鳳凰三山( 観音岳:2,840m ) 2000.07.20 登山


  ガスの中に見えた地蔵岳オベリスク ( 2000.07.20 )

【鳳凰三山再登山記録】

【鳳凰三山登山データ】


鳳凰三山再登山記録

11年ぶりの鳳凰三山である。
11年前の 8月に登った時は、 青木鉱泉からドンドコ沢を登り鳳凰小屋に 1泊、 翌日は地蔵岳のオベリスクの根元 ? まで行った後、 赤抜沢ノ頭から観音岳、薬師岳を越え、 最後は夜叉神峠へと下山したのであった。

天候は当初晴れていて富士山もよく見えていたものの、オベリスクの根元に着く頃から曇りがちになり、赤抜沢ノ頭を越えた頃からは 完全にガスの中であった。
従って、 ガイドブックなどで 白砂輝く稜線の向こうに富士山の姿を配した縦走路の写真をよく見かけるが、 そのような光景は叶うはずもなく、 南北・中央を通じて初めてのアルプス縦走は やや悔しさを残すものになったのであった。 そのため、チャンスがあれば もう一度チャレンジしたい山であったものの、 山中 1泊ということで時間を取られるのがどうもネックとなり、 二の足を踏まざるをえなかったのだが、 あるガイドブックに 青木鉱泉から薬師岳に直登する中道コースが紹介されているのを見つけて、 急に鳳凰三山 日帰り登山実現に光明が射したのであった。
つまりこの最短コースを登れば、 最悪の場合でも薬師岳往復、 うまく行けば薬師岳、観音岳、地蔵岳と縦走した後 ドンドコ沢を下り、 青木鉱泉に下山することが 1日で可能なのである。

思いついたら即実行ということで、 早速、この 7月 20日の海の日にトライすることにしたのであった。

前日の天気予報では、当日は晴れのち曇りということであったものの、早朝 家を出ようとすると、空は雲に覆われており、 またこれから向かう西方の空に至っては 雨雲のように雲の色が黒かったので、 イヤな予感が胸をよぎったのであった。 しかし、このところ山に行っていなかったこともあって、 ここ止めたらまた当分山に行けないという思いの方が強く、 とにかく出発することにしたのである。

案の定予感は的中し、八王子バイパスを通る頃には小雨が降り出し、中央道でも時々雨という状況で、泣きたい気持ちに陥ったのであったが、 ここまで来て引き返すのは格好がつかないと思い、 途中で聞いたラジオの天気予報の 「本日は晴れ」 と言う言葉だけを頼りに 登山口である青木鉱泉まで行ってみることにしたのであった。

この青木鉱泉へは、韮崎ICで高速道を降り、韮崎駅前を過ぎて国道20号線を横切った後、甘利山登山口への道へと入ってから途中で分かれ、 鳥居峠経由で行くつもりであったのだが、 この道が良く分からない。 15分ほどウロウロした後、ようやく道を見つけたものの、 念のためにと 通りかかった地元の人に確認したところ、 この道は悪路で四駆でなければ難しいと言われ、 結局、昔 鳳凰三山に登る際にタクシーで通った 上円井からの道を使うことにしたのであった。 道に迷ったことも合わせると、 40分以上はロスしたことになり、 これが後で利いてくるのであった。

ようやく着いた青木鉱泉を出発したのが 7時14分。薬師岳方面と書かれた道標に導かれて、かなり川幅のある川を石づたいに渡り、 護岸工事を施されてコンクリート化された土手に付けられた階段を登って 向こう岸に立つと、 すぐ川上に林の中へと導く矢印があるのが目に止まった。
道は露に濡れた草に覆われていたため、ズボンが濡れてしまい、 この道は整備が進んでいないのではと心配になったのだが、 道はそう長くは続かず、 すぐに林道に飛び出したのであった (7時20分)

林道は護岸工事のために今も使われているのであろうか、舗装されてはいないものの車が頻繁に通っているようでしかりと踏み固められており、 歩くのにはそれほど苦労しない。
途中から薄暗い林の中を抜け、 大きく広い河原の縁を通るようになって周囲が見渡せるようになったが、 空は曇っており、しかも周囲の山々は雲の中で、 どうやら本日の登山も、輝く砂の縦走路は期待できないようである。 ただ、雲間に時として青い空が見えることもあり、 また日も時々射すようになってきたので、 最悪の天候だけは免れそうである。

