森林病害虫等防除法

  昭和25・3・31・法律 53号  
改正平成9・3・28・法律 11号
改正平成11・7・16・法律 87号
改正平成11・12・22・法律160号
(目的)
第1条 この法律は、森林病害虫等を早期に、且つ、徹底的に駆除し、及びそのまん延を防止し、もつて森林の保全を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「森林病害虫等」とは、樹木又は林業種苗に損害を与える次に掲げるものをいう。
1.松の枯死の原因となる線虫類(以下「線虫類」という。)を運ぶ松くい虫(以下「松くい虫」という。)
2.樹木に付着してその生育を害するせん孔虫類であつて、急激にまん延して森林資源に重大な損害を与えるおそれがあるため、その駆除又はまん延の防止につき特別の措置を要するものとして政令で定めるもの(以下「特定せん孔虫」という。)
3.前2号に掲げるもののほか、松毛虫その他の昆虫類、菌類、ウイルス及び獣類であつて政令で定めるもの
 
 この法律において「伐採木等」とは、伐採された樹木その他土地から分離した樹木の幹及び枝条(用材及び薪炭材であるものを含む。)並びにこれらの包装をいう。
 この法律において「特定森林」とは、特定樹種(松くい虫に係る場合にあつては松、特定せん孔虫に係る場合にあつては特定せん孔虫の種類ごとに政令で定める樹種をいう。以下同じ。)からなる森林をいう。
 
 この法律において「高度公益機能森林」とは、森林法(昭和26年法律第249号)第25条第1項若しくは第2項又は第25条の2第1項若しくは第2項の規定により保安林として指定された特定森林及びその他の公益的機能が高い特定森林であつて特定樹種以外の樹種からなる森林によつては当該機能を確保することが困難なものとして政令で定める特定森林をいう。
 
 この法律において「被害拡大防止森林」とは、松くい虫又は特定せん孔虫(以下「松くい虫等」という。)の被害対策を緊急に行わないとすれば、松くい虫が運ぶ線虫類又は特定せん孔虫(以下「特定原因病害虫」という。)により当該特定森林に発生している被害が高度公益機能森林に著しく拡大することとなると認められる特定森林(高度公益機能森林を除く。)をいう。
 
 この法律において「特別伐倒駆除」とは、松くい虫等が付着している樹木の伐倒及び破砕(農林水産省令で定める基準に従い行うものに限る。以下同じ。)又は当該樹木の伐倒及び焼却(炭化を含む。)をいう。
 
 この法律において「樹種転換」とは、特定森林を保護し、及びその有する機能を確保するために行う特定原因病害虫により被害が発生している特定森林の特定樹種以外の樹種又は特定原因病害虫により枯死するおそれのない特定樹種からなる森林への転換をいう。
 
(駆除命令)
第3条 農林水産大臣は、森林病害虫等が異常にまん延して森林資源に重大な損害を与えるおそれがあると認めるときは、早期に、かつ、徹底的に、これを駆除し、又はそのまん延を防止するため必要な限度において、区域及び期間を定め、次に掲げる命令をすることができる。
1.森林病害虫等が付着している樹木を所有し、又は管理する者に対し、当該樹木の伐倒及び薬剤による防除又は当該樹木の伐倒及びはく皮並びに森林病害虫等及びその付着している枝条及び樹皮の焼却を命ずること。
2.森林病害虫等が付着し、又は付着するおそれがある根株の存する伐採跡地を所有し、又は管理する者に対し、薬剤による防除又は当該根株のはく皮並びに森林病害虫等及びその付着している枝条及び樹皮の焼却を命ずること。
3.森林病害虫等が付着している樹木又は指定種苗(樹木の種子及び苗であつて農林水産大臣の指定するものをいい、その容器及び包装を含む。以下同じ。)を所有し、又は管理する者に対し、森林病害虫等並びにその付着している枝条又は指定種苗の焼却を命ずること。
4.森林病害虫等の被害を受け、又は受けるおそれがある樹木又は指定種苗を所有し、又は管理する者に対し、薬剤による防除を命ずること。
5.森林病害虫等が付着している指定種苗又は伐採木等の移動を制限し、又は禁止すること。
6.森林病害虫等が付着し、又は付着するおそれがある伐採木等を所有し、又は管理する者に対し、薬剤による防除又は当該伐採木等のはく皮若しくは森林病害虫等並びにその付着している枝条、樹皮及び包装の焼却を命ずること。
 
