました。さらに、Kさんの従業員が台湾旅行した際、講演の際に配布した写真が無断でバースディカードとして売られていることを見つけました。
Kさんは、東京で開業している弁護士を訪ね、処理を依頼しました。
弁護士の処理:日本のスーパーマーケットの事件
弁護士は、著作権侵害の場合、損害賠償として請求できる金額は、使用料相当、あるいは、相手が受けた利益である(著作権法 114 条 2 項)と説明し、金額も少ないので、裁判ではなく、交渉で解決することを助言しました。
弁護士が、Kさんが加入している写真貸出し会社の写真貸出し料金表を見ると、料金は「カタログ、チラシの場合、スポット\25,000、1ページ\35,000、表紙、見開き\40,000」となっていました。
弁護士は、Kさんの希望を入れ、1990 年 3 月 6 日、損害賠償\400,000とスーパーマーケットのチラシに謝罪広告を入れることを求める 内容証明郵便 を出しました。
3 週間ほど経ってから、スーパーマーケットの弁護士から、写真集に 著作権の表示 もなく、社員が不慣れなため写真を無断で使用したことを謝罪し、著作権法 114 条 2 項に基づき通常の使用料「 4 万円を支払います」との返事がきました。
しかし、Kさんは、この金額では納得しません。弁護士は、せめてスーパーのチラシに謝罪広告を入れることを要求しました(著作権法115条)。これには、相手はOKしません。何回かの交渉の末、1990 年 6 月 29 日、謝罪広告はせず、損害賠償金を 8 万円とすることで和解が成立しました。台湾のバースデイカードの事件
弁護士は、台湾での著作権侵害事件については、学生時代の同級生の台北のC弁護士に依頼することにしました。C弁護士は、中国語、日本語、英語、フランス語ができます。徴兵された際は、軍法会議の裁判官の経験がありました。
日本の弁護士は、1990 年 9 月 27 日、概略を手紙に書き台湾のC弁護士に送りました。C弁護士からすぐ、台湾にも著作権法があるから、大丈夫との返事がありました。ところが、その後、C弁護士から、「よく、調べた結果、台湾と日本の間に著作権の条約がないので、この件の法的処理は難しい」との手紙がきました。台湾は著作権についての 条約 の締約国ではなかったのです。これでは相手に損害賠償を求めて訴えを提起しても負けるのです。
そこで、Kさんは、「いや、中国人は面子を重んじる国民だから、内容証明郵便で警告書を出すと効果がある」と言って、次のこと書いた内容証明郵便を台湾の弁護士に依頼してほしいと求めました。- 台湾の主要な新聞に謝罪広告を求める
- 市場に出ている著作権侵害のバースデイカードを回収する
- 損害賠償を 2000 米ドルの支払いを求める
- 再度の侵害の場合は 4000 米ドルを支払いを求める
この謝罪広告を求めることがみそでした。
そこで、日本の弁護士は、C弁護士に対し、「失敗した場合、裁判ができなくてもよい」と、伝え、内容証明郵便を出すよう依頼しました。
1990 年 11 月 25 日、C弁護士は、内容証明郵便を台湾の相手に出しました。謝罪広告を載せる新聞名は具体的に挙げました。内容証明郵便を出したら、すぐ、著作権侵害の相手はC弁護士の元にやってきました。
話合いの結果、この相手は、謝罪広告以外は、全て承諾し、1990 年 12 月 1 日、台湾において和解が成立し、相手は 2000 米ドルを支払いました。全て、Kさんが事前に予想した通りでした。弁護士費用
日本より、物価が安い台湾での著作権侵害の損害賠償額が、 2000 米ドルで、日本での損害賠償額が、 8 万円とは、少し奇妙な結果でした。台湾での相手が支払能力があり、中国人は面子を重んじるからでしょうか。
日本のスーパーマーケットの著作権侵害事件の弁護士報酬は 4 万円でした。
台湾での著作権侵害事件では、台湾の弁護士の報酬は 400 米ドル、日本の弁護士の報酬は 6 万円でした。
国際的取立
国際的取立ては、現地の弁護士に依頼するしかありません。国際ロマンス詐欺事件で、法律事務所ないし弁護士が、「海外で、警察の捜査、照会ができる」との説明をしているようですが、でたらめです。
私の経験で恐縮ですが、台湾での金銭請求を,
かっての同級生(日本への留学生)が台湾で弁護士をしていましたので、彼に依頼して成功した例が本件で
す。国際的取立ては、現地に提携した弁護士が必要です。
弁護士と懇意であり、信用できる場合は別ですが、NET広告などで、国際的取立て事件を、海外の弁護士と提携できていない弁護士に依頼することはやめるべきです。
ベルヌ条約あるいは万国著作権条約
相手の国が締約国であるか否かについては 外務省 国際協定課で確認できます。かってのアメリカのように方式主義の国では著作権の保護を受けるには「 © の記号、著作権者の氏名、著作物を最初に発行した年」を表示する必要があった。日本は無方式主義。
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301 河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 電話 03-3431-7161