登山NO.0077 八 幡 平( 八幡平:1,613m ) 1998.10.11登山


 ガマ沼の展望台から眺めた八幡沼( 1998.10.11 )

【八幡平・裏岩手連峰登山記録】

【八幡平・裏岩手連峰登山データ】

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NO.77 八幡平・裏岩手連峰登山記録

東京駅八重洲口 23時10分発盛岡行きの夜行バスは、ほぼ定刻通り、翌朝午前6時30分に盛岡駅前に着いた。
バスを降りると半袖の身では肌寒く感じられ、 吐く息も白く、 八幡平行きのバスを待つ間に見つけた駅前ビル設置の温度計が 10゜Cを指していたので、 恐らく夜行バスを降りた時点では 7゜Cぐらいだったのではあるまいか。 東北は寒い。

八幡平行きのバスは、盛岡駅手前のバスセンターからの乗客も併せて20名ほどを乗せ、7時27分に盛岡駅から約2時間の旅に出発した。

最初はガスがかかったようになっていた天候も徐々に晴れだし、やがてバスの左側には雄大な岩手山の姿が見えるようになった。
窓から見えた岩手山は、 何事もなく悠然としているように見えたのだが、 現在火山性の地震頻発により登山禁止となっているようで、 何か大変もったいない気がする。

バスは松川温泉への道を分け、アスピーテラインに入るといよいよ八幡平で、紅葉に染まった山腹を快調に飛ばして・・・ と言いたかったのだが、 接触不良なのか、 非常ベル ? が車内に響き渡り、 おまけに信号停止した際に小用のためにバスから降りて 暫くバスを待たせる人までいたものだから、 時間ギリギリの設定にて登山計画を組んでいる私にとっては あまり気分上々ではなかった。

八幡平手前の黒谷地に着いたのが9時28分、予定より約10分の遅れである。
この黒谷地の手前にある茶臼口では3、4人降りたものの、 黒谷地で降りたのは私一人だけであり、 あとの人は皆八幡平頂上まで行くわけで、 たった一人降りる登山姿の私を 他の人はどう思ったのであろうか (黒谷地で降りた理由については 「山の雑記帳:八幡平、蔵王の山旅」参照)

バスを降りると道路の反対側に登山口があり、すぐさま木道歩きとなった。
池塘の間を抜け、 美味しそうな水がわき出している熊の泉を通り過ぎると やがてT字路となったが、 ここが本来の縦走路であり、 右が茶臼岳、 左が八幡平である。

ここまでのほぼ平坦な木道に別れを告げてT字路を左に進むと、すぐに土が大きくえぐられた溝状の道へと変わり、 登りも少々きつくなってきたが、 息が上がるほどでもない。

やがて、右に源太森の分岐が現れたので登ってみると、何のことはないほんの1分弱で人々が大勢憩っている源太森頂上であった (10時08分着)
バスの中で聞いた解説(テープ)によれば、 茶臼岳とこの源太森、 そしてこれから登る畚岳 (もっこだけ) が八幡平における3大展望台だそうで、 その通り、 源太森からは眼下に広がるアオモリトドマツの樹林、 八幡沼、 そして黄金色に輝く草地が眺められ、 また振り返れば岩手山の大きな姿を見ることができ、 雲一つない青空だったこともあって爽快な気分になるとともに、 今日1日の山行への期待に胸が膨らんだ。

源太森を後にすると池塘の点在する広い湿原となり、その中を走る木道を進むことになって、やがて大きな八幡沼の辺を通過し、 さらに少し登って八幡沼が一望できるガマ沼の展望台へと着いた。

八幡沼の周辺まではまだ登山服姿の人が多かったのだが、もうこの展望台近辺からは完全に観光客の姿の方が多くなり、 八幡平頂上へと続く石畳の道も観光客で一杯であった。

八幡平頂上には立派な標識と展望台があり、その展望台に書いてあった地図で岩手山の左横に見える山が早池峰山であることを知ることができた (10時33分着)
頂上は観光客でごった返していて 記念写真を撮るのも順番待ちが大変で、 私は写真を撮ってもらうと逃げるようにして駐車場へと向かったのだが、 そこへの石畳の道もチンタラ歩く (失礼 !) 観光客で埋め尽くされており、 抜かせてもらうのに大変苦労した。

