アメリカの裁判所での幼児引渡し判決の効力は

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Last updated 2012.3.27mf
相談
私は、日本で、アメリカ人の夫と結婚し、アメリカ人の夫とユタ州に渡り、そこで子供をもうけました。しかし、夫の暴力のため、子供(3歳)を連れ、日本に逃げ帰り、2年経過しました。まだ、離婚は成立していません。
最近、夫は私に対し、ユタ州の裁判所に、子供を引き渡すように訴えを起しました。夫に言わせれば、アメリカでは私は行方不明者になっているそうです。
夫のアメリカの弁護士が日本の弁護士に頼み、呼び出し状が日本の弁護士から送られてきました。
私は、この裁判に出頭すべきでしょうか。
アメリカの裁判所で夫に有利な判決が出た場合、日本でも効力がありますか。

回答
国際離婚の典型的なケースです。
仮に、夫がアメリガで判決を得た場合、アメリカでの判決はそのままでは日本で強制執行できません。夫は、日本の裁判所で、執行判決を取る必要があります(民事執行法24条)。
執行判決を得るには、外国判決が確定し、次の要件を備える必要があります。 よく問題になるのは、管轄、呼出状の送達です。正規の送達はアメリカの裁判所は領事を通し、日本の当局に嘱託します。日本の場合、裁判所を通して送達されます。日本語の翻訳文を付ける必要があります。これは民事訴訟手続に関する条約によって決められています。
不適法な管轄、あるいは不適法な送達(弁護士からの送達、翻訳文のない送達)の場合は、応訴すると、管轄が認められたり、送達の欠陥につき異議を言えなくなります。対応は2つあります。この件は、上記状況を考慮し、弁護士に相談し、応訴すべきか否かを決めるとよいです。

夫が、正当な手続きを経ないで、子供を連れ去った場合は、犯罪(誘拐罪)となります(下記判例)。
別れた配偶者が子どもとの面会を求めた場合、連れ去られないよう用心する必要があります。先日も、復縁(再婚)を口実にタイで面会し、そのまま、夫に子どもをドイツに連れ去られた例がありました。
第三国での面会は、その後の対処、手続きが面倒ですので、避けるべきでしょう。
なお、日本の女性が子供を連れ帰ることには、各国から批判があります。日本は、近い将来、「国際的な子の奪取の民事面に関する条約(ハーグ条約)」を批准するようです。そうなると、本件のような例では、子供を元いた場所へ戻す手続きが立法化されます。
2011.5.9アメリカ、テネシー州の裁判所で、幼児を連れて日本に逃げ帰った日本人元妻に対し、$6.1Millionの賠償命令がありました(the case of Christopher Savoie) 。この命令を日本で執行するには、執行判決が必要です。このような大きな金額の損害賠償は日本の裁判所では(執行判決の段階で)認められないでしょう。

参考判決