やがて林道横の林の中に小さな小屋を認めると、その先の空き地に車が 3台ほど止まっており、そしてそこには薬師岳への登山道を示す標識も見えたのであった (7時43分) いよいよ長い中道コースの始まりである。

林の中を少し進むとすぐに廃屋が目に飛び込んできた。聖岳を登る際に見た廃屋と同じく、薄暗い林の中にツタや草で覆われた家があり、 かなり薄気味が悪い。
水場を過ぎると、本格的な登りが始まったのだが、 このコースは思った以上にキツイものであった。 登り勾配はそれ程でもないのだが、 視界の利かない樹林の中をダラダラと、 本当にダラダラと登り続けなくてはならないのである。 普通は、途中途中に景色の良い場所があったり、 休憩にはもってこいの平らな場所があったりして、 登山にもメリハリがつくのであるが、 このコースにはそういうものがほとんどないのである。

途中一度だけ樹林が切れて周囲の山々が見える場所があったのだが (2,050m付近と思う)、ここも腰を下ろすような場所ではなく、 しかもこの場所に着いた時だけ雲が切れて 暑い日差しが照りつけたものだから、 私は休むタイミングを失ってしまったのであった。

再び樹林の中を進んでいくと、登山道の所々に大きな岩が出始めてきたので、どこかに休憩に良いポイントがあるのではないか と期待したのだが、 それが全くと言って良いほどないのである。
そして登るに連れてガスが出始め、 周囲がほとんど見えない中、 やがてやや平らな小広い場所に出たのだが、 そこは乱雑に木々が切られたようになっている上に、 全体的に湿っているような場所で、 しかもガスも濃かったことから休む気になれず、 結局そこも素通りしたのであった。

登山道は良く踏まれており、途中に道標もあるものの、距離を推し量るものは一切なく、従って今 自分がどの辺を歩いているのかが全く分からない という状態であった。 これは聖 岳光 岳といった南アルプス南部と同じで、 こういう状況はペース配分が分からずに結構疲れるのである。

喘ぎつつ樹林の中を進んでいくと、やがて大きな岩が目の前に見えてきたのだが、これが御座石であろうか。岩が算盤のたまのような形をして 真ん中が張り出しているので、 岩の下部で雨宿りができそうである (10時42分)
ここも薄暗く湿っている感じで休むには適さず、 結局そこから 10分ほど登ったところにあった倒木に腰を下ろして、 ようやく大休憩をとったのであった。
地図で調べると 御座石の場所は記されているものの、 そこから頂上までの所要時間は書かれていない。 しかし、これまで要した時間とこれからの距離から類推して、 頂上着は 12時頃ではないかと思われる。 あとおよそ 1時間である。

樹相も大分変わり、ダケカンバなども目立ってきたのでかなり登ってきたなと思う頃、パラパラと雨が降り始めた。どうもこのパターンは 最近の南アルプス登山と同じである。 ただ違うのは、 光 岳、聖 岳ではその雨が本格的なものに変わっていったのに対し、 今回はすぐに止んでくれたことである。

周囲の木々も背丈が低くなり、高山植物もチラホラ見かけ出すと、やがて右方に突き出た岩が見えてきた。どうやら展望台のようになっているらしいのだが、 とても立ち寄る気になれない。
やがて足下が黒土からいつの間にか茶色い花崗岩の屑に変わり、 周囲にハイマツが見え始めると、 目の先には大きな岩が沢山見え始め、 その背景には嬉しいことにか青い空が拡がっていたのであった。 頂上間近 と心浮き立つものがあったが、 そこから頂上まではまだ結構距離があり、 その間に青空は逃げてしまい、 結局薬師岳頂上に着いた時にはガスの中であった。
このことは覚悟していたとは言え、 青い空が一瞬でも見えただけにタイミングの悪さを呪うばかりである。

時刻は図ったように 12時ジャスト。実は薬師岳頂上手前で右に行くべきか左に行くべきか迷って、少し右への道を進んでしまって 時間をロスしたからである。 しかし、左の頂上より右にある岩峰の方が高さがあるように見える。 こちらが本当の薬師岳頂上なのかもしれない。