見返峠駐車場にある案内所で、松川温泉発の最終バスの時間 (17時5分) を確認した後、車道を下って畚岳 (もっこだけ)登山口へと向かった。

畚岳は3大展望台の一つというだけあって、独立峰のようにすっくと立ち上がって立派な山容を見せており (トロイデ型) 登高意欲を十分にかき立ててくれる。
八幡平が平べったい饅頭のようになっていて、 「登った」 というよりは 「歩いた」 という感が強かっただけに、 こういう登り甲斐のある山は嬉しい。

この畚岳への登山道は、裏岩手連峰縦走路の始まりでもあり、これからの長い行程を思うと時間との兼ね合いで少々焦り気味になる。

少しぬかるんで、所々流水も見られるササの中の道を進んでいくとやがて畚岳への分岐となり、少々急な道を息を切らせながら登り切ると すぐに頂上となったが、 何とそこには30人近くの人がひしめき合っていた (団体だったようで、 すぐに皆下山してくれたので助かった。 11時25分着

さすがに展望は素晴らしく、特にこれから進む縦走路方面の山々、そしてその一番後ろに控えている岩手山が圧巻であった。

食事をとった後、縦走路に戻ってササ原の中を進んだが、この道はよくササが刈られており、なかなか手入れが行き届いていたのに感心させられた。

振り返れば畚岳が富士山のような美しい形を見せており、また前を向けば池塘の向こうに岩手山が見え、 ササが銀色に輝いて大変素晴らしい景色である。

やがて樹林帯の中の登りとなったが、涸れ谷を登るような感じで、所々水があり、道がぬかるんでいるのには若干手こずらされた。
樹林帯を抜け出すと、 そこはササ原というよりはササ畑と言った方が適切な、 一面が私の背丈ほどあるササの林で、 その中に切り開かれた道を進む様子は、 まるでサトウキビ畑の中を進んでいるような感じであった。

再び樹林帯に入ったかと思うとすぐに抜けだすことになり、着いたところが諸檜岳頂上であった (12時20分着)
本当の頂上は 縦走路からはずれたところにあるのかもしれなかったのだが、 標識自体は縦走路が大きく左にカーブする角に置かれていた。

諸檜岳を後にして気持ちの良いササ原を進み、樹林の中を下っていくと (道はぬかるみ)、目の前に大きな池が現れたが、 これが石沼であった。
この沼には魚などがいるのだろうか、 誰もいない静かな池を見ていると何となく寂しい。

やがて、前諸檜を越えると目の前がスパッと切れ落ちている場所となり、眼下には八幡平の樹林が広がっているのが一望でき、 樹林の中を八幡平樹海ラインの車道が走っていて、 鏡沼とその後方には大きな岩手山がデンと構えているのが見えた。

また、縦走路の先には、鋭角な頂上を天に向けて突き出している嶮岨森 (けんそもり) が控えており、やや疲労を覚え始めた体には 少し登るのが億劫に感じられ始めたのであるが、 登ってみると意外に早く頂上に着くことができ、 360度の大展望を我が物にすることができた (13時12分着)

嶮岨森を後にするとやがて大深山荘で、ここにはお花畑や水場もあるのだそうだが、時間の関係から先を急いだ。
山荘からは 大きく溝状にえぐられた道を登って明るい尾根に出ると、 やがて右 大深岳経由三ツ石山経由松川温泉への道と 源太ヶ岳経由松川温泉への道の分岐点となったが、 ここでどちらに進もうか少々迷ってしまった。

「17時5分発のバスに乗るには三ツ石山経由ではちょっとキツイかもしれない」 と思ったものの、 折角ここまで来たのだからという気持ちの方が強く、 少し頑張ってみようということで、 三ツ石山への道をとることにした (14時00分)

