株主へ利益供与

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弁護士河原崎弘
取締役の犯罪 野村証券は、総会対策のため、特定の顧客(総会屋)に取引上利益を提供し、総会屋が取引きに要した10億円単位の資金は、焦げ付きを予想しながら、第一勧業銀行が総会屋に融資したそうです。腐った会社ですね。
野村証券の関与者(社長)の行為は、損失補填あるいは利益の追加の禁止規定違反(旧、証券取引法53条3,1項 一号、二号、199条一号、現、金融商品取引法39条1項1号、2号、198条の3)で刑は3年以下の懲役(旧、1年以下の懲役)、 あるいは株主の権利行使に対する利益供与禁止規定違反(旧、商法294条の2, 497条、現、会社法970条1項)で、刑は3年以下の懲役(旧、6月以下の懲役)です。
十分な担保を取らずに融資した第一勧業銀行の関与者の行為は、特別背任罪(旧、商法486条1項、現、会社法961条)です。社会に対する悪影響を考えたら、軽過ぎませんか。
しかも、この公訴時効期間は5年です(刑事訴訟法250条四号、五号)。
このような犯罪は巧妙に隠されており、発覚したときは公訴時効が完成しているのです。馬鹿を見るのはまじめに働いてる一般国民です。
法律を改正して、刑を重くするか、公訴時効期間を長くする必要があります。
1997.6.2

利益供与禁止規定違反で逮捕 5日、第一勧業銀行の総務部の幹部(取締役ら)が利益供与禁止規定違反で逮捕されました。利益供与の額は117億円だそうです。第一勧業銀行の直接融資は275億円、そのうちこげついたのが75億円です。一部は時効が完成しています。
日本では、会社は、株主から経営を任されているとの意識が低く、取締役に会社を私物化した意識しかないので、このような莫大な利益供与になったのでしょう。この際、特別背任罪も検討してほしいものです。
1997.6.6