貸していた部屋で自殺された、損害賠償請求できますか

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2024.3.19mf更新

相談

私の所有するアパートで賃借人が自殺しました。 4月に自殺があり、発見が遅れて、腐敗し、ひどい悪臭でした。それと、事件時にパトカーが来たので、近所に知れ渡り、アパートの部屋の半数が既に空き室になりました。管理を依頼している管理会社からは、「管理が不能である」との通知がきました。
このままだと、すべて空き室になります。アパートを売却すると、価格は通常の5000万円の3割、4割引きになります。また、風評はさらに広がり買い手は付かないと思います。
現在、連帯保証人への損害賠償を請求しています。
1.清掃料、リフォーム代金。これは先方が支払うことは合意しています。
2.さらに、入居者が現れないことの損害賠償は、妥当でしょうか。
過去3年間の売り上げ平均の40%×3年分(約1200万)を請求したいですが、適正でしょうか。
先方は、大手商社勤務だった入居者(33歳)のお父様で、生命保険はおりているそうです。

回答

建物内で自殺者が出た場合、借主は容易には現れないし、その建物を売却するとなると、容易には売れないでしょう。自殺者が出たことは建物の瑕疵であるとするのが判例です。例としては、安く売却せざるを得なくなり、その差額を損害として認めた判例もあります。知らないで買った買主からの解除を認めた判例もあります。そこで、不動産の売主、貸主には告知義務があります。死亡理由が,自然死や、日常生活での不慮の事故の場合は、原則として、告知義務はありません。他方、自殺、他殺、火災による死亡の場合は、告知義務があります。 これにつき、2021年10月8日、国土交通省が宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインを発表しました。

本件では、瑕疵は建物にあり、土地には瑕疵はないと考えられます。そこで、損害は、建物の価値が失われたことでしょう。通常は、不動産価格の2割前後と思います。 しかし、その建物を取り壊す計画ならば、瑕疵に当たりません。
自殺者の保証人あるいは相続人に損害賠償責任を請求できるでしょう。
その部屋ないしその建物を取り壊して新しく建築する費用を損害とする考えもあるでしょう。古い建物の場合は、建築費用から減価償却費をマイナスする必要があります。
なお、賃貸不能期間を1年、低額(半額)でしか貸せない期間を2年とみる判決もあります。

判例


虎ノ門(神谷町駅1分)  弁護士河原崎弘 03−3431−7161
登録 2007.7.28