債務の相続と遺言/弁護士の法律相談

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2025.1.4mf
弁護士河原崎弘

質問:債務の相続

昨年、父が亡くなり、兄と、私と妹が相続しました。
父が残したものは、ビル1棟(時価2億円)、預金5000万円です。ビルの建築資金に当てた銀行に対する債務9000万円です。
父は、遺言で、「ビルと債務9000万円は兄に相続させる」と書いていました。
遺言通り兄がビルを取得し、銀行に対する相続届をし私と妹は2500万円づつもらいました。
ところが、先日、銀行から私宛てに、9000万円の1/3の3000万円の支払い請求がありました。遺言では兄が債務を相続したのですから、私と妹には責任はないはずですが、どうでしょう。
銀行は私と妹にも支払い義務があると言います。
兄がビルを売却すればいいのですが、兄はビルを売ることを渋っています。

回答

あなた方相続人は、相続放棄ないし限定承認をせずに、単純承認しています。
債務は、遺言で兄が相続するよう指定されていますが、これは、相続人間では効力がありますが、 債権者に対しては効力がありません。債権者に対する関係では、債務は、法定相続人が法定相続分に応じて分割して負担することになります(改正民法 902条の2)。判例もそう指摘しています。
これは、相続債務と遺産分割協議の場合と同じです。
この場合、相続分が少ないのに、債務が多い結果になります。これは、遺留分減殺請求で解決します。 なお、改正民法472条により、遺言と受遺者の意思表示により、債務の移転は可能です。

法律

民法902条の2
(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)
第902条の2
被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の1人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。

判例


港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03-3431-7161 2010/1/2