オレがダイビングを始めた理由             1つ上に戻る


オレが何故ダイビングを始めたか・・・ 正直言ってはっきりしたきっかけはない。たまたま
ダイビングのライセンスを持った会社の上司O氏から 『ダイビングやろう』と誘われたのが
きっかけである事は確かなのだが、彼とは1度もスクーバダイビングを楽しんではいない。
ただ その当時何か新しいものにチャレンジしたいとは考えていた。それが偶然ダイビング
だったと言える今から思えばこんなはっきりした動機もなかったのによくぞ10年以上もの
期間 潜り続けていると思う。

実は小さい頃から魚を見るのが大好きだったのもダイビングを始めた動機だったのかも
しれない。オレの育った三重県四日市市は高度成長期における公害で有名な街である。
だから子供の頃、海で遊んだ記憶は少ない。むしろ淡水魚に非常な興味を持っていた。
釣りも大好きだったのだが、タナゴやモロコの仲間は季節になると個性豊かな婚姻色に
変わる。それが見事 且つ不思議で魚が大好きだった。

採取した魚を家に持って帰りその動きを観察したり、地方に生息する淡水魚の生態や
味(??)なんぞも調べたものだった。きっとそんな魚に対する思いがダイビングと繋がった
のだろうと思う。正直、ダイビングの講習を終えた時は未だ池で潜りたいと思っていた。

ともあれこれだけ長期にわたりダイビングを続け、イントラにまでなったのも運命なのかも
しれない。可能な限り長くダイビングを続けたいと思っている。
 
 

これからダイビングを始める人へ           1つ上に戻る



ダイビングというスポーツ(レジャーと言うべきか)は近年ダイビング器材の進化と共に
非常に手軽になってきています。ダイビングショップも全国各地にあり、スクールも常時
開催されています。

これからダイビングを始めようと思っている人は是非ダイビングスクールで講習を受けて
下さい。ダイビングのライセンスは免許ではありませんのでいわゆる自己流で潜ったと
しても法的に罰せられる事はありません。が、事実 ダイバーの事故を見るとライセンス
未取得者の事故が後を断ちません。ダイビングは非常に特殊なスポーツである事を
認識しましょう。

では何が特殊か? それは高圧環境下での活動となる為です。通常、我々は陸上で
1気圧の大気圧下で生活しています。水中では10m潜る毎に1気圧づつ加算された
圧力に体が包まれます。つまり水深10mでは2気圧、水深20mでは3気圧、水深
30mでは4気圧もの高圧下にさらされる事になります。我々の肺は周囲圧と等しい
圧力の空気を吸わないとつぶされてしまうので 水深20mでは3気圧(=陸上の3倍)
の空気を吸う事になります。レギュレータという器材によりこの調整がなされ、何も
意識せずに常に周囲圧と等しい空気を吸っているのです。

しかし、高圧環境は空気タンク(今はボンベとは言いません:ボンベの語源がボンブ=
爆弾 だからです)の中の空気成分(酸素20%、窒素80%)の分圧にも影響を与え、
様々な弊害をもたらす危険性があります。必ずダイビングスクールで講義・講習を受け、
必要な知識を習得した上で安全なダイビングを楽しみましょう。

さてダイバーとしての重要な能力の1つに泳力があります。最近は多くのダイビング
ショップで主に女性客を対象とした 『泳げなくても大丈夫』というフレーズを使い顧客の
意欲をかきたてています。実際に器材の進歩で これはあながちウソとは言えません。
昔は自分の脚力で浮力を作ってzいたのを 今はBCという浮力調整装置が代行して
くれます。

しかし、実際に全く泳げないのは問題です。海はいつも穏やかではなく、常にインスト
ラクターが初心者1人につきっきりとは限りません。イントラも人間です。必ず能力には
限界があります。つまり海で自分自身を守るのはイントラではなく、自分自身である事を
認識しましょう。

泳ぐ力は個人差があります。不得意な人もたまにプールに行って泳力をつけましょう。
何より自信になるし、 ダイビングの上達にもなります。普段から水に接している事で
焦りから引き起こすパニックも少しは防げるはずです。
 
 

何故ダイビングが素晴らしいのか            1つ上に戻る



ダイビングは実に素晴らしいレジャー&スポーツだとつくづく感じます。既にダイビングを
されている人は判っている部分も多いと思いますが、ダイビングに理解の無い人向けに
何故ダイビングが素晴らしいのかを説明しましょう。

