遺留分減殺請求権を債権者が行使できるか/弁護士の法律相談
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2022.11.17mf
弁護士河原崎弘
相談
私は、友人の連帯保証人になり、友人の会社は倒産し、私が銀行に2000万円支払いました。
その後、友人の母親がなくなりました。私は、相続財産で支払ってくれるものと思っていましたが、友人は母親は遺言で全ての財産を友人の弟に相続させました。相続財産(不動産、預金など)は5000万円を超えており、相続財産である土地付き建物には友人も住んでいます。
しかし、友人は、遺留分も請求していません。私は友人に代わり遺留分侵害額請求ができませんか。
相談者は、弁護士の意見を求め、法律事務所を訪ねました。
回答
法律では、「
債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない(民法423条1項)」となっています。
債権者代位権の目的になるには、本人(遺留分権利者)しか行使できない権利(一身専属権)であってはなりません(民法423条1項但し書き)。遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が請求をした場合は、具体的な財産権になりますが、それまでは、一身専属権であり、他人は行使できないのです。
従って、あなたが、債権者の立場で遺留分侵害額請求権を代位行使することはできません。
判決
- 最高裁判所平成13年11月22日判決(出典:判例タイムズ1085号189頁)
遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、これを第三者に譲渡するなど、権利行使の確定的思思を有することを外部に表明し
たと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位の目的とすることができないと解するのが相当である。その理由は次の
とおりである。
遺留分制度は、被相続人の財産処分の自由と身分関係を背景とした相続人の諸利益との調整を図るものである。民法は、被相続
人の財産処分の自由を尊重して、遺留分を侵害する遺言について、いったんその意思どおりの効果を生じさせるものとした上、こ
れを覆して侵害された遺留分を回復するかどうかを、専ら遺留分権利者の自律的決定にゆだねたものということができる(1031条、1043条参照)。
そうすると、遺留分減殺請求権は、前記特段の事情がある場合を除き、行使上の一身専属性を有すると
解するのが相当であり、民法423条1項ただし書にいう「債務者ノ一身ニ専属スル権利」に当たるというべきであって、遺留分
権利者以外の者が、遺留分権利者の減殺請求権行使の意思決定に介入することは許されないと解するのが相当である。民法1031条が、遺留分権利者の承継人にも遺留分減殺請求権を認めていることは、この権利がいわゆる帰属上の一身専属性を有しないこ
とを示すものにすぎず、上記のように解する妨げとはならない。
なお、債務者たる相続人が将来遺産を相続するか否かは、相続開
始時の遺産の有無や相続の放棄によって左右される極めて不確実な事柄であり、相続人の債権者は、これを共同担保として期待す
べきではないから、このように解しても債権者を不当に害するものとはいえない。
2004.10.17
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