鐘ケ岳 - 早春の丹沢前衛、ローカル局と露天風呂

(1996/2/12、神奈川県厚木市)


河野さん(JK1RGA),鈴木さん(7L3BDA)との移動運用を兼ねたハイキング。朝一番のバスで駅に向かい鈴木さんと合流。鈴木さんと山へ行くのは初めての事。山に興味はあるが殆ど登った事はない、という鈴木さん。かつて山頂でHFの移動をしようと固定機、大型バッテリー、ワイヤーダイポール、ポールスタンドなどの重装備で丹沢・焼山へ向かったものの、重量に負けて山頂を断念した、以来山への思いがつきない、という。今日は軽い装備で山頂達成をめざす、と頑張られている。海老名へ向かう朝の相鉄線には朝日が差し込みカーブのたびに陽射が右に左にゆれる。のんびりとした車中。本厚木駅で河野さんと合流。おっと、山麓で買い損ねたら大変、ビール、ビール。鈴木さんは500ccを買う。意気込みが違うなぁ。空は真っ青で今日は暖かそうだ。

(山頂では風化した
石仏が関東平野を
睨んでいた)

広沢寺温泉入口でバスを降りる。毎度の事ながらのどかな山麓風景には気がやすらぐ。山里の雰囲気を楽しむのも低山歩きの楽しさだ。登り始める。登山道の各所には風化しかけた丁目石、道祖神、石仏達。丸くなった石柱の裏に回れば文久の年号が見てとれた。古くから山岳信仰の対象になっていたという鐘ケ岳。素朴な山岳信仰はもはやすたれたかもしれないが、今も昔も何かを求めて山に登るという人の本質は変わっていないのかもしれない。

桜の木々が今にも蕾を開かそうと静かに頑張っている。春近し。長い石段が続き登りきると浅間神社。下界の眺めが素晴らしい。陽気はポカポカでもう4月になったかのような気分だ。山頂はこの少し上で、無線装備をセッティングする手がはやる。広い山頂だが杉の植林が成長していて木々の背は高い。しばらく無線運用していると変調がおかしい、というレポートが入った。出力を落としてみても同様。バッテリ−トラブルのようだった。これ以上無線は無理、と電源を落とす。無線機から聞こえていた音がやむと静かな一時である。山頂を無事きわめたもののもう一つの楽しみ、無線運用は殆ど出来なかった。鈴木さんに何か申し訳ない気分。又行きましょう、と声をかわしながら下山する。山の神トンネルの上で180度戻るように下りる。片流れの滑りやすそうな短い斜面がある。すぐに車道におりたつ。このアプローチの短さも低山の良さだろう。降り立った広場は粗大ごみ捨て場と化している。車道さえあればどんな山奥でも、いや奥であればあるほどごみ捨て場となってしまう。信仰の対象のなれの果てか・・・。
(鐘ケ岳の姿
は山麓に溶け
込んでいる)

今日の最後の楽しみは温泉。湯冷めが心配な季節だがこの陽気ならば心配ない。七沢温泉へ、露天風呂へ直行。無事山を終えたという満足な気分で湯船での言葉も多い。無線を早々と中止したのは残念だったが、そんな事は気の合う人達との楽しい一時には何の影響もない。山頂でのビールに酔い、春に酔った日。露天湯から出れば更に泡立つビールが待っている・・・。おぉこれでは山岳信仰ではなくビール信仰だ。

三人ともふやけた体。赤い顔でバスにゆられる。バスの振動で夢うつつとなる。いい気分だなぁ。又皆で山へ行きましょう!

あっという間に素敵な一日が過ぎた。しかし最近は1000m未満の山ばかり。それが少し欲求不満ではある。  

(終り)

(コースと標高:広沢寺温泉入口8:40−鐘ケ嶽・アマ無線9:40/13:50−山の神トンネル上14:05−林道合流14:20、鐘ケ岳標高561m)


アマチュア無線運用記録 

鐘ケ嶽

移動者 バンド
JK1RGA,7L3BDA,7M3LKF 50MHz
リグ・リニア アンテナ 交信局数 (7M3LKF) 最長距離交信、等
FT690mkII
FL6020、計10w
自作軽量2elHB9CV
4.5m高
15局 (SSB)
1局 (FM)
東京都北区/JA1XYM
所感

丹沢の前衛の山。連嶺ではなく独立峰の形をとる。丹沢が1000m以上の標高差で西側にそびえているため西方面は難しい。

山頂は広くポールを立てる場所には不自由しない。又空が広いので大型アンテナ(4EL程度)も可。ただし北面は一帯が杉の植林でかなり成長している。展望は一段下がった浅間神社からが素晴らしい。

無線運用はバッテリートラブルで16局でQRTとなる。満充電したはずのシール電池が寿命を迎えていたようだった。
(JK1RGA,7L3BDA局と移動)



Copyright : 7M3LKF, 1997/10/29