東京地裁昭和35.10.18判決
明渡:認容 | しかし、共有者の一人が他の共有者の共有持分を否定し、全く、他の共有者の使用収益を認めず、管理方法についての協議に
も応じないで自ら共有物を使用しているような場合には、共有物に対する不法占有者と同視すべぎであるから、他の共有者は共有物を占有する
共有者に対し、民法第二四九条の共有物の持分にもとづぎ、その妨害排除として共有物の引渡を請求し得ると解するを相当とすべく、本件にお
いて、債権者等が本件土地建物の共有者であつて、その使用収益権を有することを債務者朝日観光において特に争うことをしないかの如き外観
を供えているけれども、・・・・・・を合せ考えれば、債権者山本鮭は、永年本件建物に居住していたものであるにもかかわらず、山本俊太の
ため意思に反して本件建物からの立退を余儀なくされ、これから程遠からぬ債権者内川澄子夫妻のもとに同居しているものであり、債務者朝日
観光の代表者はこの間の事実を知りながら前認定のとおり共有持分の譲渡を受け、本件土地建物を専用するにいたつたものであることを認める
ことができ、また・・・・・・を綜合すると、債務者朝日観光が本件仮眠所の構造上の危険を理由に、本件車庫を取壊そうとしていることが一
応認められ、共有物である本件車庫を取壊すことは共有物に変更を加える行為であるから、債務者朝日観光が本件車庫を取壊すためには、共有
者の一人である債権者等の同意を必要とするとこケ、その同意を得たことが疏明されないばかりでなく、弁諭の全趣旨からすれば、債権者等が
その同意をしていないことが認められる。 以上認定の事実からすれば、債務者朝日観光は、単に共有持分にもとづいて本件建物を保管するもの
でなく、債権者等の共有持分にもとづく使用収益権を全面的に否定して、管理方法の協議を拒み、恰も単独所有権者であるかの如く本件土地建
物を専用しているものであつて、債務者朝日観光と共同使用中の債務者塩田についても同じことをいいうべく、結局債務者等は債務者等の持分
自体を争うと同様の態度でその使用収益を妨害しているものというべきである。 したがつて、特別の事情がない限り、債権者等は、債務者等に
対し共有者の共有物に対する管理権にもとずく本件土地建物の妨害排除として、その明渡を求めることができるものといわなければならない。)
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債務者の争い方で決まるのは、おかしい
債務者を不法占拠者と同視して、明渡を認容
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最高裁昭和41.5.19判決
明渡:否定 | 思うに、共同相続に基づく共有者の一人であつて、その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(以下単に少数持分権者という)は、他の共有者の協議を経
ないで当然に共有物(本件建物)な単独で占有する権原を有するものでないことは、原判決の説示するとおりであるが、他方、他のすべての相続人らがその共有持分を
合計すると、その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといつて(以下このような共有持分権者を多数持分権者という)、共有物を現に占有する前記少数持分権者
に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。 けだし、このような場合、右の少数持分権者は自己の持分によつて、共有物を使用収益する権原を有し、
これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。従つて、この場合、多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、
その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである。 しかるに、今本件についてみるに、原審の認定したところによればAの死亡により被上告人らおよび上告人にて共同相続し、本件建物について、被上告人Bが三分の
一、その余の被上告人七名および上告人が各一二分の一ずつの持分を有し、上告人は現に右建物に居住してこれを占有しているというのであるが、多数持分権者である
被上告人らが上告人に対してその占有する右建物の明渡を求める理由については、被上告人らにおいて何等の主張ならびに立証をなさないから、被上告人らのこの点の
請求は失当というべく、従つて、この点の論旨は理由があるものといわなければならない。 |
@多額価格持分権者という理由では、共有物を現に占有する少額価格持分権者に明渡請求できない A
明渡を求めるには、理由の主張及び立証が必要
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最高裁昭和63.5.20判決 明渡:否定 | 共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その
者の占有使用を承認しなかつた共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくもの
と認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかつた共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することは
できないと解するのが相当である