なだらかなピークの大深岳を越ていくと、やがて目の前が大きく開けてこれからの縦走路が見えるようになったが、 ゴールまでの長さを実感させられ、 少々焦り気味になった。
ドンドン下って行き、 水場を横切ると、 そこからは目の前に立ちはだかるようにそびえる小畚山の登りとなって、 本日一番の息切れと、 辛い登りとなった (14時40分頂上着)

辛い登りだっただけに小畚山の展望は抜群で、特にこれから登る三ツ石山へと続く縦走路は、気持ちの良い草原の中の道となっており、 その先には出臍 (デベソ) のような岩を頂上に抱く三ツ石山が見えており、 やや傾きかけた太陽の下で銀色に輝くササ原や アオモリトドマツの濃い緑が印象的であった。

草原の中を進み、三ツ沼を過ぎて、いくつかのピークを越えていくと、やがて目の前に黄金色の草原が広がり、 そのなだらかな登りの先には 地蔵岳のオベリスクを思わせる三ツ石山の頂上岩がハッキリ見えるようになり、 疲れてはいたが、 柔らかい太陽の光を受けながらの爽快な登りとなった。

三ツ石山頂上の岩場は、ケルンがいくつかと測量に使うのか反射鏡が置いてあるだけで標識などはなく、 些か拍子抜けさせられたが (標識は下の登山道脇にあった) やはりここも展望は抜群で、 来し方を眺めれば 緑や黄金色の絨毯の中に縦走路が1本の線を引いており、 目の前には岩手山のどっしりした姿、 そして紅葉と言うよりは 濃い緑と茶色の混ざった山裾から立ち上る湯煙が印象的であった (松川温泉の地熱発電所から昇っている蒸気と思われる。 15時24分着

暫し最後の大休止を行った後、松川温泉を目指して下ったが、三ツ石山から松川温泉までの下山路は悪路の連続で、 まずは山頂直下の道が大変滑りやすく、 さらに三ツ石山荘からはぬかるみ、 水たまりの連続となり、 しかもダラダラとした下りで一向に高度が下がらず、 スピードも出せず、 展望は得られずで、 大変イライラが募る道であった。

いい加減うんざりしてきたところで、大きな丸い鉄板に28と書かれた (スキーの目印か ?) 標識が現れたのであるが、 ここからは今までのトドマツやシラビソ、 ツガなどあまり秋を感じさせない木々の中の下りから、 一気に秋を感じさせる紅葉の中へと入ることになり、 また樹林の間からは夕日を浴びて赤く輝く岩手山を見ることができ、 急に元気が湧いてきた。

やがて急坂を下ると松川荘の駐車場で、時計を見ると 16時52分、ギリギリでバスの時間に間に合った。

八幡平という本来の目的の山はとても 「登山」 と呼べるレベルのものではなく、少し後ろめたさが残ったのだが、 その後の裏岩手連峰の縦走は素晴らしいの一言で、 これでお釣りが来るくらいである。
ただ、 時間との勝負でかなりきつかったことは否めない。

三ツ石山経由ではなく源太ヶ岳を経由して松川温泉に下れば余裕があったのかもしれないが、分岐から三ツ石山までの縦走路は大変素晴らしく、 山を楽しむにはやはり後者の道をとるべきであろう。
大満足の1日であった。

 

八幡平・裏岩手連峰登山データ

上記登山のデータ登山日:1998.10.11 天候:快晴単独行夜行日帰り(盛岡泊 翌日 蔵王 登山)
登山路:黒谷地−源太森−八幡沼−八幡平−見返峠駐車場−畚岳登山口−畚岳− 石沼−諸檜岳−前諸檜−嶮岨森−大深山荘−大深岳−小畚岳−三ツ沼−三ツ石山−松川温泉
交通往路:東京駅八重洲口−(バス車中泊)−盛岡駅−(バス)−黒谷地
交通復路:松川温泉−(バス)−盛岡 (盛岡泊、翌日 蔵王 登山)


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