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相談:胎児の法的地位/弁護士の法律相談
私は37歳、独身女性です。3年前から52歳の妻子ある既婚者と交際しました。 今年の2月に私の妊娠が発覚しました。そのときには、将来の結婚と認知はすると約束しました。認知に関しては、さらに、一筆書いてもらっています。
しかし、今は、交際が終 っています。
彼は、認知と養育費の支払い意思は一貫して、約束してくれました。 しかし、実際は、一向に胎児認知の手続きをしないのです。今では、私は、不信感を持っています。出産前に相手 が海外赴任するようですので、出産後の強制認知ができるか、不安です。 弁護士を通して、相手に胎児認知させることは可能でしょうか。
純粋に産まれてくるこどもを認めて欲しいです。 胎児でも1人前の人間として認めてもらえるのでしょうか。回答
(原則)
権利を取得する能力は、出生後になります(民法3条1項)従って、胎児には、原則として権利能力はありません。
(例外的に胎児が人と認められる場合)
例外的に、胎児が人格(法的地位)を認められるのは、特別な法律の規定がある場合です。
- (認知)
父親と胎児の父子関係を法的に確定するために、父親は認知届けをするか、あるいは、遺言で認知 をします(民法781条)。
胎児の母親から、父親に対する認知を求める調停申立はできます。 胎児から、父親に訴を提起して認知されること(強制認知)はできません。強制認知は、胎児が生まれてから、可能です。
相手(父親)が海外に行く計画があるなら、相手が国内にいる間に、認知を求めて調停申立をしておくと良いでしょう。
- (相続)
相続に関しては、胎児は生まれたものとみなされ、胎児は相続人となり、遺産を相続します(民法886条)。しかし、死んで生まれた場合は、胎児は相続人となれません。死産であった場合には、この胎児に相続させる旨の遺言は無効です(民法886条2項)。
子供が生まれた後に、死亡した場合は(子供が短い期間でも生きていた場合)、その子供の法定相続人がその遺産を相続します。
(遺贈)
不動産とか預金など特定の遺産を胎児に与えたい場合は、遺言で相続、遺贈をします。
なお、胎児は、出生前なので戸籍に名前を記載することはできません。遺言書にも胎児の名前を記載して特定することはできません。そこで、遺言書中では、母親の名前を記載して胎児を特定します。例えば、「後記不動産を、 ○○ ○○子の胎児に相続させる」と、特定して、遺言書を書きます。
- (損害賠償請求権)
損害賠償請求権に関しても、胎児は既に生まれた者として扱われ、損害賠償請求権を取得します(民法721条)。法律の規定
民法
第3条 @ 私権の享有は、出生に始まる - 第721条[損害賠償請求権に関する胎児の権利能力] 胎児は損害賠償請求権については、既に生まれたものとみなす - 第783条〔胎児又は死亡した子の認知〕 @ 父は、胎内にある子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない A 父又は母は、死亡した子供でも、その直系卑属がある場合に限り、認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。 - 第886条〔胎児の相続権〕 @ 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。 A 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、これを適用しない。 判決
- 最高裁判所平成18年3月28日判決
自家用自動車総合保険契約の記名被保険者の子が,胎児であった時に発生した交通事故により出生後に傷害を生じ,その結果,後遺障害が残存した場合には,当該子又はその父母は,当該傷害及び後遺障害によってそれぞれが被った損害について,同契約の無保険車傷害条項に基づく保険金の請求をすることができる。