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2015.7.19mf更新
債務の相続/弁護士の法律相談
弁護士河原崎弘
質問:貸した相手が死亡した
平成21年3月から12月にかけて、合計240万円を、知人に貸しました。
借用書は合計金額で書いてもらいました。しかし、その後、先方から連絡もなく、
こちらから連絡しても、居留守をつかわれる状態でした。
やっと電話がつながったと思ったら、
奥様がでて、「主人は亡くなりました」と言われました。借主は半年前に亡くなったそうです。
このように、借主が死亡してしまった場合、
借用書があっても、お金を返していただくことはできないのでしょうか。
残った相続人は、奥様と子ども2人です。
回答:相続人が相続放棄しなければ、返済請求できる
弁護士の意見は次のとおりです。
借主(債務者)死亡の場合、債権者は、相続人に請求できます。しかし、相続人が相続放棄をすると、相続人に請求できません。そこで、相続放棄ができる3か月の経過を待つのです。
相談者の場合は、
相続開始後、6か月経過していますから、妻と子どもたちは、今からは、相続放棄できません。妻と子どもたちは、相続放棄をしていなければ、法定相続分に従い、債務を相続します。妻は、1/2の120万円、子どもは、1/4ずつの、すなわち、60万円ずつ債務を相続しています。
具体的には、内容証明郵便で、3人に対し、貸金の返還請求をしてください。相手が相続放棄をしている場合は、その書類(相続放棄の受理証明の写し)などを見せてくれるでしょう。
そのような書類がない場合は、粘り強く請求し、時効(商売上、取引上の債権でなければ10年)にならないうちに判決をとっておくと良いです。いつかは、返してもらえるでしょう。
債務の相続関係図
債務者 | -- | ---- | -- | -- | ---- | -- | 妻1/2 | | |
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| | 子1/4 | | | 子1/4 | | | | |
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関連質問
とても、分かりやすく、参考になりました。私も同じ立場です。
知人の奥様に対し、ご主人が亡くなられたということで、
なかなか強く言えないので、困っていました。
ところで、文中の「相続開始後、6か月」というのは
なにか大切なポイントですか。
6ヶ月未満の場合は、何か変わってくることはあるのでしょうか。
私の場合、相手の方(借主)が亡くなられたのは、今月の4日ということで、
まだ、相続などの話には至っていないのかもしれませんので、もう少し時間をおいてから
内容証明を送ったほうがよいのでしょうか。
回答
6か月には、意味がありません。被相続人が死亡したことを知ってから
3か月が、
相続放棄ができる期間 (熟慮期間)です。3か月を過ぎると相続放棄ができなくなります。
今、請求すると、奥さんと子供は、相続放棄する可能性があります。
3か月経過してから、請求した方が、いいでしょう。
判例
- 東京高裁昭和37年4月13日決定(出典:家庭裁判月報14巻11号115頁)
遺産分割の対象となるものは被相続人の有していた積極財産だけであり、被相続人の負担していた消極財産たる金銭債務は相続開始と同時に共同相続人にその相続分に応じて当然分割承継されるものであり、遺産分割によつて分配せられるものではない
- 最高裁判所昭和34年6月19日判決(出典:家庭裁判月報11巻8号89頁)
連帯債務は、数人の債務者が同一内容の給付につき各独立に全部の給付をなすべき債務を負担しているのであり、各債務は債権の確
保及び満足という共同の目的を達する手段として相互に関連結合しているが、なお、可分なること通常の金銭債務と同様である。
とこ
ろで、債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がそ
の相続分に応じてこれを承継するものと解すべきであるから(大審院昭和5年(ク)第1236号、同年12月4日決定、民集9巻118頁、最高裁昭和27年(オ)第1119号、同29年4月8日第一小法廷判決、民集8巻819頁参照)、連帯債務者の一人が
死亡した場合においても、その相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務
者とともに連帯債務者となると解するのが相当である。
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 3431-7161