 農林水産大臣は、松くい虫等が異常にまん延して森林資源たる特定森林に重大な損害を与えるおそれがあると認めるときは、前項の規定によるほか、早期に、かつ、徹底的に、これを駆除し、又はそのまん延を防止するため特に必要な限度において、区域及び期間を定め、高度公益機能森林又は被害拡大防止森林につき、当該特定森林を所有し、又は管理する者に対し、特別伐倒駆除を命ずることができる。
 
 農林水産大臣は、高度公益機能森林又は被害拡大防止森林につき、第1項第1号の規定による命令(松くい虫等が付着している樹木の伐倒及び薬剤による防除に係るものに限る。)又は前項の規定による命令をするに際し、又は命令をした後において、特定原因病害虫にょり当該特定森林に発生している被害の状況からみて、これらの命令のみによつては早期に、かつ、徹底的に、松くい虫等を駆除し、又はそのまん延を防止する目的を達することができないと認めるときは、その必要の限度において、これらの命令の区域及び期間の範囲内で区域及び期間を定め、当該特定森林を所有し、又は管理する者に対し、松くい虫等が付着しているおそれがある樹木(枯死しているものに限る。)の伐倒及び薬剤による防除(以下「補完伐倒駆除」という。)を命ずることができる。
 
 前3項の規定による命令で第8条の規定により損失の補償を伴うものは、これによつて必要となる補償金の総額が国会の議決を経た予算の金額を超えない範囲内においてしなければならない。
 
 第1項から第3項までの規定による命令をしようとするときは、その20日前までに、農林水産省令で定める手続に従い、次の事項を公表しなければならない。ただし、森林病害虫等の駆除又はそのまん延の防止のための措置を緊急に行う必要があるときは、この限りでない。
1.区域及び期間
2.森林病害虫等の種類
3.行うべき措置の内容
4.命令をしようとする理由
5.その他必要な事項
 
 前項第1号の区域内において森林、樹木、指定種苗又は伐採木等を所有し、又は管理する者は、同項の規定による公表があつた日から2週間以内に、理由を記載した書面をもつて農林水産大臣に不服を申し出ることができる。
 農林水産大臣は、前項の規定による不服の申出を受けたときは、当該申出をした者に対し、あらかじめ期日及び場所を通知して、公開による意見の聴取を行つた後、当該申出に対する決定をしなければならない。この場合において、意見の聴取に際しては、当該申出をした者又はその代理人は、当該事実について証拠を提出し、意見を述べることができる。
 農林水産大臣は、第5項ただし書の規定により公表をしないで第1項第1号から第4号まで若しくは第6号、第2項又は第3項の規定による命令をする場合には、その命令に係る措置の実施に必要な準備期間を考慮して、第1項、第2項又は第3項の期間を定めなければならない。
 
 農林水産大臣は、第1項から第3項までの規定による命令をするには、その命令を受けるべき者に対し、次に掲げる事項を記載した命令書を交付しなければならない。
1.第1項第1号から第4号まで若しくは第6号、第2項又は第3項の規定による命令にあつては、次の事項
イ 第5項各号に掲げる事項
ロ その命令を受ける者が、次条第1項に規定する場合に該当することとなつたとした場合には、同項の規定による措置をとることがある旨
ハ 次条第1項の規定による措置をとることにより同条第2項に規定する場合に該当することとなつたとした場合には、同項の規定による費用の徴収をすることがある旨
2.第1項第5号に規定する命令にあつては、第5項各号に掲げる事項
 
10 農林水産大臣は、前項の規定による命令書の交付を受けるべき者の所在がしれないときその他当該命令書をその者に交付することができないときは、農林水産省令で定める手続に従い、当該命令書の内容を公告してその交付に代えることができる。
 
11 第1項から第3項までの規定による命令については、行政手続法(平成5年法律第88号)第3章(第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない。
 
(駆除措置)
第4条 農林水産大臣は、前条第1項第1号から第4号まで若しくは第6号、第2項又は第3項の規定による命令をした場合において、森林、樹木、指定種苗又は伐採木等の所有者又は管理者が指定された期間内に命ぜられた措置を行わないとき、行つても十分でないとき又は行う見込みがないときは、当該措置の全部又は一部を行うことができる。
 