この薬師岳に登り着くまでの間、やや太り気味のために身体が重く、もう縦走は無理だなと思っていたのだが、時間はまだ 12時、 ここから地蔵岳まではそれほど起伏もないはずなので、 頑張って縦走を試みることに切り替えたのであった (12時15分発)

登山者は薬師岳の頂上に 1人いただけで (朝、夜叉神峠から登ってきて、薬師小屋泊とのこと。四国から来られたそうです)、縦走路上には誰もおらず、 またガスで先の視界がよく利かない中、 若干心細さを持ちながら進んでいくことになった。

所々に道標らしきものはあるものの、視界の利かない中、白砂の上の見えにくい踏み跡だけを頼りに進むというのは結構心細いものであったが、 薬師岳を出発してわずか 21分、 目の前の高みに登ると そこは懐かしい観音岳頂上であった (12時36分)
頂上には薬師岳と同じく 例の 山梨百名山の標柱があり、 昔の記憶にあった茶色い板の標識はそのそばに朽ちて倒れていて、 11年という時の流れを感じずにはいられなかった。

観音岳付近では、ガスが時々切れて縦走路の先が半分ほど見えたりすることもあったものの、やはり今回もガイドブックの写真のような構図を体験できず 残念である。

観音岳で暫く休憩した後 (12時56分発)、一気に下っていくと、道は突然樹林帯の中を下ることになった。確かに前回の時もこの樹林帯を登ってきた記憶があったのだが、 あまりにもドンドン下るので、 道を間違えて 鳳凰小屋へのショートカットに入り込んでしまったのではないか と錯覚に陥る程であった。

しかし、やがて再び花崗岩屑の斜面に飛び出し、草木のない岩と岩屑だけの灰色の世界を横切るようになると、すぐに本当の 鳳凰小屋へのショートカット分岐が出てきたのであった。 これで道の正しさを確認して一安心だったのだが、 そこから先がいけなかった。 岩に付けられた赤い目印を辿っていくと 途中で道が分からなくなってしまったのである。
かすかに踏み跡らしきものが下方に見えたので 岩を下りて進んだのだが、 どうも道ではないらしいと私の感覚が告げる。 道を戻って、 岩の上をウロウロすること 2、3分、 ようやくそのまま岩の上を進む道が見つかったのだが、 全面花崗岩と砂の灰色の世界である上に、 ガスで視界が利かない状況だと 往々にしてこういうことが起こる。

小さなピークを乗り越すと、たまたまガスが晴れてくれて、先の方に地蔵岳のオベリスクが見えてきた。感激である。いつ見ても この自然の造形物は素晴らしい。 周囲の岩の重なり方、 天を突くその姿、 本当に完璧である。

そのまま一旦下った後登り返していきながら、感覚ではやがて右に下りていくことになると思ったのだが、道はドンドン先へと進んでいく。 目印となるオベリスクも再びガスに入って見えずといった状況で、 心細さが増してきた。
しかも私は勘違いをして 観音岳から地蔵岳まで 30分と思っていたので、 30分経っても地蔵岳に着かない現状に 右へ下りる道を見過ごし、 アサヨ峰への道を進んでしまったのではないか と心配になってきたのであった。

ようやく小さなピークの所から右に下りる踏み跡を見つけたので下っていくと、何のことはない、またグルリと回って 今通ってきた縦走路の出てしまったのであった。 分岐を示す標識がなかったことからおかしいとは思ったのだが、 この辺は色々ルートがあって そこをぐるっと回ってしまったらしい。

仕方なく、先ほどのピークに戻って更に先へと進むと、有り難いことに休憩している人がいたのである。このように心細さが出てきた時に人に会うと 本当に嬉しいものである。
その人は夜叉神峠から登ってきて 今晩は早川尾根小屋に泊まるとのことであったが、 話ながら地図を調べると、 観音岳から地蔵岳までは 1時間を要することになっており、 距離的に分岐は未だ先になることが分かったのであった。
やはり慎重さをもって、地図を見なければならない。

その人と別れて先に進むと、確かに地図の通り、少し先が分岐であった。一安心である。砂地をえぐったような道を下って辿り着いた所は賽ノ河原。 地蔵岳の標識もある (13時52分)