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協議に基づかない占有者は 関係ない
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仙台高裁平成4.1.27 明渡:認容 | 右認定の事実によると、控訴人が本件一の建物の占有を取得した状況は、従前から長年月に亙り平穏に同建物を占有してきた他の共有持分権者である被控訴
人恭子及び同義則並びにこのような同建物の使用形態を容認している同和則と協議することなく、同恭子及び同義則を実力で排除するに等しいものであり、控訴人に同
建物の共有持分権があっても右は権利濫用と評価されてもやむを得ないものであって、このような事情が存在する場合においては多数持分権者である被控訴人らの少数
持分権者である控訴人に対する同建物の明渡請求は許される
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占有者を実力で排除し、占有を取得し、権利濫用と評価される占有者に対しては明渡請求は許される
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最高裁平成12.4.7判決 明渡:否定 |
同四二年四月ころに花子にこれらを贈与し、同五三年四月一〇日に花子から被控訴人春子に本件建物一が同二郎に本件建物二が各贈与されたことを併せて認定している。
以上の事実によれば、特段の事情のない限り、太郎の死亡に伴い、法定相続人の一人である一郎が本件各土地の九分の二の持分を相続により取得したはずのものである。
そうすると、上告人が一郎の右持分を相続により取得したというのであれば、上告人は、同様に太郎及び花子の死亡に伴い本件各土地の持分を相続により取得した共有
者である被上告人二郎及び同春子に対して本件各土地の地上建物の収去及び本件各土地の明渡しを当然には請求することができず(最高裁昭和三八年(オ)第一〇二一
号同四一年五月一九日第一小法廷判決・民集二〇巻五号九四七頁参照)、同二郎に本件各土地の登記済権利証の引渡しを請求することや同春子の所有する本件建物一に
居住している同松夫に対して退去を請求することもできないものというべきである。
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共有持分を有する占有者に対しては明渡請求できないので、明渡を否定
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東京地裁平成17年3月22日判決 明渡:否定 |
共有者の1人であって,その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(以下「少数持分権者」という。)が共有物を単独で占有する場合においては,当
該少数持分権者は,自己の持分によって共有物を使用収益する権原を有し,その占有もこれに基づくものであるから,持分の価格が共有物の過半数を超える他の共有者
(以下「多数持分権者」という。)であっても,少数持分権者に対し,当然にその明渡しを請求できるものではない(最高裁判所昭和38年(オ)第1021号同41
年5月19日第一小法廷判決・民集20巻5号947頁)。 このような共有者に対する多数持分権者の明渡請求が認められるのは,少数持分権者が,他の共有者が元々
共有物を平穏に占有していたにもかかわらず,他の共有者と協議しないままその占有を実力で排除するなど,少数持分権者の持分の主張が権利の濫用に当たるような特
段の事情が認められる場合であることを必要とすると解するのが相当である。
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この共有者の占有は、権利の濫用に当たらないので、明渡を否定 |
東京地裁平成18年6月7日判決 明渡:否定 |
したがって,本件
土地等を含めた占有使用関係について,関係者間で冷静に協議を重ねる中で本件建物の占有使用についても合意に達する余地が全くないとは考
え難いばかりか,仮に一部共有者の同意が得られないことの結果として協議が成立しないにしても,共有物分割により共有関係そのものを解消
することも可能である(民法256条)し,本件建物の占有権原が,本件建物を全面的に使用収益しうる使用借権ではなく,持分の範囲内での
使用収益権限としての共有持分権に限られたのは,平成17年3月7日になってのことであって,被告が,本件建物について,長期に亘り持分
を超える使用収益を継続してきたともいえないのであるから,原告らが主張するこれら事由は,被告(及びD)の同意なしに,原告らの被告に
対する明渡請求を認めるべき理由とはならないといわざるを得ない(なお,被告が,平成18年3月13日,原告ら及びDを被告として,当裁
判所に対し,本件土地及び本件建物の共有物分割の訴えを提起したことは本件記録上明らかであるが,共有物分割の訴えは,共有物分割の実施
方法につき共有者間の権利関係を定める形成判決を求めるものであって,その判決前には,共有物は分割されていない(大審院大正3年3月1
0日判決・民録20巻147頁)から,この点も,原被告ら間の権利関係に影響を及ぼさない。)。
(3)したがって,本件建物の明渡しを求めるには,被告(及びD)の同意をもが必要であるところ,多数決による協議が成立したとしてこ
れを求める原告らの本訴請求は,いずれも理由がない。
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明渡は、
共有の変更だから、明渡請求には、共有者全員の同意が必要 |