相続債務の支払いは単純承認にならない/弁護士の法律相談
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2015.7.29mf
質問:相続債務の支払い
先月、父が亡くなりました。姉が相続放棄のことを知らずに父の債務の一部の50万円を銀行に支払ってしまいました。
父は、預金が100万円ほどあるだけで、これといった財産は持っていなくて、借金が相当ありました。
支払った後に、姉は、弁護士に相談して、相続放棄について教えてもらいました。さらに、
相続財産を処分すると、相続を承認したことになり、相続放棄できないとも聞きました。
この場合は債務を一部でも支払ってしまったら、本当にもう姉は相続放棄はできないないのでしょうか。
父の債務(合計600万ほど)は、銀行とサラ金に対する借金です。
回答:相続人固有財産をもってする支払なら問題ない
相続財産の一部を処分すると、単純承認したものと扱われ、以後、相続放棄はできません(民法921条1号)。
ご質問の件は、支払いのために、
姉が、自分の財産を使ったか、父の財産を使ったかによって、結論が異なります。
姉が、父親の100万円の預金などを使って、父親の債務を支払った場合は、相続財産の一部の処分にあたり、姉は単純承認したことになり、以後、相続放棄ができません。
姉が、自分の預金を使って相続債務を支払った場合は、単純承認になりません。これについては、熟慮期間中の被相続人の相続債務の一部弁済行為は,自らの固有財産である前記の死亡保険金をもってしたものであるから,これが相続財産の一部を処分したことにあたらないとした下記判例があります。
相続債務の弁済は、相続財産の処分ではないのです。
判例
- 福岡高等裁判所宮崎支部平成10年12月22日決定(家庭裁判月報51巻5号49頁)
抗告人らのした熟慮期間中の本件保険契約に基づく死亡保険金の請求及びその保険金の受領は,抗告人らの固有財産に属する権利行使をして,その保険金
を受領したものに過ぎず,被相続人の相続財産の一部を処分した場合ではないから,これら抗告人らの行為が民法921条1号本文に該当しないことは明らかである。
(2)そのうえ,抗告人らのした熟慮期間中の被相続人の相続債務の一部弁済行為は,自らの固有財産である前記の死亡保険金をもってしたものであるから,これが相続
財産の一部を処分したことにあたらないことは明らかである。
2010/5/14
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