 農林水産大臣は、前項の規定により同項の措置の全部又は一部を行なつた場合において、その費用の額が、同項の命令を受けた者が自らその措置の全部又は一部を行なつたとした場合にその者が受けることとなるべき第8条第1項の規定による補償の額をこえるときは、そのこえる部分の額に相当する額をその者から徴収することができる。
 前項の規定による費用の徴収については、行政代執行法(昭和23年法律第43号)第5条及び第6条の規定を準用する。
(協力要請)
第4条の2 農林水産大臣は、第3条第1項から第3項まで又は前条第1項の規定により森林病害虫等の駆除又はそのまん延の防止のため必要な措置を行う場合において必要があるときは、地方公共団体又は森林組合若しくは森林組合連合会に対し、当該措置の実施に関し必要な業務の内容を記載した文書を交付して、その業務に協力することを要請することができる。
 
(都道府県知事の駆除命令等)
第5条 都道府県知事は、森林病害虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため必要があるときは、その必要の限度において、区域及び期間を定め、第3条第1項各号に掲げる命令をすることができる。
 都道府県知事は、松くい虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため特に必要があると認めるときは、前項の規定によるほか、その必要の限度において、区域及び期間を定め、高度公益機能森林又は被害拡大防止森林につき、当該特定森林を所有し、又は管理する者に対し、特別伐倒駆除を命ずることができる。
 
 都道府県知事は、高度公益機能森林又は被害拡大防止森林につき、第1項の規定による命令(松くい虫等が付着している樹木の伐倒及び薬剤による防除に係るものに限る。)又は前項の規定による命令をするに際し、又は命令をした後において、特定原因病害虫により当該特定森林に発生している被害の状況からみて、これらの命令のみによつては松くい虫等を駆除し、又はそのまん延を防止する目的を達することができないと認めるときは、その必要の限度において、これらの命令の区域及び期間の範囲内で区域及び期間を定め、当該特定森林を所有し、又は管理する者に対し、補完伐例駆除を命ずることができる。
 
 前3項の場合には、第3条第5項から第11項まで及び前2条の規定を準用する。
 
 農林水産大臣は、森林病害虫等がまん延して高度公益機能森林その他の森林資源として重要な森林に損害を与えるおそれがあると認めるときは、都道府県知事に対し、第1項から第3項までの規定による命令に関し必要な指示をすることができる。
 
(通知)
第5条の2 農林水産大臣は、第3条第1項から第3項まで又は第4条第1項の規定により森林病害虫等の駆除又はそのまん延の防止のため必要な措置を行つたときは、遅滞なくその旨を関係都道府県知事に通知しなければならない。
 
 都道府県知事は、当該都道府県の区域において森林病害虫等が発生してまん延するおそれがあると認めたとき、又は前条第1項から第3項まで若しくは同条第4項において準用する第4条第1項の規定により森林病害虫等の駆除若しくはそのまん延の防止のため必要な措置を行つたときは、遅滞なくその旨を農林水産大臣及び関係郁道府県知事に通知しなければならない。
 
(立入検査)
第6条 農林水産大臣又は都道府県知事は、森林病害虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該官吏又は森林害虫防除員に、森林その他樹木が生育している土地、苗畑又は船車若しくは貯木場、倉庫その他指定種苗若しくは伐採木等を蔵置する場所に立ち入らせ、樹木、指定種苗又は伐採木等を検査させ、又は検査のため必要な最少量に限り、枝条、樹皮若しくは包装又は指定種苗を収去させることができる。
 前項の規定により立入検査又は収去をする当該官吏及び森林害虫防除員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者の要求があるときは、これを呈示しなければならない。
 第1項の規定による立入検査及び収去の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(指示権)
第7条 当該官吏又は森林害虫防除員は、前条第1項の規定による検査の結果、指定種苗に森林病害虫等が附着していると認めるときにあつては第3条第1項第3号、指定種苗が森林病害虫等の被害を受け、又は受けるおそれがあると認めるときにあつては同項第4号、伐採木等に森林病害虫等が附着し、又は附着するおそれがあると認めるときにあつては同項第6号に掲げる措置を行なうべき旨を、当該指定種苗又は伐採木等の所有者又は管理者に対し、左に掲げる事項を記載した文書を交付して指示することができる。
1.措置を行なうべき期間
2.森林病害虫等の種類
3.行なうべき措置の内容
4.その他必要な事項
 前項の指示を受けた者が同項第1号の期間内にその指示に係る措置を行なわないとき、行なつても十分でないとき又は行なう見込みがないときは、当該官吏又は森林害虫防除員は、当該指定種苗又は伐採木等につき、自ら薬剤による防除、はく皮、焼却等の処分をすることができる。
(防除実施基準)
第7条の2 農林水産大臣は、薬剤による防除が自然環境及び生活環境の保全に適切な考慮を払いつつ安全かつ適正に行われることを確保するため、森林病害虫等の薬剤による防除の実施に関する基準(以下「防除実施基準」という。)を定めなければならない。
 
