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2015.4.30mf更新弁護士河原崎弘相談
私は、ある専門用語の事典のホームページを持っています。最近、私のホームページそっくりのページを見つけました。相手に、どのようにして、ページの削除を求めるべきですか。
私のページには、© マークを付けており、無断でコピーを禁じる旨の表示もしてあります。
回答
デジタルの世界では他人の著作物をコピーすることは簡単です。インターネットでは匿名性があるので特に酷いです。ホームページに著作権が管理者にあると宣言しているページがありますが、このような宣言がなくとも、管理者に著作権が留保されていることは間違いありません。方式主義の国では © マークが表示されていることを、著作権保護の要件としている国がありますが、日本ではそのような方式主義を採用していません。
他人のホ−ムページをコピーして自分のサイトに載せる行為は著作権侵害となり、民事上は損害賠償義務、刑事上は刑事罰が科せられます。しかし、関係者の意識は低く、認められる損害賠償額は少ないです。法定刑は結構重い(懲役10年以下、罰金1000万円以下、著作権法119条)のですが、実際の刑事罰は軽いです。そのため、防止効果はあまりなく、インターネットの世界ではコピー(著作権侵害行為)が絶えません。
引用
他のサイトの内容を自己のページに掲げることができるのは引用です。著作権法32条 がこれを規定しています。引用には次の要件( 判例 参照)が必要です。
フレームにより他人のページをリンクし、あたかも自分のページの一部であるかのような体裁で取り込む方法は、この要件から考えると、問題ですね。かって、アリゾナ州のTotal News 社が、各社のニュースページをフレームで取りこみ、訴えられてから中止した事件がありました。これについては賛否両論あります対策
- 引用する必然性があること
- かぎ括弧を付けるなど、自己の著作物と引用部分が明確に区別されていること
- 自分の著作物が主であり、引用著作物が従であることが明確であること
- 出所が明示されていること
無(作)法サイト
- 侵害しているサイトの画面コピーをとり、証拠の確保をする
- Google宛に、メールでスパムレポート、郵便で著作権侵害報告、あるいはファックスでスパム報告をする。
- ホームページ上で予め警告する
- 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条第1項に基づき、侵害情報の発信者の特定に資する情報の開示を請求します。
メールで削除を求める- 警告のページを作り、著作権侵害であることを宣言し、コピーサイト宛てにリンクを設定する。
しかし、著作権侵害が明確な場合のほかは、この手段はとれません。逆に、名誉毀損に当たるおそれがあります。- 内容証明郵便 で差止め、損害賠償を求める。場合によっては、弁護士を代理人として差止めを求める。
- 差止め訴訟(裁判)
当サイトも、時々コピーの被害を受けています。 現在、当サイトの法律書式中の「別れの金銭の領収書」、「別れの契約書」、「男女の和解契約書 」、「慰謝料表」などをコピーし(欠点も同じように書かれています)、少し直し、自分のサイトに掲載しているサイトがあります。
著作権侵害をしているような興信所に依頼するのは危険です。気をつけてください。
それでなくとも、予期せぬ多額の費用を請求されたなど、興信所には問題が多いのです。依頼するときは弁護士を通して弁護士が日常使っている興信所に依頼する方が安全です。
著作権の表示
かってのアメリカのように方式主義の国では著作権の保護を受けるには「 © の記号、著作権者の氏名、著作物を最初に発行した年」を表示する必要があった。日本は無方式主義。
著作権法
32条 公表された著作物は、引用して利用することができる。
この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究、その他引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなくてはならない。2 国又は地方公共団体の機関が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。 ・・・ ・・・ 119条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。 一 著作者人格権、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物又は実演等の複製を行つた者を除く。) 二 営利を目的として、第三十条第一項に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
判例
- 最高裁第三小法廷昭和55年3月28日判決(判例時報967-45)
法三〇条一項第二(現著作権法三二条一項)は、すでに発行された他人の著作物を正当の範囲内において自由に 自己の著作物中に節録引用することを容認しているが、ここにいう引用とは、紹介、参 照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録するこ とをいうと解するのが相当であるから、右引用にあたるというためには、引用を含む著 作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物 とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従 の関係があると認められる場合でなければならないというべきであり、更に、法一八条 三項の規定によれば、引用される側の著作物の著作者人格権を侵害するような態様です る引用は許されないことが明らかである。- 東京地方裁判所平成13年12月3日判決
1 インターネット上にウェブサイトを開設し、他人の著作した書籍の要約文を作成して、これをメールサービスによって会員に送信したり、ウェブサイトにアクセスした不特定多数の者に対して広く公衆送信したりした行為が、著作権(翻案権、複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとされた。
2 著作権者がプロバイダーに対して、発信者による著作権侵害を理由に差止請求等を求めた訴訟において、著作権者とプロバイダーとの間で、プロバイダーが、そのサーバーを提供するウェブサイト開設者(発信者)との「インターネットプロバイダーとしての役務提供に関する契約」を解約したことを確認し、著作権者はプロバイダーに対して損害賠償権を行使しないことなどを内容とした裁判上の和解が成立した。
この判決では、著作権侵害の損害賠償として、原告1人につき110万円が認められました。