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2016.4.22mf

事故を目撃していないのに、損害賠償してもらった話

車に傷がある
Aさんは、土曜日と日曜日にだけ車を運転するドライバーです。ある土曜日の朝、駐車場にある自分の車(ベンツ)を見て、右前部フェンダーにかすり傷があることに気がつきました。
この駐車場は、ホテルを経営しているある会館の所有です。フロントへ行って、マネジャーに事情を話すと、マネジャーは、カメラで車の傷を撮影してくれました。Aさんの右側の駐車区画は、建設会社B社が借りていました。B社は、2台分の駐車区画を借りており、Aさんの右側の駐車区画には、そのときは、車はありませんでした。
マネジャーは、「私から、B社に尋ねてみましょうか」と言いましたが、Aさんは、まず、自分で調べることにしました。
ところが、B社の車は、夜中になっても帰ってきません。Aさんは、明け方5時に起きて、駐車場に行きましたが、B社の車はありませんでした。ある日の夜10時頃、Aさんが、車を駐車場に置こうとしたときに、B社の車が帰ってきました。ワゴン車でした。でも、Aさんの右側の駐車区画に駐車しませんでした。別の区画に駐車したのです。
Aさんは、その車の左ボデイをチェックしたところ、ちょうど、Aさんの車の傷と同じ高さの箇所にこすり傷がありました。でも、暗くて、よくはわかりませんでした。
その後、この車は、Aさんの右側の区画に駐車するようになりました。おかしいです。あの夜、なぜ正規の区画に駐車しなかったのでしょう。
怪しいです。Aさんがいたので、運転者は、Aさんの隣でなく、別の場所に車を置いた疑いがあります。
しかし、まだ、建設会社B社の車が加害車両であると断定できませんでした。若干、調査しながら、交渉をしなければなりません。

弁護士のアドバイス
Aさんは、会社を経営していたので、会社には顧問弁護士がいます。顧問弁護士に相談すると、弁護士は、次のようなアドバイスしました。交渉の際、相手に次のことを伝えるべきであるとのことでした。 Aさんは、ホテルのマネジャーから聞いた、建設会社B社の番号に電話すると、社長は、不在でしたが、折り返し、電話がありました。 そこで、Aさんは、弁護士に教えられた 上記事情を説明しました。
B社の社長は、「従業員に聞いて、調べてみる」と答えました。同日午後、B社の社長から、連絡がありました。社長は、「だいぶ前のことなので、従業員は、『覚えていない』と言っているが、傷があるのなら、弁償します」と回答してきました。
その後、Aさんは、車を修理工場に入れ、建設会社B社が契約している保険会社から修理代約25万円を支払ってもらいました。

交渉戦略についての教訓
このように目撃者がいない物損事故で、しかも、小さな事故で損害賠償されるのは、珍しいです。たいていの加害者は逃げる例が多いです。
本件では、 まず、環境がよかった点があります。この駐車場の利用者は、経済的にもかなり恵まれて いる地域にあります。駐車場の利用者も、一定レベル以上の人たちです。 相手の建設会社B社 も、小さい会社ですが、付近で、大手の建設会社の下請けをしており、自分の信用を保持することを重んじました。
次に、Aさんが述べた、マネジャーが、車の傷の写真を撮ったとの説明は、 証拠が確保されていること、ホテル側がAさんの味方であるとの印象を与えます。 両車の傷の位置が、ほぼ、一致しているとの説明も、相手に、「逃げられない」との印象を与えたのです。
神谷町 河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03-3431-7161


2013.4.15