 防除実施基準においては、特別防除(森林病害虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため航空機を利用して行う薬剤による防除をいう。以下同じ。)を行うことのできる森林に関する基準、特別防除を行う森林の周囲の自然環境及び生活環境の保全に関する事項、特別防除により農業、漁業その他の事業に被害を及ぼさないようにするために必要な措置に関する事項その他森林病害虫等の薬剤による防除に関する基本的な事項を定めるものとする。
 
 前項に規定する特別防除を行うことのできる森林に関する基準は、当該森林の存する地域の自然環境及び生活環境に対する特別防除による影響に配慮し、国内希少野生動植物種(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号)第4条第3項に規定する国内希少野生動植物種をいう。)、天然記念物(文化財保護法(昭和25年法律第214号)第69条第1項の規定により指定された天然記念物をいう。)等の貴重な野生動植物の生存する森林その他の森林で特別防除を行うことが適当でないと認められるものが明確になるように定められなければならない。
 
 農林水産大臣は、防除実施基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議するとともに、林政審議会及び関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。
 
 農林水産大臣は、防除実施基準を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係行政機関の長及び関係都道府県知事に通知しなければならない。
 
(都道府県防除実施基準)
第7条の3 都道府県知事は、前条第5項の規定による通知を受けた場合において、当該都道府県の区域内にある民有林(森林法第2条第3項に規定する民有林をいう。以下同じ。)において薬剤による防除が自然環境及び生活環境の保全に適切な考慮を払いつつ安全かつ適正に行われることを確保するため必要があると認めるときは、防除実施基準に従つて、森林病害虫等の薬剤による防除の実施に関する基準(以下「都道府県防除実施基準という。)を定め、又はこれを変更しなければならない。
 
 都道府県防除実施基準においては、防除実施基準に定める特別防除を行うことのできる森林に関する基準に適合する森林に関する事項、特別防除を行う森林の周囲の自然環境及び生活環境の保全に関する事項、特別防除により農業、漁業その他の事業に被害を及ぼさないようにするために必要な措置に関する事項その他森林病害虫等の薬剤による防除に関する事項を定めるものとする。
 
 都道府県知事は、都道府県防除実施基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聴くとともに、農林水産大臣に協議しなければならない。
 
 都道府県知事は、都道府県防除実施基準を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係市町村長に通知しなければならない。
 
(薬剤の安全かつ適正な使用等)
第7条の4 特別防除を行う者は、防除実施基準及び都道府県防除実施基準に従つて、自然環境及び生活環境の保全に配慮し、薬剤の安全かつ適正な使用を確保するとともに、農業、漁業その他の事業に被害を及ぼさないように必要な措置を講ずるものとし、地域住民等関係者の理解と協力が得られることとなるように努めるものとする。
 
(高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域の指定)
第7条の5 都道府県知事は、特定原因病害虫により当該都道府県の区域内にある特定森林に発生している被害の状況からみて、松くい虫等を駆除し、又はそのまん延を防止することにより、森林資源として重要な特定森林を保護し、及びその有する機能を確保するため特に必要があると認めるときは、松くい虫等の種類ごとに、民有林である特定森林について高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域を指定しなければならない。
 
 都道府県知事は、高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域を指定し、又はこれを変更しようとするときは、都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聴くとともに、農林水産大臣に協議し、その同意を得なければならない。
 
 高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域の指定又は変更については、第7条の3第4項の規定を準用する。
 