先ずダイビングの素晴らしい点は水中生物とのコミュニケーションにあります。これは
実際に水中に潜ってみると判るのですが、水中では陸上と違い生物にかなり近づける
のです。バードウォッチングとは違うのがこの点です。そりゃぁ自らのエアーの排気を
ボコボコ出して近づけば生物も逃げてしまいますが、そぉ〜っと近づけば殆どの生物は
その生態を見せてくれます。

水中の生物は本当にいろいろな事を教えてくれます。小さな生物がけなげに生きている
姿は何か自分に力を与えてくれる様な気がします。例えば食卓でもお馴染みのマダコ。
マダコの母親は産卵するとその卵が無事に孵化するまで新鮮な海水を送り続けます。
その間は一切の食事はしないと言われています。悲しいかな(当のマダコはそんな事を
思ってもないでしょうが)マダコの母親はその後 死んでしまいます。命の尊さまで海が
教えてくれるのです。しかもライブで。

また自分より大きな生物との遭遇ではその迫力に圧倒されます。我々ダイバーが泳ぎ
きれない程の速い潮流を悠然と泳ぐイソマグロ等の大型回遊魚にはド肝を抜かれます。
図鑑では『大きなモノは2m』と書かれているイソマグロですが、水中で見ると自分より
遥かに大きく感じます。それが尾ビレをキュ・キュを振る毎にあたかも涼しげに目前を
通過していくのです。我々のエアー排気は上ではなく、横に流れていく潮流を見事に
進んで行く姿には自然の大きさを痛感します。

ダイビングの素晴らしさは何も生物ウォッチングに限った話ではありません。何よりも
素晴らしいのが友人です。普通のスポーツと違って ある種命がけとも言えるダイビング。
ここで知り合った仲間は真の友人になり得ます。ダイビングではバディ・システムという
2人(もしくは3人)で1組という互いをサポートし会うスタイルで潜るのが通常です。
バディは互いの様子に異常が無いか、チェックします。自分の命を守るのはあくまでも
自分自身ですが、自分でも見えない部分をバディがサポートするのは大切な事です。
だからバディとして潜った仲間同士は友人になれるのです。これは他のスポーツとは
違った部分かもしれません。

ダイビングショップ等の主催するツアーに参加するのはとても有意義です。自分とは
職業の全く異なる人や、考えの違った人に出会えるからです。我がダイビングショップ
でも公務員、医者、看護婦、自営業、OL、会社員・・・様々な職種の仲間が集まります。
普段の生活ではどうしても偏った業種の人と接する機会が多いのでとても楽しいです。

こんな風にダイビングはとても奥の深いものです。ここに挙げた以外にも素晴らしい点は
たくさんありますが、自分自身で実感された方がよいでしょう。
 

 
安全なダイビングには何が必要か          1つ上に戻る



安全なダイビングには何が必要かと聞かれれば、僕は次の5つを挙げる。技術、知識、
器材、経験、そしてリーダーシップ。

技術や知識というのはダイビングがとても特殊な環境で活動するスポーツだからである。
技術と言っても何も難しい事ではなく、水中での姿勢や泳ぎ方、潜行や浮上の手順など
そんな複雑な技術でもない。個人の技術レベルが高いと行動に余裕が出来る。つまり
安全ダイビングに直結する。知識については多少難しい点もある。そもそも人間は水中で
生活する動物ではないので、これが水中に入るという事は多くの知識が必要となる。
が、初心者のダイビングの講習で講義を受ける時間は10時間程度、さほどでもない。
ここで安全ダイビングのために大切な知識を学ぶ。最初は難しく感じるかもしれないが
実際にダイビングを始めると自然に覚えてしまう。

器材の故障は重大なダイビング事故にもつまがりかねない。日頃のメンテナンスは大事。
レギュレータなどは1年に1度くらいはメンテナンスをした方がよい。場所によっても必要な
器材がある。ナイトダイビングでは水中ライトが必要だが、電池が消耗して途中で消える
事も考えられる。流れの速い場所でドリフトダイブをする時は目印のクロートは必須である。
パラオでの漂流事故は記憶に新しい。

経験はもちろん豊かにこした事はない。だがここに落とし穴がある場合がある。意外にも
ベテランダイバーの事故も後を絶たない。これには慣れによる過信があると言われている。
つい無茶をしてしまったり、基本のバディ・システムを無視して1人で潜って器材故障したり
原因は様々だが、相手は大自然である事を忘れてはならない。突如、牙を剥く可能性も
あるのだ。

