青空に一歩近づく山、鋭鋒・釈迦ケ岳 

(1998/7/18、山梨県東八代郡芦川村)


河口湖の西側、御坂山塊は行った事がなくかねてから気になっていた。早朝東名高速から山中湖を回り御坂トンネルを超える。やはり横浜からだと遠い。

御坂峠側から工事中の看板を横目にゲートが開いているので蕪入沢上芦川林道にそのまま進む。が5分も行かぬうちに工事現場に出くわし「来ちゃダメだよ!」。仕方なく戻ると今度はゲートが閉じており錠がかかっている。困ったな・・。途中すれ違った工事の車がかけていったのだろう。仕方なく再び工事現場に戻り事情を説明するとあっさりと人を出して開けに行ってくれた。ほっとする。やはり林道の走行は注意しなくては。

(右手に鋭鋒、釈迦ケ岳)

仕方なく遠回りだがぐるりと回って反対側の芦川村から蕪入沢上芦川林道へ。林道をつめたドンベエ峠に自転車をデポし再び登山口に戻る。ここから見る釈迦ケ岳は左手にひときわ高く鋭い角度だ。随分尖っているなぁ、自分に登れるのだろうか・・。岩稜帯の山頂部が夏の陽射を反射して屹立している。無事行けるか、一抹の不安はある。

カラマツの林からブナの自然林を辿る。重厚な林相で木漏れ日も届かず湿った中のひたすらの直登。汗が滴り落ちる。が空気がひんやりしているのは標高がそれなりにあるせいかもしれない。短いつづら折れの向こうに青空が広がり稜線に上がった。ここがジョーリヌキデイラだろう。

ここからの釈迦ケ岳の眺めは圧倒的な威圧感で迫る。山が急角度で盛り上がっており山頂部に岸壁がそそり立っている。あれを上るのか・・・。

急ではあるが道はしっかりしている。木や岩角につかまりながら確実に高度を稼ぐ。左手にみるみる甲府盆地の展望が広がりはじめ爽快このうえない。青空に一歩一歩近づいていく感じだ。下から見たほどの難所もなくぐんぐん上がり山頂が指呼の間となり一安心する。

ひとけの少ない山と聞いていたが果たして山頂には数人の単独行者がいるだけで静かなピークだった。可愛い二体の石地蔵の向こうに黒岳から節刀ケ岳への御坂の主稜線が鯨の背のように長い。その背後に真っ黒な富士。下から見上げたあの尖塔、その上に自分は立っているのだ・・。

(釈迦ケ岳から府駒山までの尾根では
誰にも会わなかった。)


山頂でのアマチュア無線運用はなかなか楽しめる。多くの仲間が他の山々に移動しておりそれぞれの感動がこちらにも伝わる。仲間と話すと声が弾む。夏を迎え皆外に出たい気持ちを抑えられないのだろう・・。かくいう自分もそうなのだが。

下山はまっすぐドンベエ峠を目指す。こちらの道はさしたる急坂もなく自然林のなかをゆっくり歩く。府駒山を越える。誰もいない。静けさに威圧され歩みを早めるとスズランだろうか、白い可憐な花が足元に揺れた。

ドンベエ峠から自転車で林道を車に戻る。静かな上芦川の集落を抜け帰路は御坂一宮から中央高速をとり相模湖ICを目指す。高速に乗ってすぐ、右手に山々が重なるがその中にひときわ高い三角錐の山が目に入った。あれが釈迦ケ岳だろう・・そうに違いない。そう思うととても良い気分だった。釈迦ケ岳は青い空に一歩近づける山だった。

(終り)

(コースと標高:釈迦ケ岳登山口9:45−ジョーリヌキデイラ10:25−釈迦ケ岳・アマチュア無線10:50/13:45−府駒山14:10−ドンベエ峠14:25,釈迦ケ岳1641m)



アマチュア無線運用の記録

釈迦ケ岳

山梨県東八代郡芦川村・1641m
1998/7/18移動 移動者:7M3LKF
ピコ6+自作軽量リニアアンプ(8W)
釣竿ヘンテナ
35局交信(50MHz SSB)
最長距離:
−富山県下新川郡JO2RBH/9(白馬岳)
−長野県須坂市JQ1TQP/0(四阿山)
山頂は下から見上げたイメージとは異なり細長く思ったより広い。立ち木が少なく岩がゴロゴロしている。

ロケは東方面には御坂黒岳から三ツ峠山がブロックしているようであったが実際運用してみると余り影響がなかった。久しぶりにじっくりと腰を据えての運用となった。

(山頂には二体の可愛い石地蔵が。赤いべべと毛糸の帽子が夏の日に暑そうだった。背後に長い御坂主脈と黒い富士)

Copyright : 7M3LKF, 1998/7/25