(樹種転換促進指針)
第7条の6 都道府県知事は、前条第1項の規定により高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域を指定した場合において、高度公益機能森林を保護し、及びその有する機能を確保するため必要があると認めるときは、当該都道府県の区域内にある民有林である特定森林において樹種転換を促進するための指針(以下「樹種転換促進指針」という。)を定めなければならない。
 
 樹種転換促進指針においては、樹種転換に係る施業に関する事項、森林組合等による樹種転換の促進に関する事項その他樹種転換の実施の指針となるべき事項を定めるものとする。
 
 都道府県知事は、樹種転換促進指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聴かなければならない。
 
 都道府県知事は、樹種転換促進指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係市町村長に通知しなければならない。
 
(森林組合等に対する樹種転換に関する助言等)
第7条の7 都道府県知事は、高度公益機能森林を保護し、及びその有する機能を確保するため必要があると認めるときは、樹種転換促進指針に即して、森林組合又は森林整備法人(分収林特別措置法(昭和33年法律第57号)第9条第2号に掲げる森林整備法人をいう。)に対し、これらの者が行う樹種転換に関する規程の設定その他の樹種転換の促進に資する措置に関し必要な助言、指導及び勧告をすることができる。
 
(樹種転換を特に促進すべき特定森林の公表)
第7条の8 都道府県知事は、高度公益機能森林を保護し、及びその有する機能を確保するため必要があると認めるときは、樹種転換促進指針に即して、高度公益機能森林又は被害拡大防止森林につき、樹種転換を実施することを特に促進すべき特定森林を選定し、これを公表することができる。この場合において、都道府県知事は、当該特定森林を所有し、又は管理する者に対し、施業その他必要な事項に関し助言及び指導を行うよう努めるものとする。
 
(地区防除指針)
第7条の9 都道府県知事は、第7条の5第1項の規定により高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域を指定した場合において、高度公益機能森林及び被害拡大防止森林以外の特定森林と併せて松くい虫等の被害対策を行う必要があると認めるときは、当該都道府県の区域内にある民有林である特定森林であつて次条第1項の地区実施計画の対象となるものにつき、当該特定森林を所有し、又は管理する者が行うべき松くい虫等の駆除又はそのまん延の防止のため必要な措置(以下「自主防除措置」という。)に関する指針(以下「地区防除指針」という。)を定めなければならない。
 
 地区防除指針においては、高度公益機能森林及び被害拡大防止森林以外の特定森林であつて、その位置及び規模からみて、当該特定森林を所有し、又は管理する者が自主防除措置を的確に行わないとすれば、特定原因病害虫により当該特定森林に発生している被害が高度公益機能森林に拡大するおそれがあると認められるものに関する基準その他次条第1項の地区実施計画の指針となるべき事項(第7条の3第2項の規定により都道府県防除実施基準において定めることとされている事項及び第7条の6第2項の規定により樹種転換促進指針において定めることとされている事項を除く。)を定めるものとする。
 
 地区防除指針については、第7条の6第3項及び第4項の規定を準用する。
 
(地区実施計画)
第7条の10 前条第2項の基準に適合する特定森林がその区域内にある市町村は、同条第3項において準用する第7条の6第4項の規定による通知を受けた場合において、松くい虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、地区防除指針(薬剤による防除に関する事項にあつては都道府県防除実施基準、樹種転換に関する事項にあつては樹種転換促進指針)に即して、その区域内にある当該基準に適合する特定森林につき、自主防除措置の実施に関する計画(以下「地区実施計画」という。)を定め、又はこれを変更しなければならない。
 
 地区実施計画においては、その対象となる特定森林の区域及び当該特定森林についての自主防除措置の実施に関し必要な事項を定めるものとする。
 
 市町村は、地区実施計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、その対象となる特定森林を所有する者の意見を聴くとともに、都道府県知事に協議しなければならない。
 
 市町村は、地区実施計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
 
(地区実施計画の遵守)
第7条の11 地区実施計画の対象となる特定森林を所有し、又は管理する者は、地区実施計画に即して自主防除措置を実施するよう努めなければならない。
 
 市町村長は、前項に規定する者が自主防除措置を実施していないと認める場合において、地区実施計画の達成上必要があるときは、その者に対し、遵守すべき事項を示して、これに従うべき旨を勧告することができる。
 