そしてタイミングの良いことに、ガスも晴れだし、オベリスクが姿を見せてくれたのであったが、前回行ったオベリスクの根元までは相当な距離があると思われ、 今回は写真だけ撮ってパスしたのであった。

後は一気に青木鉱泉まで下るだけであるが、距離は相当あるはずである。
再び立ちこめるガスの中、 砂状の脆い斜面にジグザグに切られた道を下り、 樹林帯に入らんとした時、 何とポツリポツリと雨が降り出してきたのであった。 しかも、あれよあれよと思ううちに、 土砂降りになったのである。

雨具を着けるのも面倒と、傘だけさして樹林帯の中を下ったのだが、雨はバケツをひっくり返したように激しくなり、登山道は 見る間に濁流へと変わったのであった。 まるで、聖 岳下山時の再現フィルムのようである。

傘はさしていても、身体に触れる木々に付いた雨で全身びしょ濡れである。
この時に頭に浮かんだことは、 北御室小屋跡の河原が増水して通れないのではないか ということと、 青木鉱泉からの先の道に崖崩れなどないか ということである。

そんなことを考えながら急いで下っていくと、すぐに鳳凰小屋で、その意外な近さに驚かされたのだが、それよりも 昔懐かしい小屋のご主人が 11年前と同じ顔をして (当たり前) 小屋の入口に立っておられたことの方が 驚きであった (14時11分)

ご主人に下山路で通れなくなる可能性がある所があるかと聞いたところ、大丈夫とのことで これまた一安心である。別れ際、大変だね、 気をつけて と言ってくれた言葉が大変嬉しかった。

激しかった雨も徐々に小降りとなり、以前登った際に昼食をとった北御室小屋跡の河原に着く頃には もうほとんど止んでくれ、 しかも振り返ると嬉しいことに、 先とは全く違う形を見せるオベリスクが見えたのであった (14時22分)

再び樹林帯を下っていき、五色の滝に着く頃には完全に雨も上がっていたので助かった思いがしたのだが、その後よく観察すると、 途中から全く雨が降った痕跡がないことに気が付いた。 どうも雨は山の上部だけに降ったらしく、 それも上部ほど雨が激しかったようなのである。
今朝ほどロスした 40分という時間と、 途中で道を迷ったことがなければ、 この雨には遭わずに済んだかもしれない訳で、 タイミングの妙を思い知った次第である。

余裕があれば滝を眺めながらの下山ができたのであろうが、この頃には疲労もピークとなり、結局、滝群はほとんどをパスして 一気に下ったのであった。 それにしてもこの下山路は長い。 昔、よくもまあこんな道を登ったものである。

やがて道も平らになりはじめると、目の前に分岐が現れ (16時31分)、山側のコースと、川側のコースに分かれることになった。 標識に記載してある所要時間は川の方が若干短く、 しかも 山の方はまた登り下りがあると思われたので、 迷うことなく川側のコースを選んだのだが、 この道は以前登った時にはなかったと思う。

河原沿いの道とは言え、河原に堰堤を作るために車が通れるようにした道らしく歩きやすい。いくつかの堰堤を越えると やがて林の中に続く青木鉱泉への道が現れ、 少し進むと青木鉱泉の母屋であった。
時刻は 16時51分 本当にくたびれたが、 よくもまあ歩いてきたと自分を誉めたくなる。 久々に達成感のある山行であった。

ただ、この登山記録にはあまり書かなかったが、身体がダブついて重いと感じることが多く、かなり息も上がったところがあり、 自分の身体の管理について 大いに問題点を露呈させた山行でもあった。
また、 一度通ったコースということで油断もあり、 少々道に迷う羽目になったことも反省材料である。


鳳凰三山登山データ

上記登山のデータ登山日:2000.07.20 天候:曇り後雨単独行日帰り
登山路:青木鉱泉−林道−薬師岳登山口−御座石−薬師岳−観音岳−赤抜沢ノ頭−地蔵岳−鳳凰小屋−五色の滝−南精進ノ滝−分岐−青木鉱泉
交通往路:瀬谷−八王子IC−(中央高速道路)−韮崎IC−上円井−青木鉱泉 (車にて)
交通復路青木鉱泉−上円井−韮崎IC−(中央高速道路)−相模湖IC−厚木−(国道246号線)−瀬谷 (車にて)


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