そして僕はリーダー・シップを挙げる。コミュニケーションの取り難い海の中で複数の人が
行動する上でリーダー・シップは不可決である。リーダーが勝手な行動をしたりすれば、
そのグループ全員に危険が迫る。これはリーダーとなった自分が痛感した事だ。グループ
にはベテランから初心者まで含まれる場合(通常ならば個人の技術レベルに合わせて
グループ別けをするが)、一番レベルの低い人に合わせなければならない。当然リーダーは
この事を承知しているが、グループの中にはこんなリーダーの心情なぞ考慮してくれない
人もいる。これらの人を統率するのが重要だ。

世間ではダイビング=危険なスポーツというとらえ方をされているが、これらの安全認識が
されていれば事故は防げ、万一事故に至っても重大な事故に至らずに済む場合が増える
のだ。
 
 

タンク本数にこだわりすぎている現実          1つ上に戻る



ダイバーの世界では1回の潜水で空気タンクを1本使う。各自のダイビング経験を示す量と
して、よく100本だとか200本だとか 今まで使用したタンク本数を経験値とする風習がある。
Cカードのランクで各自のスキルを判断するよりは このタンク本数で判断した方が正確だと
言える。

しかし中にはこのタンク本数にだけこだわって潜水している人も多い。あと25本で200本
だとか、あと12本で150本だとか。1つの目標に向かってダイビングするのは決して間違い
ではないと思う。目標がなくて何が楽しいのか判らなくて潜っている人よりは全然良い。が、
あまりにもタンク本数にこだわるが為に ただタンク本数を重ねてはいないか。

別にタンク本数が多くても ベテランというだけで偉いわけではない。正直言って200本以上
潜っているダイバーなら、大抵の人は300本でも500本でもスキルには関係ない。普通は
200本も潜っていれば1度や2度は恐い経験もしているだろうし(=無謀なダイビングへの
自己抑止)、潮流の激しい海など厳しい環境でのダイビングを何度も経験しているものだ。
ここまで来るともうみんな総称してベテラン・ダイバーなのだ。

こんな偉そうな事を書いているが、僕も100本ダイブをするまでは本数にこだわっていたの
かもしれない。通常は100本ダイバーならベテランと呼ばれるし・・・ ただ、うちのショップの
場合、100本以上潜っているダイバーなんぞごろごろいて、100本潜ったからと言って何も
変わらないし 次第にタンク本数へのこだわりは無くなって行った。好きな海にマイペースで
潜っていれば知らないうちに本数もいってしまうはずだと思う。

楽しくダイビング経験を積もう。何も本数にこだわる必要はない。1回のダイビングが楽しく
潜れればそれで良いのだ。
 
 

オレは何故インストラクターになったか          1つ上に戻る



ずばり・なりゆき。と言ってしまえば跡形もないのでらしい理由を言うと、『先生』になって
みたかったのだ。ダイブマスターと違い、インストラクターは人にダイビングを教えるという
側面がある。つまり先生であるわけだ。

先生というのは憧れた。逆に先生として常に他の人からそういった目で見られるので自分に
甘くできない=自分自身の更なるスキルアップにもつながるのだ。だが、普通はイントラに
なるのは(特に僕の様なサラリーマンが)、とても勇気がいるのだ。技術や知識だけでは
なく、時間と金も必要だ。だからイントラにはなれないと思っていた。別に会社員でもある
わけだから、イントラになって新たに収入源を求める必要もなかったのだ。

が、転機が訪れた。ダイビングのメーカーでもあるスキューバプロ(SEA)がスクールを
開始したのだ。NAUIやPADIと違い、SEAのマスター・インストラクターがITC(イントラ
テストコース)を個人開催できるので、1週間という長期になる通常の指導団体のITCより
日程的に厳しくないのだ。だからイントラを取った。

指導団体にこだわる人も多いが、実際にやらなければならない内容は同じだし、必要なのは
安全に講習生をダイバーとして育てる事だ。団体が変われどイントラの仕事は同じだ。

あまりよろしくないが、サラリーマン・イントラは平日の夜と週末にしか実際の活動が出来ない。
僕がイントラになったのは少しでも日頃世話になっているショップに貢献できれば・・・ という
気持ちがあったのも確かだ。ショップ専属のイントラに比べ、今までに育成した講習生の数は
多くないけれど、少しは貢献できていると思う(ショップのオヤジはどうせ厳しい事を言うが)。
まあ、昨今のショップの諸事情ではイントラとしてのお手当ても期待してないし、また実際に
もらってないので厳しい事言われても聞き耳もたずなんだけどネ・・・
 
 

