債務整理は、弁護士に依頼すべきか、司法書士か
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2016.6.28mf
相談
120万円の債務があり、支払いに行き詰ってしまいました。親の援助を受けて債務整理をしようと考えています。債務整理を弁護士に依頼すべきでしょうか、司法書士に依頼すべきでしょうか、迷ってしまいました。
司法書士の方が費用が安そうです。
司法書士に依頼した方がいいですか、弁護士に依頼した方がいいですか。
お答え:司法書士の代理権
- 司法書士法改正
2003年に、司法書士法が改正され、法務大臣が認定した司法書士(認定司法書士)に、140万円以下の事件についての交渉代理権、簡易裁判所における訴訟代理権が認められました(3条、裁判所法33条)。この改正により、債務の額が140万円以下の場合には、債務整理を弁護士だけでなく、司法書士に依頼することも可能となりました。
ただし、司法書士の訴訟代理権は簡易裁判所のみに限られており、それ以外の裁判所(地方裁判所など)では弁護士のみに訴訟代理権が認められており、司法書士には訴訟代理は与えられていません。司法書士は、地方裁判所で、訴訟代理人になることはできません。
| 各債務額 140万円以下 | 各債務額 140万円超 |
弁護士に依頼
|
交渉代理権・訴訟代理権あり |
交渉代理権・訴訟代理権あり
|
司法書士に依頼
|
交渉代理権・訴訟代理権あり
|
交渉代理権・訴訟代理権無し × |
- 費用
債務整理の費用は、基本的に、1件4万円プラス消費税、過払い金回収報酬は、回収額の10%から20%が普通です。費用が、この程度なら、適正です。司法書士の費用の方が、弁護士の費用より安い可能性もあります。ただし、余りに安い場合は、手抜き処理をされる恐れがあります。
- 債務整理
相談者のケースは120万円ですので、司法書士が代理人になれます。簡単な事件でしたら、120万円の債務整理を司法書士、弁護士のどちらに依頼してもよいでしょう。 弁護士でも、司法書士でも、真面目な方、熱心な方にお願いすべきでしょう。
- 破産へ移行
任意整理は、引き直し計算した金額を、通常は3年で弁済します。特別な場合は、5年です。その意味で、任意整理の場合は、お金が必要なのです。
任意整理できない場合は、破産に移行し、免責を得る必要があります。破産は、地方裁判所扱いですので、司法書士は、扱えません。破産に移行する可能性のある事件の場合は、初めから弁護士に依頼すべきでしょう。
- 過払い金請求
問題となるのは、債務整理に伴い過払い金が発生する場合です。最近は、過払い請求は交渉で可能ですが、相手によっては、訴訟が必要な場合があります。140万円以上の過払い金請求のため裁判をする必要があることもあるのです。過払い金が140万円を超えた場合は、地方裁判所の管轄であり、司法書士は扱えません。
そこで、債務額が大きく(140万円を超える場合)、長期間(5年以上)の借り入れで、高額な過払い金が発生が予想される場合は、弁護士に依頼した方が便利です。
判決
- 広島高等裁判所平成24年9月28日
判決
400万円余の債務を負う債務者から債務整理を受任した認定司法書士が貸金業者と交渉した場合について、弁護士法72条に違反する非弁活動に係る不法行為が肯定される。
- 最高裁判所平成28年6月27日
判決
このように,認定司法書士が裁判外の和解について代理することができる範囲
は,認定司法書士が業務を行う時点において,委任者や,受任者である認定司法書
士との関係だけでなく,和解の交渉の相手方など第三者との関係でも,客観的かつ
明確な基準によって決められるべきであり,認定司法書士が債務整理を依頼された
場合においても,裁判外の和解が成立した時点で初めて判明するような,債務者が
弁済計画の変更によって受ける経済的利益の額や,債権者が必ずしも容易には認識
できない,債務整理の対象となる債権総額等の基準によって決められるべきではな
い。
以上によれば,債務整理を依頼された認定司法書士は,当該債務整理の対象とな
る個別の債権の価額が法3条1項7号に規定する額を超える場合には,その債権に
係る裁判外の和解について代理することができないと解するのが相当である。
これを本件についてみると,上告人は,本件委任契約に基づき,本件各取引につ
いて裁判外の和解やその交渉をするなどの債務整理に関する業務を行って,これに
対する報酬の支払を受けたものであるところ,本件各債権の価額はいずれも140
万円を超えるものであったというのである。そうすると,上告人は,本件各債権に
係る裁判外の和解について代理することができないにもかかわらず,違法にこれを
行って報酬を受領したものであるから,不法行為による損害賠償として上記報酬相
当額の支払義務を負うというべきである。他方,本件各債権以外の本件各取引に係
る各債権については,その価額がいずれも140万円を超えないから,上告人は,
当該各債権に係る裁判外の和解について代理することができ,これに対する報酬の
支払を受けたとしても,不法行為による損害賠償義務を負わないというべきであ
る。
2010. 5. 17
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