(国の機関及び関係地方公共団体の連携)
第7条の12 国有林(森林法第2条第3項に規定する国有林をいう。)である特定森林を所管する国の機関及び関係地方公共団体は、森林資源として重要な特定森林を保護し、及びその有する機能を確保するため、相互に連携を図り、松くい虫等の被害対策が調和を保ちつつ行われるよう努めなければならない。
 
(損失補償)
第8条 国又は都道府県は、第3条第1項から第3項まで若しくは第5条第1項から第3項までの規定による命令、第7条第1項の規定による指示又は同条第2項の規定により当該官吏若しくは森林害虫防除員の行う処分により損失を受けた者に対し、損失を補償しなければならない。
 
 前項の規定による補償の額は、第3条第1項第1号から第4号まで若しくは第6号、第2項若しくは第3項の命令又は第7条第1項の指示に係る場合にあつては、樹木の伐倒、破砕又は炭化の措置を行うことにより通常生ずべき損失額に相当する金額及び薬剤による防除、幹若しくは根株のはく皮又は樹木、枝条、樹皮、包装、指定種苗若しくは森林病害虫等の焼却の措置を行うのに通常要すべき費用に相当する金額とし、第3条第1項第5号の命令又は第7条第2項の処分に係る場合にあつては、その命令又は処分により通常生ずべき損失額に相当する金額とする。
 
 第1項の補償を受けようとする者は、農林水産大臣又は都道府県知事に、補償を受けようとする見積額を記載した申請書を提出しなければならない。
 農林水産大臣又は都道府県知事は、前項の申請があつたときは、遅滞なく補償すべき金額を決定し、当該申請人に通知しなければならない。
 前項の決定に不服がある者は、その決定を知つた日から3箇月以内に、訴えをもつて補償金額の増額を請求することができる。
 前項の訴えにおいては、国又は都道府県を被告とする。
(国庫補助)
第9条 国は、都道府県に対し、政令で定めるところにより、この法律の規定により都道府県知事の行う森林病害虫等の駆除又はそのまん延の防止に関する措置に要する費用の一部を補助する。
(分担金)
第10条 都道府県は、第5条第1項から第3項まで若しくは同条第4項において準用する第4条第1項の規定により都道府県知事が行う森林病害虫等の駆除若しくはそのまん延の防止のため必要な措置又は第7条第2項の規定により森林害虫防除員の行う処分により利益を受ける森林、樹木、指定種苗又は伐採木等の所有者又は管理者から、地方自治法(昭和22年法律第67号)第224条の分担金を徴収することができる。
 
(森林害虫防除員)
第11条 この法律に規定する森林病害虫等の駆除又はそのまん延の防止の事務に従事させるため、都道府県知事は、職員のうちから、森林害虫防除員を命ずるものとする。
 
(森林組合等による調査のための立入り)
第11条の2 森林組合若しくは森林組合連合会又は森林病害虫等の防除の促進を行うことを目的とする民法(明治29年法律第89号)第34条の規定により設立された法人(以下「森林組合等」という。)は、都道府県知事の委託を受けて森林病害虫等の発生状況に関する調査を行うため必要があるときは、その必要の限度において、当該調査に従事する者を他人の土地に立ち入らせることができる。
 
 前項の場合においては、森林組合等は、あらかじめその旨をその土地の占有者に通知しなければならない。
 
 第1項の場合においては、同項の調査に従事する者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の要求があるときは、これを提示しなければならない。
 
 都道府県は、第1項の規定による立入りにより損失を受けた者に対し、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
 
(通報義務)
第12条 森林病害虫等が発生してまん延するおそれがあると認めた者は、遅滞なくその旨を都道府県知事又は市町村長に通報しなければならない。
(罰則)
第13条 農林水産大臣又は都道府県知事の第3条第1項第5号に掲げる命令に違反した者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
 
 
第14条 次の各号の一に該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1.農林水産大臣又は都道府県知事の第3条第1項第6号に掲げる命令に違反した者
2.第7条第2項の規定による処分を拒み、妨げ、又は忌避した者
 
 
第15条 次の各号の一に該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
1.農林水産大臣又は都道府県知事の第3条第1項第1号から第4号までに掲げる命令に違反した者
2.第3条第2項若しくは第3項又は第5条第2項若しくは第3項の規定による命令に違反した者
3.第6条第1項の規定による検査又は収去を拒み、妨げ、又は忌避した者
 
 
第16条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前3条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

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