日本での離婚はアメリカでも有効ですか/国際離婚

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Last update 2023.7.11mf
弁護士河原崎弘
離婚相談
私(日本国籍)は、カリフォルニアで、夫(アメリカの国籍)と結婚し、アメリカに住んだ後、現在、夫婦で日本に居住しています。
日本で、協議離婚できますか。

回答
日本で、協議離婚できますが、夫の本国法(アメリカ)では、協議離婚では、有効であるかどうか問題があります。
協議離婚を認める国は少ないです。日本での協議離婚を有効と認めることが明確なのは、イギリスと韓国です。
日本の家庭裁判所で、調停離婚をした方が安全です。調停なら弁護士に依頼せずに自分でできます。

協議離婚は、日本では有効ですが、アメリカには協議離婚を含め、裁判所外離婚(extra-judicial divorce)の制度がありませんので、アメリカの各州で有効と認められるとは限りません。日本で協議離婚してもアメリカの各州では有効であるかは、問題があります。
アメリカは州により法律が異なります(アメリカの離婚については、 Divorcenet.com が詳しい)。アメリカ大使館のサイト を参考にしてください。

「1990 年1月1日より、夫婦の内どちらかが日本人であれば協議離婚を認めています。日本人と米国市民との協議離婚は日本では合法です。離婚の書類にきちんと署名 捺印がされていれば、米国市民は区役所に実際に出頭する必要がありません。しかし、米国には裁判以外の手続きによる離婚はありません。日本での区役所等で の離婚手続きが米国でも合法的であるかどうかは、各州の法律によりますのでご注意ください。」

上記は、 アメリカ大使館のサイトの記事Q&Aです。

不明の場合は、協議離婚ではなく、家庭裁判所 で調停離婚あるいは審判をしてもらった方が安全です。調停が成立するとその調書は判決と同じ効力があります( 家事事件手続法 268 条)。調停調書に、「本調停は判決と同じ効力がある」と書いてもらうと、外国で判断してもらう際に役に立ちます。
裁判離婚でもよいですが、調停離婚の方が簡単です。夫婦が離婚に合意しているのですから、期日に夫婦が1回出頭すれば、それで完了です。

日本(アメリカ国外)の裁判所における離婚がアメリカで有効と認められるには、次の要件が必要です。
  1. 少なくも両当事者が裁判所における手続きに出頭している。
  2. 裁判所の管轄地域に少なくとも当事者の一方の住所があること。
  3. その離婚が、アメリカの公序(Public policy)に大きく反していないこと。
あなたは、日本人ですから、日本で離婚することは問題ありません。
アメリカ人が日本で離婚する場合は、 アメリカでは、一定期間(1年など)の別居、別居に際し「財産の分配、子供の養育、扶養など」を内容とする別居契約(Separation Agreement)の締結とその履行などが重要な要素です。あるいは、当事者が宣誓供述書(Affidavit)を提出する簡略手続きがあります。
できたら、該当する州の法律を調べ、その手続きの趣旨も守ると、より安全でしょう。
アメリカでは、離婚は、州法で決められています。約3/4の州では、no-fault divorceを認め、離婚に相手の責任を必要としません。相手が離婚に同意しなくても、一定の手続きで離婚判決が出ます。相手が離婚に同意すれば、簡単な手続きで離婚判決が出ます。

国際離婚の場合、適用する法律(applicable law, governing law)は次の通りです。
どこの国の法律が適用されるかは、日本の場合、法の適用に関する通則法27 条で決まります。
  1. 夫婦が属する国(アメリカでは州)が同じ場合はその法律
  2. 上記Aでない場合、夫婦が長期間居住(常居所)している地が同一の場合は、その地の法律。
  3. 上記A あるいはB による法律がない場合、夫婦に最も密接な関係ある地の法律、
  4. 但し、夫婦の一方が日本に長期間居住(常居所)している日本人であるときは日本の法律
夫婦が日本国籍を持っている場合は、日本法が適用されます。
日本人の配偶者が外国籍の場合は、2、あるいは、3が適用されます。
相談者が日本に住み住民登録をしていれば(居住期間にかかわらず)上記C.の但書き(下線部分)で、日本が常居所地と認められます。

国籍の点は、国籍法14条1項により、国籍取得後2年間、日本か、アメリカの国籍を選択する猶予が認められています。

法律

家事事件手続法第268条〔調停の成立と効力〕
1調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(別表第二に掲げる事項にあっては、確定した第三十九条の規定による審判)と同一の効力を有する。
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参考文献
溜池良夫 「国際私法 講義」
山田鐐一 「国際私法」 登録 Feb. 20, 2000
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 03-3431-7161