現状のダイビングへの危惧          1つ上に戻る



僕は現在のダイビングに対し、若干の危惧を持っている。

1つは安全管理面である。僕は現在まで大半のダイビングを伊豆で潜っている。数年前、
水中で地震に遭遇した事がある。水中で聞く地震の音は凄まじい。陸上より音の伝達する
速度が4倍も速い水中では非常に様々な音が聞こえるが、地震の音は内臓にズシーンと
くる振動波だった。最初は大きな船がいきなり近くでスクリューでも回したかと思う様な音で
あたりを見たが何もいないし、音は瞬間的だったので船とは違うとすぐに判った。その当時
伊東沖で群発地震が発生し始めていた頃だったので、すぐにこれは地震の音だと判った。
後で聞けは震度2〜3程度の大した地震ではなかったのだが、あの音の迫力だ。自然の
脅威、エネルギーは凄まじいの一言に尽きる。

この事件をきっかけに感じているのだが、伊豆の様な地震の多い場所でこれだけ大勢の
ダイバーが潜っているのに天災に対し あまりにも無防備ではないかと思うのだ。今までの
地震の経験では大きな津波がやってくる事は非常に希である。が、日本海中部地震や
奥尻島での惨劇は記憶に新しい。もし地震による津波がダイバーを脅威にさらす事態ならば
恐らく海中にいるダイバーが緊急浮上し陸上に逃げようとしても時間的に手後れかもしれない。
しかし、もし津波の発生が早期に水中のダイバーに伝達されるならば、その一部は危険の
回避が出来るかもしれないのだ。伊豆海洋公園や大瀬崎といったダイバーが非常に多く
集まるダイビング・ポイントならば水中に警告音を伝えるのは可能だろうと思う。東海地震が
予想される今日、油断はできない。

もう1つの危惧、それは他ならないダイバーの意識だ。最近では海外旅行なぞ珍しくもない。
我々ダイバーも南国のパラダイスを目指し年間に多数のダイバーが海を渡る。その中で特に
ミクロネシアが近さと価格的に一番人気がある。海も素晴らしい。

だが、ダイバーのうち何人が50年前にミクロネシアで戦争があった事を知っているのか?
人気の高いパラオでは太平洋戦争で多くの犠牲者が出た。パラオには当時 日本の南洋庁が
置かれ南方戦略の拠点であった。ダイナミックなポイントでダイバーの憧れでもあるペリリュー
島は玉砕の地だ。ここでは日米合わせ1万数千人の命が失われた。当然ながら現地の人達
にも暗い時代は重く圧し掛かった。

大方のパラオの人達はとても優しく、日本と こんな時代背景があるにも関わらず観光に来た
日本人を歓迎してくれる。何故なら観光収入、特に日本からの収入が非常に大きな産業だから
である。心の根底には反日感情を持っている人も多いはずだ。限度を超えた行動・言動は
つつしむべきだろう(海外でなくともそうだが)。南国気分でエンジョイするのはとても良い事
だと思うが、心の片隅に その地の歴史背景が置かれていれば更に現地の人とのコミュニ
ケーションに役立ったりするものだ。
 
 

将来のダイビングについて          1つ上に戻る



アクアラングの発明以来、今日に至るまでダイビング器材は進化してきた。だが基本的な
潜水システムというのは実はあまり変わっていない。今後しばらくはこのままだろう。SFや
アニメの世界では人間が海中に溶け込んでいる酸素を取り込んで呼吸する夢の潜水具が
登場する。この海中から酸素を取り込むという発想を実現した大規模な装置はあるらしいが
我々民間ダイバー、いや人間が実使用レベルで使える大きさではない。将来的にはこんな
装置が実用化される事を願っているが、20年、30年という期間では無理だろう。

ダイバーには深場への誘惑というものがある。通常のスポーツ・ダイビングでは団体により
多少異なるが、18m以深を大深度、そして30m迄を安全ダイビングの範囲としている。が、
もっと深場に行ってみたいという想いは誰しも持っている。ダイバーの宿命みたいな気持ち
である。空気潜水をする以上はこの限界を劇的に変える事はでない。人間の生理的側面を
コントロールするのが難しいからだ。深場であっても安全潜水が可能となる様な器材の進化
或いは工夫を願っている。

もう少し近未来のダイビングを考えるとタンクの小型、高圧化は技術的には今の2倍程度
ならば出来ると思う。これによって より長時間のダイビングが可能となるだろうが、安全面の
問題が付いてくる。酸素中毒は別として窒素による減圧症や水中酔いの元凶である窒素を
うまく取り除くフィルター的な器材はできないものだろうか・・・

夢の器材を期待する反面、楽しく潜れる海がなくなってしまわない事が一番心配だ。地球
環境変化や政治不安が起こらない事を願ってならない。