秋の小さなハイキング−日向薬師から日向山

(1998/11/1、神奈川県厚木市)


秋だ。こんな日は少し早起きして街を抜け出そう。山に近い幹線路から細長い簡易舗装の道を辿ってのどかな山麓をいき、落ち葉を踏みながら農家の裏手からさりげなく山道に入る。一汗、二汗かかぬうちに早くも目指す頂は指呼の間となる。山頂は静かだが時折山麓から平和な村内放送や時報のサイレンなどが聞こえてくる・・・。ベンチに寝転びブナ林ごしに高い空を眺めると、いい気分だ。そんな素敵なひとときを過ごすのにもってこいの季節なのだ。

昨年行った鳶尾山と八菅山。山麓での柿もぎが余程楽しかったのかシーズンになる前から柿もぎに行きたい、と子供は楽しみにしている。それでは、と柿もぎ収穫用のビニル袋と小さな無線機やコンビニ弁当を入れたザックを載せ車を西に走らせる。

愛川町の昨年と同じ農家に行くがもう柿は終っており少し離れた違う場所へ。柿農園と書いてあり豊富に柿がなっている。細長い竹棒を手にし、これ、という柿をもいでいく。長女はさすがに楽しみにしていただけあって自分独りでやりたがる。それでは、とやらせてみる。危なかしげな手つきだがなんとかやっている。なんか、成長したなぁ・・。そういえば先日長女の通う幼稚園の文化祭があったのだ。教室の中に娘の描いた絵や粘土細工などが展示してあり、こんなこともやっているのか、こんな世界も持っているのか、と驚いたりしたものだったが・・。いつまでもまだ小さいと思っているのは親ばかりで子供は確実に大きくなっていく。その成長のスピードは目を見張るばかりで、自分自身は一体どのようにすべきなのだろう・・。親とはいえ名ばかりで当の本人はいつまでも子供気分が抜けきらない。子はいつか親を抜き去っていくのだろうがそれにしてもこれからどのように子供と過ごしていけばいいのだろう・・、自分も成長しなくては、そんな事を考える・。

(登山口から見上げる日向山)

愛川町の柿もぎのあとは日向山へ向かう。日向山は日本三大薬師のひとつ(らしい)日向薬師の裏手に立つ丘で、こんな日のひと歩きにふさわしい。少しわかりにくい山麓の里道から林道に入り薬師の裏手から歩きはじめる。1歳6ケ月の二女は肩車にする。2、3分行けば直登コースと稜線迂回コースが分岐しており前者を行く。さすがにザックと肩車の二女の重さが肩に食い込み汗が流れる。それでもちょっと我慢すればもう見上げる上に空が見え山頂の近い事を思わせる。この辺のアプローチの短さも低山の魅力だろう。

どんぐり拾いをしながら登る妻と長女はゆっくりペースなのでこちらも先に行く。念のために430MHzのハンディ機を妻に持たせ時折交信しながら登る。数ヶ月前にアマチュア無線を開局した妻は50MHzで一局交信しただけなのでもったいない。まぁせっかくの免許だ、430MHzは電話ごっこのノリである。

すぐに稜線にあがり日向山山頂404.4mだった。祠(天命八年=1788年建立との由)があり桧に囲まれたやや荒れた山頂には小さなテーブルが一つ。展望は東方面のみ開いていた。二女を肩から下ろしお弁当と50MHzアマチュア無線の用意をする。430MHzで妻を呼ぶが稜線まではもう少しらしい。だいぶ息が切れている様子だ・・。ふだん子育てと家事に追われている妻・・。ハイキングは体力を使うのであまり乗り気ではないようだったが、この爽快感を味わって欲しい、体は確かに疲れても心の疲れは少しはとれるのではないか、そんな風に考えここまでやってきたのだ。少しは爽やかな気分、心安らぐ雰囲気を味わってくれるだろうか・・・。

(今回は自作の1W機
で無線を楽しんだ。)

ややあって長女と妻もやってきた。無線をしながら弁当タイム。長女はしゃぼん玉などをして、二女はそれを追ってはしゃいでいる。彼らが飽きないうちに私も無線を終えねば・・。今回は自作の1W出力の無線機を持ってきた。1回の交信に時間を掛けのんびりとやる。自分で作った無線機で運用するのはなんともいい気分なのだ。

下山は往路を戻るのはやめて稜線迂回コースから下りる事にする。ぶなと桧の混じった尾根を西に進みやや高度を落すと右手に鹿柵が現れいかにも丹沢らしい。二女を肩車したままマイペースで下りていくと長女から「見えなくなるからあんまり先に行かないで・・」と声がかかる。はいはい・・。

ひとしきり下って切道しに出るとあとは山腹を巻きながら出発点に戻るだけだった。立派な木が何本も倒れておりいかにも今年は雨が多く台風が強かったものだ。

のんびり歩いて日向薬師の駐車場についた。薬師にお参りをして車に戻る。長女も全くバテることなく登って下りてきた。これならこの程度のハイキングはこれからも大丈夫そうだ。

皆楽しんでくれただろうか、又何処かに出かけましょう・・。

(終り)

(コースと標高:日向薬師駐車場14:05-日向山・アマチュア無線14:40/16:00-日向薬師駐車場16:30、日向山標高404.4m)


日向山 404.4m、1998/11/1、神奈川県厚木市
無線機:自作1W機(アイテック社キット、ビギトラを1Wへ改造したもの)、アンテナ:ロータリーダイポール
交信局数:5局交信(50MHzSSB)、最長距離交信:東京都八王子市、7K2PAB/1

山頂は桧とブナに囲まれやや薄暗い雰囲気。割と広いのだが余り整地がされていない(訪れる人が少ないのか?)ようで殆どが倒木や枯れ草などでやや荒れ気味だ。展望は東方面のみに得られる。

無線のロケはまぁ近場の神奈川・東京くらいだけだろう。パワーや空中線にもよるが。この手の山頂ではあまりガンガンやる気もしない。のんびりとしながら数局、といったところか。

(山頂には石祠がある。夕暮れ近くなると西から斜光線が差し込んできた。)

Copyright:7M3LKF,Y.Zushi,1998/11/3