権現山でノルマをこなす

 (1999/9/25、山梨県北都留郡上野原町)


数年前三頭山から笹尾根を歩いた際に、右手に鶴川の谷をはさんで自分の歩いている尾根道とほぼ同じ高さで尾根を成している山々が目に付いた。真正面に電波中継塔のようなものが立つ山頂、その右にもう少し高い山が並んでいた。地図により電波塔のあるほうが雨降山、その右の大きな山が権現山、と名を知った。その後扇山から百蔵山を歩いた際にも、今度は北側に権現山を望む事になった。自分の居る扇山よりも数段高く、妙に立派にみえた。丁度南北に扇山と三頭山を並べるとその中間に位置する山だった。そんな訳で権現山は三頭山と扇山に比べてやや奥にあり登りづらいかな、という印象であったが、その後雨降山のすぐ南側まで林道で詰められそうな事が分った。これなら簡単に登れそうだった。

* * * *

夢うつつ目覚し時計を押したのも覚えていない。目が覚めれば7時が近い。しまった、寝過した。外は台風一過、秋晴の日。これでは予定していた富士山近くの山まで足を延ばすのは時間が足りない。こういう日はアプローチが短いと分かった権現山に行こう・・。
(バイクで奥までつめる。
林道が乗っ越していた
和見峠。)

バイクで国道20号線は上野原の街を抜け和見の集落を目指す。細いやや荒れた舗装路を詰める。空気が山の匂いに満ちてくる。傾斜が強まりアクセルをふかすと単気筒の鼓動が体に伝わる。和見の集落は想像していたものと違い南面の斜面に人家が点在する小さなものだった。行けるところまで行こうと林道をつめるとダートになり雨降山から南に伸びてくる尾根を乗っ越す箇所に出た。丁度人工的な峠になっている訳だ。こんな所まで林道が伸びていたとは驚きだ。道はこの先ものびており山麓へ下りられそうだった。

峠にバイクを止め10:40、薄暗い植林帯に足を入れた。尾根につけられた緩いつづら折れで檜林の中を登っていく。台風一過で残暑というには厳しすぎるような強烈な陽射と大気は真夏のそれと全く変らない。昨晩までの雨をたっぷり吸込んだ山肌からこの気候で水蒸気がもわもわ出ているようでまるでサウナのような不快さだ。なんなのだろう、妙に息が上がる。それに頭の芯がボーっとする感じで頭と体の感覚がまるで別々だ。7月から仕事の内容が一部変り出張などの頻度がいきなり増えた。そんな事で疲れがたまっているのだろうか?最近は山に対する思いはこれっぽちも以前と変ってないつもりなのに体がそれについていかない感じが多い。それに不摂生やストレス(?)のせいか4、5年前よりも体重も数キロ増えてしまった。これも大きいかもしれない。が、ここのところ疲れて、毎日自分を律する気がしないのも事実なのだ・・。なにか妙に言訳がましいのが自分でも嫌だ。

べっとりと悪い汗が吹き出る。体調と気温と湿度を別にすればたいした登りでもない。それでも雨降山を巻きはじめる頃にはだいぶ落着き、11:20、雨降山と権現山を結ぶ稜線に出た。
(権現山への稜線から。雲取山、
三頭山、笹尾根、惣岳山・御前山
などが一望出来た.)

尾根歩きは楽しいものだがこの稜線に関しては雑木林もなく植林が中心で面白味は全く無い。おまけにやや薮っぽいのと蜘蛛の巣がからみ不快でもある。唯一北側が開けた箇所があり、そこからは目前に鶴川の深い谷の向うに三頭山が大きくその左手に笹尾根が長く続いている。、数年前と丁度反対から向い側の山を眺める事となった。山頂にカヤトが広がるあれは雲取山かな?ってことはあれが鷹ノ巣山か?あの2つ並んだピークは惣岳山と御前山かな?と適当に目安をつける。地図を広げ同定してみる。どうやらその通りだ。嬉しい。全部歩いた山々だ。歩いた事のある山だからすぐにわかったのかもしれない。

相変らず薄暗い植林帯を進むと前方に大ムレ権現の社が現れた。避難小屋にも使えそうな立派な小屋だ。社の裏手を5、6分登ると山頂。12:00時丁度。思ったよりも小さく、又こんな山にもかかわらず7、8人が憩っていたのも驚きだった。山頂は辛うじて雑木林が勢力をのばしているがこの手の山は晩秋の方が眺めも優れて良い感じかもしれない。

周りの人に一言断ってアマチュア無線・50MHzの運用を開始する。最近メンテをした自作の4Wトランシーバにデルタループアンテナという設備は関東平野と交信するぶんには充分なようで+20dBまで振っている、とレポートが各局から来る。数ヶ月前にこの山頂に移動していたJJ1KAEにも呼ばれ情報を交換する。時折パイルがあり気持ちよい。この無線機からは電信も出られるのだが、重なって呼ばれたら自分には処理できるという自信も無く結局電信の運用は取りやめた。大阪に転勤しているローカルの7K3EUTにも呼ばれて驚く。週末、横浜に戻ってきているとの由で今回は時間の都合上会う事は出来なさそうで至極残念だ。又の機会を約束して交信を終了。

気がつけば誰もいなくなった山頂。三角点にタッチして14:15、山頂を後にし往路をで戻る。ジグザグの植林帯を駆け下りて15:05、バイクを停めた和見峠だった。無線は堪能したものの山としての面白味は殆ど味わえなかった。権現山は思っていたよりも人の手の入った山で、まあ中央線沿線の山ではこんな感じなのだろうか?いい気なもんで登りに感じた体調の不調さは何処へやら、なにやら毎月登山・毎月アマチュア無線移動運用という目標に対して1山ノルマをこなしただけという感じで物足りない。もっともこんな所までバイクで上がってきて文句を言う自分も自分だが・・。どうも最近は登山らしい登山をしていないなぁ・・。こんなので良いのだろうか?そんなくすぶる気持ちを胸にバイクに跨り峠を後にした。


(和見峠10:40−稜線・雨降山分岐11:20−権現山・アマチュア無線12:00/14:15−稜線・雨降山分岐14:45−和見峠15:05、権現山標高1312m)


アマチュア無線運用の記録
権現山 1312m
山梨県北都留郡上野原町
50MHzSSB、23局交信
自作4wSSB/CWトランシーバ+釣竿デルタループ
最長距離交信:長野県諏訪郡(JL1BWG/0)
山頂は狭く又雑木があり大きなアンテナはむずかしい。しかしながら冬枯れの頃などは落葉した木々の向こうに大観が開けそうでこの山のベストシーズンではないかと思った。

山頂からは関東平野一円とは充分交信が楽しめると思う。

Copyright : 7M3LKF,Y.Zushi 1999/9/27