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2015.7.14mf更新弁護士河原崎弘
遺言の解釈
質問
夫には先妻との間の子がいます。相続のときに問題になると思って、夫は遺言を書いてくれました。
遺言書には、「遺言者は、東京都港区○○○3丁目口番口号の不動産を、妻口子に相続させる」と書いてあります。
知人に尋ねましたら、知人は、「これは住居表示であって、不動産には地番がある。地番を正確に書く必要がある」と言われてしまいました。
この遺言は有効ですか。
回答
遺言の解釈は遺言者の真意を合理的に探ります。遺言の解釈にあたっては、遺言書の文章を形式的に解釈するだけではなく、遺言者の本当の意思を探ります。その場合は、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮します。
従って、あなたの夫の遺言も、この住所にある土地、建物をあなたに相続させる趣旨と解釈できます。大丈夫です、遺言は有効です。
しかし、このような場合、「この住所にある建物だけが遺言の目的」と解釈した下級審の判決もあります。
そこで、トラブルを避けるために、「遺言者は、東京都荒川区○○○△丁目口番口号の土地、建物を妻口子に相続させる」とするか、あるいは、不動産を登記簿謄本の通り正確に書いてもらった方がよいでしょう。
いずれにせよ、自筆証書遺言は無効とされ易いので、書いた後、弁護士にチェックしてもらうとよいでしょう。
判決
- 最高裁昭58・3・18(出典:判例タイムズ496号80頁)
遺言
の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけで
はなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数
の条項からなる場合そのうちの特定の条項を解釈するにあたっ
ても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽
出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言
書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置か
れていた状況などを考慮して遺言書の真意を探究し当該条項の
趣旨を確定すべき
- 最高裁判所平成13年3月13日判決(出典:判例時報1745号88頁)
本件遺言書には単に「不動産」と記載されて
いるだけであって、本件土地を遺贈の目的から明示的に排除した記載となっていないこと、「○○○△丁目口番口号」は遺言者Aが長年居住していた自宅の住所であって、Aはその住所にある本件土地建物双方の共有持分を有していたことなどの事実関係の下においては、本件遺言書の記載は、Aの住所にある本件土地建物を一体として、その各共有持分をXに遺贈する旨の意思を表示していたものと解するのが相当であり、本件建物の共有持分のみをXに遺贈する意思を表示したものと
解した原審の認定判断は、遺言に関する法令解釈を誤ったものである。
この裁判では、「遺言者A所有の不動産である東
京都荒川区○○○△丁目口番口号をXに遺贈する」との記載の解釈は、次のように変わっています。
地裁 | 土地および建物 |
高裁 | 建物のみ |
最高裁 | 土地および建物 |
2004.10.17
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301 河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 電話 03-3431-7161